第2話 変わらない毎日
朝、少しだけ早く目が覚めた。
1人静かな朝。両親も寝入っている時間。
私は、顔を洗いに洗面所へと向かう。
メガネを外し、眠いと目を擦りながら、水をバシャバシャと顔にかける。春にはまだ少し肌寒い。
顔を上げると濡れた顔が写った。
いつもどおりの笑顔。
私は無意識に鏡を見て、微笑む。
まるで、強制のように。鏡の前で笑顔の練習。
「今日もいい笑顔」
私はポツリと言った。毎日普通に笑う。
私は笑顔が取り柄なのだから。
私は、鏡の自分がわずかに瞬きが早いことに気が付かなかった。
学校に着くと、クラスはいつもどおりのざわめき。
「紫藤さん、おはよう〜」
「おはよう」
返す声も、表情も、昨日と変わらない。
みんなが笑う。私も笑う。
笑顔の練習は、確かに役に立っている。
……たぶん。
でも、心の隅でちらりと、昨日の鏡の顔が浮かぶ。
口角がほんの少し、私より先に上がっていたあの顔。
「紫藤さん!移動教室、一緒行こ!」
「あ、うん。その前にトイレ行ってくるね。」
トイレを済ませ、手を洗いに洗面台へと向かう。
あ、ハンカチ忘れた。
焦った顔が鏡に映る。
「紫藤さーん!やっほーぃ、ありゃ?どした?」
「あ、ハンカチ忘れちゃって、」
水を払いつつ答える。いつまでも荷物を持ってもらうわけにはいかない。
「紫藤さん、必死すぎwww
鏡に水しぶきかかってんじゃん!」
あ、
見ると、鏡には水滴が飛び散っていた。
「まぁ、いいじゃん?ハンカチ貸してあげるから早く行こ!」
「あ、ありがとう!」
水滴の奥に、何が映っていたのか------
私はまだ知らない。
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