第3話 いつもどおりの夕方
「じゃあ、またね〜」
「うん、また明日」
友達と分かれ、1人になった帰り道。
ふと昨日のことを思い出した。
-----あれ、結局なんだったんだろう?
気になる、確かめたい。
そんな気持ちが知らず知らず足を早める。
無造作に鍵を取り出し、家の扉を開ける。
「ただいま」
誰もいない家に声だけが響く。
おかしくない。いつもどおり。
ただ手を洗うだけ。
洗面所に向かって歩く。
大丈夫。おかしくない。確認するだけだから。
でも、心臓が言うことを聞いてくれない。
早鐘のように鳴り、手のひらがじっとりと湿る。
息を吸おうとしても胸がギュッと締め付けられるみたいで上手く吸えない。
私は鏡を見つめ、1歩、2歩…
大丈夫。なんでも-----
-----鏡の中の私の目だけが違った。
「ガチャ」
突然の音に思わず体が跳ねる。
玄関の扉が開き、母の声が家中に響く。
「あら、透、帰ってたの?早く手洗ってらっしゃい」
その声で、胸の奥のざわめきはすっと引いた。
肩の力も抜け、手の汗がひく。
思わず口元が緩み、ほっと息を吐く。
-----そういつもどおりの家。いつもどおりの夕方
夕焼けに照らされた鏡は不敵な笑みを浮かべて
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