第2話 ジャンク

「あ、あのウォーカーさん! これ今、何処に向かってるんですか?」


 仕事をクビになり無職と化したシャルロット・ウィンターは、ウェレに言われるがままその後を付いて行く。

 ビルの合間を抜け、薄暗い裏路地へと入ると一軒の木造建築物が見えてきた。


 なんだろう……ぱっと見、外装は完全にただのカフェにしか見えな――――いや、思いっきり「coffee cafe」と書いてあるじゃん!

 私、結構コーヒーの味には詳しいよ!


「ここがうちの事務所だ。あと、俺の事はウェレでいいぞ」

「……事務所? ウェレさんが所属してるTSGのですか?」

「そうだ」


 その言葉を聞き、シャルロットはウェレの手を掴み止めようとする。


「無理ですよ!私には無理です!」

「駄目だ」

「え!?」


 まさかの即答にシャルロットは面食らってしまう。


「お前の持ってるギフトは余りにもすぎんだよ」

「そ、それはあるかもしれませんけど……下手に何か大きな事をしなければ――――――」


 すると、目の前を歩いていたウェレが唐突に立ち止まった。

 シャルロットはウェレの背中に衝突し珍妙な声を上げる。

 

「やぁ、ウェレ。今日は遅刻しただけじゃ飽き足らず、彼女さんと一緒に出勤かい? 何処で攫って来たのかは知らないけど自首する事をお勧めするよ。あと服を持ってないなら相談してよ、僕ら友達だろ?」


 シャルロットは声のする方向を見上げる。

 するとそこには、スーツを着た黒髪のアジア系の青年が居た。

 左手にはポテトが入ったバスケットを担いでおり、ヘラヘラとした表情でウェレの顔を見ていた。


「あぁ、今度クソ高ぇスーツでも奢って貰うとするよ。ってか、そんなお前はポテト片手に重役出勤とはいい身分だな。今日はママに起こしてもらえなかったのか?」

「ハハッ、僕の母親はとっくの昔にくたばってるよ」

「奇遇だな俺もだ」

「このやり取り何回目さ」

「さぁな。お前がションベン漏らす回数よりかは少なかった気がするぜ」

「僕は君よりかは遅刻してないよ」

「……」

「……」

 

 黒髪の青年はバスケットから紙に包まれたハンバーガーを取り出しそれをひょいっとウェレへと投げた。

 

「……まぁ、あれだな。オリバーが居ない事を祈るしかねーな」

「そうだね。ってか、後ろのレディーは結局、誰なのかな?」

「さっき電車で爆破テロに遭遇しちまってな。その時、色々あってこいつ会社をクビになっちまって今無職なんだよ」

「いやいや意味が分からないよ。テロに遭遇して会社をクビになるってなんなのさ」


 そう言うと、黒髪の青年はこちらへと近づいて来た。

 

「始めまして。僕の名前はれん 黒木くろき。ウェレと同じ会社で働いてるしがない日本人だよ」

「わ、私はシャルロット・ウィンターです。今日、初出勤日だったんですけど、遅れてしまって……それでクビに……」

「あーなるほどそうゆう事ね」


 蓮はウェレの方に向きを変えた。

 

「だけど大丈夫なの?ウチは結構な会社だけど」

「まぁ、詳しい話は中でする」

「……ふーん、なるほどね。ま、僕は先に行ってるよ。これ以上遅れたらマリアちゃんに怒られちゃう」


 そう言うと、蓮は喫茶店のドアノブに手を伸ばす。

 カチャリと音をたててドアを開くと、止まる事なく中へと入って行った。


「じゃ、俺らも行くぞ」

「待ってください!まだ入るって言ってないで――――――ちょっと!」


 ウェレは人の話を聞くことなく、そのままズカズカと中へと入って行った。


「……ここまで来ちゃったら行くしかないか」


 シャルロットはウェレの後を追うように中へと入って行く。


――――――――――――


「……す、凄い」


 珈琲の濃厚な香りが鼻を喜ばせる。

 朝食を取っていない影響か、空腹もまた顔を見せた。


「ご、ごめんさい!お腹が鳴っちゃいました」

「気にしてねーよ。オリバーに軽く挨拶したら飯にしようぜ」


 シャルロットは好奇心の従うままにキョロキョロと喫茶店の内部を見渡す。


 今の時代には珍しい木製のアーンティーク調をした趣のある造形をしていた。

 所々に木製の歯車が意匠されており、その動きに連動するように同じく木製の動物型の人形がゆっくりと動いていた。

 天井に吊るされた照明は明るすぎない落ち着いた光を醸し出し、店内には複数のテーブルと椅子が配置され、入口正面には大きなカウンターがあり普通の喫茶店としての機能は十分にある様に見えた。


「あら〜、遅い出勤ねウェレちゃん」


 カウンター奥の方から低く柔らかい声で何者かが声をかけてきた。

 そこには2mはあるであろう筋骨隆々の肉体を持つ大男がいた。ピンク色に染めた髪は短く切り揃えられており、ピチピチのエプロンにはイタリア国旗が刺繍されていて何処か可愛らしさが感じられた。

 しかし、それ以上に目を引く物があった。

 それは、口紅である。血のように真っ赤な紅が唇に挿されていた。ファッションと呼ぶには余りにも強すぎるそれは、目の前の男、否、女性の個性を増長させていた。


「あぁ,ちょっとテロに巻き込まれてな」

「あらあら、それは災難だったわねぇ〜。って待って!ガールフレンド!?何処で攫ってきたのかしら!?」

「おい」


 筋肉をムキムキとしならせながら、妙に早い動きで大女はコチラへと近づいてきた。


「あ、あの!私、シャルロット・ウィンターと申します。訳あって、ここに来ました」

「あら〜そうなのね。ウェレちゃんが連れてきたって事はそれ相応の話でしょうし大変だったわねぇ〜。私の名前はレオナルド・ルッソ。気軽にレオ姉と呼んでほしいわ」

「はい!レオ姉さん!」

「フフフ、良い子ねぇ〜」


 そう言うと、レオ姉は何やらウェレに目配せをした。


「オリバーちゃんは書斎にいるから早めに行ってらっしゃい」

「そうだな。あと、コイツ腹減ってるだろうから何か作っといてくれ。さっきから腹の音が聞こえてきててな」

「ちょ、ウェレさん!デリカシーというものはないんですか!」


 シャルロットはポカポカとウェレの背中を叩く。


「うふっ、仲がいいわね。分かったわ、何か作って待ってるわ」

「助かる」

「す、すみません!」

「うふふ、いいのよ」

 

 手を左右にフリフリとしているレオ姉を尻目に二人は『従業員専用』と書かれたドアの先へと進んで行った。


「……」


 ところで、どうしてウェレちゃんは半裸なのかしら……?

 ま、そんな日もあるわよね

 

 レオ姐はお尻をフリフリとさせながら厨房へと戻って行った。 


―――――――――


 幾つかのドアを通り過ぎると、ウェレは一枚のドアの前で立ち止まった。

 そして、慣れた手つきで三回ノックをする。

 すると、中から低い男性の声が聞こえてきた。


「どうぞ」


 その声を聞くと同時にウェレは部屋のドアを押し開いた。

 部屋の内部には大きな長椅子が向かい合うように二つあり、中央には背の低い長机が設置されていた。

 そして、その奥には大きな書斎机があり、黒縁の眼鏡をかけた身なりの良い紳士スタイルの男が居た。

 

「ボス、捨て猫を拾ってきました」

「……捨て猫? いや、その前にウェレ、その恰好は一体……」


 紳士風の男は目元まであるやや長い焦げ茶色の髪を揺らしながら立ち上がった。


「あ、あの……」

「ふむ。貴方は依頼人という訳でもないのでしょう?」

「は、はい」

「とりあえずは話を聞きましょう」


 落ち着いたゆっくりとした動作で男は二つある長椅子の片方へと近づく。


「お掛けください」

「は、はい!」


 紳士風の男はテーブルの上に一枚の名刺を乗せた。


「申し遅れました。私の名前はオリバー・カーターと申します」

「あ、すみません!私はシャルロット・ウィンターです!」

「因みに俺はウェレ・ウォーカーだ」

「ウェレさんは知り合いでしょ!」

「おっと、そうだったな」


 ウェレとシャルロットは先ほどまで出来事を話した。



「……なるほど。テロに遭遇して初出勤日に遅れてしまいクビになってしまったと」

「はい……不運に不運が重なってしまいました」


 オリーバーはチラッとウェレの方を見た。


「因みに、ウェレは彼女をどういった立場として雇う気でいるのかな?」

「コイツはギフテッドだ」

「……なるほど」


 オリバーは視線をシャルロットへと戻した。


「ギフトの内容を聞いても?」

「あ、はい。あのー【幸運】です」

「……なるほど」

 

 オリバーは再びウェレの方を向き無言の圧を放った。


「多分ガチだな。自身の行動に【幸運】を付与する力だと思う。代償は、もたらされた【幸運】に比例した【不運】を他者に押し付けるって感じだろうな」

「なるほど、凄まじい力だね」

「あぁ、俺にも効くレベルの力だ」


 その時、オリバーの肩がピクリと小さく跳ねた。


「……本当にウェレにも効いたのかい?」

「間違いない。服が弾け飛んだ。今、この布切れ一枚の状態なのがいい証拠だ」

「……ふむ。体そのものに影響は無いが、服が【不運】の効果を受け付けた……と」


 二人の話を聞いていたシャルロットは恐る恐る手を挙げた。


「あ、あの〜」

「おっと失礼。二人で話してしまって申し訳ない」

「い、いえ!大丈夫です!ただ――――――」


 申し訳なさそうな表情を見せながら、シャルロットは立ち上がった。


「私がここに居ても皆さんにご迷惑が掛かるだけなので帰ろうかと」

「ふむ。なら殺すしかなくなりますね」

「いやぁ〜ほんとお世話になり――――――えぇッ!?」


 シャルロットの素っ頓狂な絶叫が書斎内部を反響する。


「え、え、え……どうゆう事ですか?」

「貴方のギフトは余りにも危険すぎます」

「で、でも私!何もしなければ――――――」


 すると、オリバーは唐突に立ち上がり、壁際にある本棚から一冊の本を手に取った。

 そしてそれを無遠慮にシャルロットの顔面へと投擲した。


「ちょ!?」


 シャルロットは避けようとし重心を前に置いたその時、長机に膝をぶつけテーブルの上に倒れてしまう。

 投擲された本は幸運にもシャルロットの頭上をギリギリの所で通過し、反対側の壁に衝突する。

 しかし、衝撃の影響か天井に取り付けられていたアンティーク調の照明が落下してきた。そして、照明はウェレの頭を狙い澄ましたかのように狙撃し、バラバラのガラス片へと姿を変えた。


「いてて……ウェレさん!大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない」


 ウェレは頭から血をダラダラと溢れさせながら親指を立て余裕を見せる。

 しかし、どう見ても大丈夫な傷には見えなかった。


「いやいやいや!絶対大丈夫じゃないですよ!すみません!」


 オリバーはゆっくりと長椅子へと座る。


「シャルロット君。君が制御できるのは、君が能動的に動いた時の結果だけであり、受動的―――つまりは、他人の行動で発生した【幸運】の代償まではコントロールできないのだろう?」

「うっ……」


 図星だったのか、シャルロットは言葉に詰まる。

 

「君はこのままだと、君の意図しない形で人を殺めてしまうかもしれないよ」

「そ、それは……」


 心当たりがあるのか、シャルロットは顔を伏せてしまう。

 

「……」


 オリバーは静かに腕を動かし胸ポケットから何やら小さなバッジ取り出した。そしてそれをテーブルの上へと置き、シャルロットの前に持って行く。


「【ギフト】能力によって発生した場合の代償は一部例外を除いて基本的には防ぐ事ができません。しかし、【ギフト】は持ち主と共に成長し、変化するケースが幾つか確認できています」

「……成長ですか?」

「えぇ。【ギフト】の内容や、その代償が変化する場合があります」

「じゃあ……私も頑張れば、無差別に人を不幸する事も無くなるんですか?」

「もしかしたらそうなるかもしれません。しかし、その為には【ギフト】の力を良く使う必要性があります」

「ここなら良く力を使えると?」

「そうなりますね」


 何処か思うところがあるのか、シャルロットは苦悶の表情を見せた。


「……」



 存在するだけで他者を【不幸】にしてしまっている自覚はあった。私の【幸運】は、他者の【不幸】で成り立っているのだから当然の話だ。

 だから今までは出来る限り【幸運】を使う事なく、普通の人の様に生活し、大人しく生きようとそう思っていた。

 だけどその度に何度も……あの日の【不幸】を思い出してしまう。

 私だけが生き残ってしまった忌まわしき【幸運】。

 そうだ。

 薄々分かってはいたんだ。

 私なんかがって

 でも――――――独りぼっちは寂しいんだ。


 すると、ウェレが自身の肩にポンっと手を置いてきた。


「安心しろ。お前が何かやらかそうと、その度に俺が全部ぶっ壊してやるからよ」

「……ウェレさん――――――血が付くので触らないでもってもいいですか?」

「おい」

「あ、すみません!つい!」

「つい!じゃねーだろ」


 ペコペコと頭を下げるシャルロットを見ながら、オリバーは小さく笑う。


「まぁ、とりあえずは“見習い”からはどうかね?」

「わ、私なんかでいいんでしょうか?」

「えぇ、構いませんよ。ここで仕事をしながら、自身の【ギフト】と向かい合うのがよろしいかと」

「よ、よろしくお願いいたします!!!」

 

 シャルロットは勢いよく頭を下げる。

 そして、おでこを長机にぶつけた。


――――――――――――


「……と言うことで、今日から『ジャンク』に加入したシャルロット・ウィンター君だ」


 カフェ店内に一般の客は見られず、そこには『ジャンク』のメンバーらしき者達がいた。


「は、はじめまして。イギリスから来ました、シャルロット・ウィンターです! 精一杯、頑張りますのでどうか宜しくお願い致します!」


 シャルロットは恭しく頭を下げた。


「あら〜可愛いわねぇ」


 椅子に座っていた一人の女性、いやギャルがいつの間にかにシャルロットの背後に忍び寄っていた。

 そして、勢いよく背後から抱きついた。


「ぴゃっあ!!!」


 小動物の様な可愛い声を上げながら、シャルロットはすぐ様に後ろを見る。

 するとそこには、主張の強い金髪をツインテールに結んだ碧眼女性がいた。口元にはタバコの様な物があったが、よく見ると棒の付いた飴を舐めていた。


「ヤッホー!私はキャロライン!宜しくね!」

「あ、あの!……宜しくお願いします!」


 なんて反応をしていいのか分からず、とりあえずシャルロットは頭を下げ挨拶をする事にした。


「キャハハッ!可愛いね君!」

「そ、そんな、キャロラインさんの方が可愛いですよ!」

「へへッ、ありがとう!」


 そう言うと、キャロラインはスッと拘束を解いた。


「ってかウェレは何その格好? 磔にされた時のジーザスの物真似?」

「ちげーよ。ちょっと色々あって服が弾け飛んだよ」

「す、すみません!」


 シャルロットは申し訳なさそうに頭を下げる。


「あーね。ギフトの代償でなんかあった感じか」

「そうゆう事だな。ってか今日はキャルしかいねー感じか?」

「そだね。マリアっちは買い出し行ってて、他のメンバーは仕事で外いる」


 すると、奥の方からレオ姐さんが出てきた。

 両手には料理が乗った皿を乗せており、良い香りが空腹を刺激する。


「お待たせしたわよ〜」

「す、凄いです」


 シャルロットは生唾を呑む。

 一瞬にして分かってしまった。

 そう、皿の上にはフィッシュ&チップスが置かれていたのだ。

 己が体に流れるイギリスの血が一斉に活性化しているのを感じる。


 レオ姐は慣れた手つきでテーブルの上にお皿を乗せた。


「あ、ありがとうございます!」

「ふふっ、こちらこそ新鮮な反応をありがとうね」


 シャルロットは一旦、皆の顔を確認する。

 すると、全員から「食べて良いぞ」と表情で返答が来た。

 オリーバーがゆったりとした動作で席へと付いた。


「さて、細かい話は食事の後にでもして、料理が冷めないうちに頂くとし――――――」


 その時、『従業員専用』ドアから、受話器を片手に持った黒髪の青年が現れた。

 蓮はキョロキョロと辺りを見渡し状況を確認する。

 そして、オリーバーの姿を見つけると口を開いた。


「ボス、なんか『DIA』から連絡きてるっす」

「……分かりました」


 真剣な顔をしたオリーバーは蓮から受話器を受け取ると、そのまま『従業員用』ドアの奥へと消えていった。

 

「……DIAってなんでしたっけ?」


 シャルロットは緊張気味に質問をする。

 それに対し、ウェレが答えた。


「米国防情報局の事だな。こうゆう時は大抵、表沙汰に出来ないを押し付けられるんだよな」

「もしくは、シャルトットちゅんの事かもね」


 蓮はウェレの方を見る。


「そういえば、シャルロットちゃんは何のギフテッドなの?」

「こいつは【幸運】のギフト持ちだ」

「【幸運】?珍しいね」

「あぁ。俺にも影響を及ぼせるレベルのパワーがある」


 その時、オリーバーの時と同様に皆の肩が一様にピクリと反応を見せた。


「……へぇ、そりゃー野放しには出来ないね。ってか、よくここまで生きてこられたね」

「え!?私そんなにヤバイ存在なんですか!?」


 フィッシュ&チップスのポテトをモグモグと頬張りながらシャルロットは声を上げる。

 

「概念系のギフテットは皆馬鹿みたいな力を持ってる事が多いからね。政府に囲われるか、始末されるかのどっちかじゃない?」

「……なんで私ここまで生きてこられたんでしょう」

「さぁ、それこそ“運が良かった”からじゃない?」

「でもその場合の代償はどうなるんでしょうか?」


 話を聞いていたキャロラインは、興味津々な態度でシャルロッの隣に座った。


「ねぇ!代償ってどんなもんなの?」

「……おそらく、得られた【幸運】に比例した【不運】を他者に押し付けるものです」

「凄いじゃん!ムカつく奴とかがいたらさ、自分の頭を銃で撃てばそいつを殺せるかもしれないって事でしょ!?」

「それは物騒すぎますよ!!!」

 

 信じられないといった表情で、シャルロットは揚げた魚にフォークを突き刺し口へと運ぶ。


「……シャルロットちゃんって結構、腹ペコキャラなんだね」

「いや、ご飯が美味しすぎるんですよ!食べる手が止まりません!これもレオ姐さんの【ギフト】能力ですか?」

「違うわよ。私の料理が美味しいのは、ただ腕が良すぎるってだけよ」


 そう言うと、レオ姐はルンルンとした足取りでキッチンの方へと向かった。


「お代わりを作ってくるわ」

「やったぁ!」


 シャルロットはまるで子供の様に喜びの声を上げた。


 しかし、追加の料理が来る前にその歓喜は急降下する事になった。



――――――――――――


「……え、今なんて?」


 シャルロットは手に持っていたフォークを皿の上に落としてしまう。

 その反応を見てもなお表情を変えないオリバーが告げる。


「悪いが、オーストラリアに向かってもらう」

「今からですか!?」

「いや明日からで構わない。ウェレと蓮の三人で行ってもらう」


 ガタッ


 椅子を勢いよく押しのけ、二人の男が立ちあがった。


「おいおいおいボス、つまんねージョークは止めてくれ」

「そうだよ! 僕は行きたくないよ! 絶対、ヤバイ仕事じゃん!」

「拒否権はありません」


 蓮はウェレの方を指差す。


「ってかウェレだけじゃダメなの?」

「あちらに日本人の協力者がいるようなので、貴方が同行している方が都合がいいかと」

「くッ……確かに僕が適任ではあるね」


 ウェレは顔をニヤつかせながら蓮の近くへと寄ると、背中をパンパンと軽く叩いた。


「おう、一緒に頑張ろうぜ兄弟」

「何でよりにもよってウェレなのさ……」

「なぁボス。つーか仕事の内容はなんだ?」

「現地で巨大な蟻が出没しているらしく、その調査をして欲しいとの事です」

「蟻? 虫野郎なら楽勝じゃ――――――」

「えぇ。2mサイズの蟻です」


「「……は?」」


 ウェレと蓮は驚愕の表情を見せる。


「……え、それって僕達TSGの仕事じゃなくないですか?」

「あぁ、それには俺も同感だな。どう考えても現地の正規軍を出すレベルの話だと思うが? 他国の無名TSGの出る幕じゃねーな」


 二人は納得できていない様子を見せる。

 それに対し、オリバーは小さく頷き一定の同意を返した。


「米政府が絡んでいる話なので、何かがあるのは確かでしょうね。それこそ表沙汰に出来ないがあるのでしょう」

「……なるほど、どうしても介入したい話だが、有名どころのTSGや米正規軍を出すのははばかれるっことか」

「オーストラリア政府にもメンツがあるからね。まぁでも、猫の手も借りたい状況でもあるんだろうね」


 オリバーは二人にパスポートを手渡す。


「裏の目的は現時点では分りませんが、危険だと判断したら即座に離脱してください。これは命令です」

「そうだな。ってかシャルロットは話についてこれてい――――――」


 ウェレはシャルロットの様子を見るべく視線をそちらへと向けた。

 しかし、そこには呆然とし真っ白になっている少女の姿があった。


「シャルロット!」

「……私――――――飛行機が苦手なんですよね」

「そっちかよ!」

「はい……海路で一か月くらいかかったんです……」


 シャルロットは助けを求めるかの如く、オリバーの顔を見た。

 それに反応し、オリバーはニッコリと笑う。


「――――――気絶させて無理矢理にでも乗せましょう」

「いやああああああああああッ!!!」


 オリバー・カーターは鬼畜紳士であった。 

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アメリカ最強!アメリカ最強!アメリカンゴオオオオオオオオオオオッーーーーー!!!!(タイトル未定) 信濃川珍歩 @TANA_KEN_DAYO

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