7.悟の想い
数日後、図書館で。
あかりは悟と二人で本の整理をしていた。
「結城さん、寛から聞いたよ」
悟が静かに言った。
「え?」
「彼が、君に告白したこと」悟は微笑んだ。
「そして、断られたこと」
あかりの顔が赤くなった。
「悟くんにも知られちゃったんだ」
「寛は、少し落ち込んでたけど、すぐに立ち直ってた」悟は本を棚に戻しながら続けた。
「強い人だね、彼は」
「うん」
二人は並んで本の整理を続けた。
しばらく沈黙が続いた後、悟が口を開いた。
「…実は、僕も」
「え?」「僕も、君のことが好きだった」
あかりは手を止めた。
悟は静かに微笑んでいた。
「君が図書館に来た時から、気になってた」
悟は遠くを見るような目をした。
「君といると、心が温かくなった。孤独じゃなくなった」
「悟くん…」
「でも、君は道都先輩を想っている。それも分かってる」
悟は本を抱きしめた。
「だから、僕は言わないでおこうと思ってた」
「なんで今…」
「寛が勇気を出したから」悟はあかりを見た。
「僕も、自分の気持ちをちゃんと伝えようと思って」
あかりは何も言えなかった。
「でも、告白じゃないよ」悟は優しく笑った。
「ただ、僕の気持ちを知っておいてほしかっただけ」
「悟くん…」
「君が道都先輩を選ぶなら、僕はそれを応援する」
悟は静かに言った。
「君が幸せなら、それでいい」
「ごめんね…」
「謝らないで」悟は首を振った。
「恋は、誰のせいでもない」
「でも…」
「僕は、君の友達でいられるだけで幸せだよ」
悟は本当に穏やかな表情で言った。
「君がいてくれるから、僕は孤独じゃない。それだけで十分」
あかりの目に涙が浮かんだ。
「悟くん…ありがとう」
「ううん」
二人は微笑み合った。
悟の想いは、静かに胸の奥にしまわれた。
彼は、それでいいと思っていた。
あかりの笑顔を見られるなら、それで。
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