6.告白


それから一週間後、放課後。

寛があかりを屋上に呼び出した。


「なあ、あかり。ちょっと話があるんだ」

「どうしたの?珍しく真面目な顔して」

「まあ、聞いてくれよ」


屋上には、夕陽が差し込んでいた。海からの風が、二人の髪を揺らす。

寛は手すりに寄りかかり、海を見つめた。


「あかり、俺たち、どのくらいの付き合いだっけ?」

「小学校からだから…もう十年くらい?」

「十年か」寛は笑った。「長いよな」

「うん」

「その十年間、俺はずっとお前の傍にいた」


寛は続けた。


「幼馴染として、親友として」


あかりは何か予感がして、胸がざわついた。

「でも」寛は振り返った。


「俺は、もうそれだけじゃ満足できなくなった」「寛…?」


「あかり」


寛は真剣な目であかりを見つめた。


「俺、お前のことが好きだ」


あかりは息を呑んだ。


「幼馴染としてじゃない。一人の女の子として、好きなんだ」

「寛…」

「中学の時から、ずっと思ってた」寛は照れくさそうに頭を掻いた。


「でも、言えなかった。幼馴染の関係が壊れるのが怖くて」


あかりは何も言えなかった。


「でも、もう我慢できない」寛は一歩近づいた。


「あかり、俺と付き合ってくれないか?」


沈黙が流れた。

あかりは戸惑っていた。寛は大切な幼馴染。でも、今のあかりの心には、道都の姿しかない。

「寛…ごめん」あかりは下を向いた。


「私、答えられない」


寛の表情が曇った。


「…もしかして、好きな人がいるのか?」

あかりは頷いた。

「そっか」寛は無理やり笑った。「誰だ?道都か?」

あかりは驚いて顔を上げた。

「な、なんで…」

「分かるよ」寛は苦笑した。


「お前、道都と話す時、すごく嬉しそうな顔するもん」

「…ごめん」


「謝るなよ」寛は優しく言った。「恋は、どうしようもないもんだ」「寛…」

「でも、一つだけ言わせてくれ」


寛は真剣な目であかりを見た。


「道都は、お前のこと大事にしてくれるのか?」

「え?」


「あいつ、守護者の掟とか、責任とか、そういうのに縛られすぎてる」

寛は心配そうに言った。


「お前を幸せにできるのか?」

あかりは少し考えた。

「…分からないよ。でも、私は瀬野先輩を信じたいの」


寛はあかりの表情を見て、頷いた。


「…そっか。なら、いいんだ」

「寛、本当にごめんね」

「謝るなって」寛は明るく笑った。


「俺たち、ずっと友達だろ?それは変わらないよ」


「うん」


「ただ」寛は少し寂しそうに笑った。


「相棒から、親友に格下げだけどな」

あかりも笑った。


「親友で、大切な人だよ」

「おう!」


二人は笑い合った。

寛は笑っていた。心の痛みを隠すように。

彼は笑顔を保ち続けた。

それが……彼のやり方だった。

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