自己紹介





「え、おま……俺のこと知らねぇの?」


「え、うん。なんか見たことはある気がするけど話したことないでしょ?」


「え、俺お前に昔飯やったことあると思うんだけど……」


「……」


「………」


「…………」


 気まずい雰囲気が、僕と青年Bの間に流れる。

 どうやら相手は僕と話したことがあると認識しているようだけど、僕は忘れてるみたいだから。

 でも……うん、覚えていない。本当に申し訳ないけど、顔に見覚えはあれど話したことなんてない気がする。



「えっと……うん。君も、村の有象無象と一緒ってわけじゃなかったのかい?」


「有象無象て……いやお前からしたらそうなるのかもしれんけども。俺は村のなかでも比較的ましな部類だぜ?」


「それを自称するってことは信用ならんね」


「じゃあなんて答えればよかったんだよ?!」


 なにこの人、おもしろい。今のこの反応だけで多分悪い人じゃないんだろうなということはわかったね。

 こんなに面白い反応をする人に悪い人はいない。僕の経験則的にそう。だってそもそも普通の人は僕が話しかけても反応すらしてくれないもの。それどころか疫病神を見るような目でしっしって手を振ってくる。


「いやまあ、もっといい言葉遣いとかあったんじゃない?」


「ただの農民に教養を求めるな」


「多分君僕よりもバカだろうね」


 テンションだけでしゃべって考えてる僕よりも。やばいよ? だいぶ。

 村の疫病神以下ってことだもの。腹抱えて笑ってあげようか? ……さすがにやめとこう。せっかく話せる相手ができたのにそれまで手放しちゃったら僕泣いちゃう。精神的ショックで村に向かう魔物さんの討伐怠わっちゃう。



 ――しかし、今聞くべきことはそれじゃない。

 別に雑談をしててもいいけど、それは後からでもできるもの。自己紹介、大事。

 相手のことを知らないとほら、気を許して喋れないよ? そもそも気を許すっていう感覚を僕は知らないんだけど。僕は知識だけはあるからね、なぜか。逆に知ってるだけで経験はしてないってことになるのはご愛敬。僕のチャーミングポイントとでも思ってほしい。



「――それで、結局君は誰なのよ」


「……お前、しゃべっても結局思い出せなかったのな」


「思い出す気もなかったしそもそも知らないし」


「はぁ……俺の名前はシス・コーン」


「えっ、シスコン? それともシスコーン?」


「村に生まれた唯一の良心、それが俺さ――」


 そうして、シスコン男は自己紹介を始めた。

 結局、シスコンなのかシスコーンなのか悩みに悩んでたせいで、名前以外聞き取れなかった。

 ほら、朝を豊かにする朝食か妹Loveの変態か、重要でしょ? しょうがないさ、なんとかなるでしょ。




 ◆ ◆ ◆




 気づいたら青年C——カースくんというらしい――も起きていて、結局は三人で途中から雑談をしていた。

 どうやらこの二人は初めて僕が魔物を倒した後の倒れていた僕を村に運んでくれた人のようで、やっぱりほかの村人とはちょっと違うなぁって改めて理解した。

 それゆえなのか、僕とまともに話してくれているこの二人を手放したくないなとおもい、思考すること早数分——僕は、妙案を思いついた。



「……あ、そうだ。君たちも僕の仲間にしてあげよう」


「は?」


「何言ってんだお前」


 二人が、まるで僕が頭のおかしいことを言い出したかのように頬を引きつらせ見つめてくる。え、ちょっとあとずさりとかし始めたんだけど。そこまで僕の仲間になるの嫌なの?


「いや、僕と話せる村人なんて君たちくらいしかいないじゃん? ほら、精神衛生的な面でも」


「たしかにお前嫌われてるもんな」


「なんでも盗んでいくんだし自業自得だろ」


「……いや、僕そこまで誰かからもの盗んだことないと思うんだけど」


 僕がするのは、基本的にかまってもらうための嘘とかまってもらうためのいたずらだけ。盗んだことなんてそこまでないんだけどなんでそれが最初に出てくるんだろ?


「いやお前、俺のスコップ盗んだじゃねぇか」


「え? ……あ、あれってカース君のだったの?」


「俺さっき言ったよな……? てかコーンが最初に説明したよな……?」


 誰かと話をするっていう機会があまりにもなかったせいでさっき話されたことも記憶できない記憶弱者が僕です。許してください。



 それを見ていたシス・コーン君が、僕が困ってるのを察したのか、ニコニコしながら僕に問いかけてくる。


「いやまあ、それはいいんだよ。俺たちをお前の仲間にってどういうことだ?」


「まず、僕ってなんで嘘つきの少年になったと思う?」


「え、そりゃお前が噓つきまくってたからじゃねえのか?」


「いやそうなんだけども、そうじゃなくて僕が嘘をつく理由を予想してみてってことだよ」


 途端に、うなりだす二人。確かにはたから見れば僕の行動は意味不明だろうし、僕自身僕の思考が少しずれてることは理解している。

 だけどさ、別に僕そこに悪意なんてなかったからね? なんで君たちはまるで僕が村の人たちを絶望に陥れたかったからみたいなこと言ってるの? 興味もないよそんなの。



「……アンサー聞いとく? 今のところ君たちの予想ことごとく外れてるけど」


「おう、まったくわかんねぇや」


「第一普通あんな小さな村で嘘をつこうなんて思わないしな」


 シス・コーン君は素直にわからないというだけなのに、どうしてこうカースくんは僕を刺そうとしてくるんだろうか。普通にわからないでいいじゃない。


 ――と、話し始めてすぐなのに折れそうになっている心を持ち直し、僕は再び話し出す。


「別に僕、村の人たちのことが嫌いとかないのを先に言っておくよ」


「「は?」」


「僕が最初から望んでいるのはただ一つ」


 僕が望むのは人とのつながり、誰かとのつながり。

 ――強いて言えば、僕の存在を忘れないでいてくれる人だから。


 別に、歴史になんて残らないでいい。僕は誰か一人に覚えられていたら、それでいいのだ。

 ……たぶん、今でも誰かに覚えられるという目標は達成してるだろうけど。

 それはあくまで〝嘘つきの少年〟というレッテルでだけ。

 たぶん、語り継がれるのは僕がどれだけ極悪な少年だったか、とかだろう。


 僕の行い的に無理なのはわかっている。だけど、誰か一人には僕が普通に楽しいことが好きなだけの少年だったと覚えていてもらいたい。それが、僕の願いだ。


 ……まあ、今じゃその〝普通〟さえ危うくなってるんだけども。



 ――だけど、それを言うのはなかなかに照れ臭い。

 というか、恥ずかしすぎて口に出せる気がしない。


「君たちには、僕の話し相手になってもらうついでに、時々食料を持ってきてほしいんだ」


 僕は村を守るし、この二人には僕の〝お友達〟になってもらう。


「――なかなかにWinWinな関係じゃないかな?」




あとがき――――

3000文字……ぎりいかなかった(二日目)。

明日から更新無理です。多分。

気分で書いちゃうかもしれないけど、その時は僕をコメントで叱ってください。

いい加減勉強やばい。

ということでさらば!

12月のはじめらへんに戻ってくるよ!!


ぜひとも星、いいね、コメント、フォローをおねがいします!

面白いと思った方はぜひともよろしくお願いします!

そうじゃなくてもいいねしてくれると嬉しいです!(強欲)

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オオカミ少年 〜嘘つきの少年、村を守るために狼と戦ってたら最強になっていた模様〜 tanahiro2010@猫 @tanahiro2010

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