村人





「……ちょっとまった」


 狼の魔物さんが徐々に潰されていく様子を眺めていた、その時。

 僕は、「力尽くの無理やりな停止のため壊れちゃうかも」という懸念を無視して、迷わずに【念動力】を使って仕掛けを停止した。


 降りてきていた天井がいきなり「ミシミシ」という音を立てながら停止している状況に驚いたのか、暴れまわることを辞めた狼の魔物さんに手刀を一閃。

 斬る、というよりかは首の肉をつぶすような勢いで首ちょんぱし、狼の魔物さんを撃破。最近……というより一昨日から始めた狼さんが塵になったかの確認もせず、天井を押し戻す。


 すると―――


「……わお、なんでこんなところに人間が?」




 ―――どうしてか、今もなお壊れそうな音を上げている天井を眺めながら震えている青年二人が、奥にはいた。


 違和感を感じた……というよりも、何かの物音——さらに具体的に言えば僕らが使う言語——が聞こえた気がしたから焦って停止したものの、まさかほんとに誰かいるとは思わなかったなぁ。……下手すりゃこんなのトラウマものじゃない? 落ちてくる天井、出口近くには火を纏う魔物、そして檻の外でくつろぐショタ

 うーん、僕なら迷わずに発狂する。それか死に絶望する。まだ死にたくはないもの。



「えっと……大丈夫?」


 多分狼さんが村に近づかないようにするように掘った罠に引っかかり落ちてきたであろう二人に声をかける。

 見慣れた服装をしているし、多分僕の住む村の住人なんだろうけど、名前はわからない。でも、覚えてるってことは何らかの接点があったんだろうね。


 ……消しちゃう? いや……いやいやいや、さすがにそれはやめとこう。

 天井を止めてまで助けた意味がなくなってしまう。


 でもなぁ……なんかこの二人僕見て震えてるし。扱いに困るというかなんというか、このまま何も見なかったことにして村に帰ってくれないだろうか。

 ああっ! ここまで切実に記憶を消す魔法が欲しいと願ったことはないねっ!



「えっと……君たち誰?」


 といってもまぁ、ないものねだりをしたところでこの現状は変わらないわけで。

 とりあえず知らない人とコミュニケーションを試すときは一番初めに相手の情報を得ろと夢の中でマイ存在しないマザーが言っていた気がするので、とりあえず尋ねてみる。



 ……うーん、答えてくれない。

 どうしよう、嘘以外で人とかかわったことがないせいでどうすればいいかわからない。やっぱり消すべき? いや、それは嫌だし……よし。


「申し訳ないけど、今の君たちは冷静さを欠いているようだし――少しの間寝ててもらうよ」


 果たしてこの二人に「冷静さを欠いている」という言葉が適応されるかはわからないけれど、とりあえず僕は二人の首に手刀を振り下ろすのだった――




 ◆ ◆ ◆




「んあ……?」


 目を覚ましたら、目の前に狂ったショタがいた。

 マジでそれ以外言い表せなくて、は困惑していた。



 こうなるまでの経緯を思い出す。


 ―――最初はカースの提案にのり、俺らは名無しがどこにいて、何にスコップを使っているのかを探す、それだけの予定だった。

 しかし、森の方向も、その反対の方向を探しても名無しは見つからず、村に帰ってこようとした、その時。

 運悪く俺らは、よく村の外をうろついているに出くわした。


 もちろん、俺らはただの村人だ。農業にいそしみ、陰で村長の悪口を言い合うことしかできない俺らに、戦闘能力なんて少しもない。

 追いつかれたら喰われる——そう即座に悟った俺らは、二人で森の方向に何も考えずに走った。


 もちろん、そんな俺らに走り続ける体力なんてあるわけなく、「あぁ、ここで俺らは食われて終わるんだ」と悟ったその時——、それまではすぐ後ろで聞こえていたはずの狼の息遣いがいきなり聞こえなくなりった。


 困惑したさ、そりゃ。死を覚悟した瞬間に狼が消え去るなんていう謎の現象に出会ったんだから、困惑しないほうがおかしいと俺は思うね。


 だけど、もちろん喜び合った。カースは俺に抱き着いてくるし、いつもならはねのけるであろう俺もその時は許容した。というか、俺からも抱き着いた。



 だけど、俺らの不幸はそれじゃあ終わらなかった。


 さて、帰ろう。もうこんな事態には巻き込まれないように、極力村から出ることはやめよう。

 そんなことを二人で話し合い、村へ帰ろうと一歩を踏み出したとき――俺ら二人の視界は、見事に暗転した。

 悟ったよ、俺は。「あっ、あのクソでか狼消えたんじゃねぇ。この穴に落ちただけなんだ」って。

 ついでに、こうも思った。「あれ? じゃあ俺らこの下で狼に食い殺されて終わりなのか?」



 ――答えは、違った。

 なぜか石造りのやけに立派な空間に落とされ、光の入ってくる方向を見れば――炎を纏う狼が見たことのある少年……そう、〝名無し〟に唸っていた。

 俺らじゃ太刀打ちできないような力強さで暴れるてるし、終わりかな、と。

 そう思ったとき――名無しの野郎は、指を鳴らした。



 そこからは正直、なんも覚えちゃいねぇ。

 なんかいきなり天井は降りてき始めるは、名無しはそれを優雅にくつろぎながら鑑賞してるわ。

 怖すぎて俺もカースも、悲鳴がこぼれ出ちまった。


 だけど……それのおかげで助かったんだろうなとは思う。


 なんかいきなり天井が止まるし、暴れまわってた狼……いや、を素手で殺すし、俺らを気絶させるし……。





 ―――もしかしたら、名無しは俺らが思うよりやばいすごいやつなのかもしれないって。

 俺ら二人は、そう思った。




 ◆ ◆ ◆




「んあ……?」


 声が聞こえたので振り返ってみると、あほづらをさらしている青年Bがいた。

 さっきまでは寝てたから、今起きたのだろう。


「あ、起きた」


 取り敢えず、青年Bが起きたのでBの横でのんきにいびきをかきながら寝ている青年Cの頬をびんたしてみる。


 ――ベチィッ!


 あっ、力加減間違えた。



「ヒィ……ッ?!」


 青年Bがおびえた目を僕に向けてくる。やめてくれ、今のはわざとじゃないんだ。

 いや、わざとじゃなくても今の音はやばかったけども。死んでないからセーフ。今もなんかいびきかいてねてるしセーフ!!



「えっと……うん。取り敢えず大丈夫?」


 起きない青年Cは放置してBに話しかけてみる。

 「こくこく」……いや、もはや「ぶんぶん」に足を踏み入れそうなほどの速度で首を振ってるし、多分大丈夫なんだろう。

 でもその速度で振り続けてたら絶対首攣っちゃうよ? 大丈夫なのかな。大丈夫なんだろう。なっても知らん。自己責任じゃ。


「それじゃあ取り敢えず聞きたいんだけどさ」


 Bの顔を眺める。ちょっと頬が引きつってるね。まだ疲れが取れていないらしい。

 まだ寝ててもよかったのに。起きちゃったからには僕の質問には答えてもらうよ。


「――君たちって結局誰なの」


「は?」


 本題を聞いた瞬間、その頬はもっと引きつった。もしかしてその顔、疲れ故じゃない?




あとがき――――

3000文字……ぎりいかなかった。

前回と同じくらいの文字数かな? まあいっか。

取り敢えず今の問題点は全く話が進んでいないこと。

仕方ないよねと思いたいけどこれのせいで徐々に読者が減っているんだ。僕にとってはまったくしょうがなくない。

ということで多分あと少しで話が進むと思うのでお付き合いください。ブラウザバックしてもいいけどその場合は作者の生霊がジャガビーをねだりに行きます。覚悟なされ。


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