第5話 悪魔の流儀
悪魔にはそれぞれの流儀があり、それはジョン=ドゥにもある。
悪魔はそれぞれに司る力があり、ジョン=ドゥは悪魔にしては珍しい創造という力を持っている。
本来ならば神や天使に発現しやすい力ではあるが、ジョン=ドゥはその力を持っていた、これは前世の魂の影響もあるのかもしれないし創造神の加護のせいかもしれないが、まあとりあえず創造の力を得ている。
そしてジョン=ドゥは元は日本人の人間であったことで八百万の神の世界を知っている。そのことから現界している神を含め知覚できる神や精霊や人ならぬものへの奉納を忘れずに行っている。
別に信心があるとかではないが、この世界を成り立たせる要素として神や精霊が力を使い成り立たせているのであれば感謝は必要だろうとそういうような感覚で、世界に点在する神や精霊達に自らの創造した武具や酒や食物を奉納している。
結果、世界の存在強度も高まり滅びることはほぼないといっていい。
神の力や精霊の力が潤沢な世界ほど世界が壊れることはないが、その分、加護や多くの祝福をあげやすい神や精霊も出てくるので戦乱にもなりやすい。
まあそんななかで悪魔や天使はそれぞれの役割を果たしバランスを発生させくのだが、時たまジョンのように使命のない強大な悪魔もいる。
少なくともジョンを含めた変わり者の悪魔は複数いて、ジョンは原初の悪魔とよばれる悪魔の一人ではあるが、ジョンの他にも後二人、原初の悪魔と呼ばれる二人がいる。
その二人はいずれジョンと出会ったときに紹介しようとおもうが、それもそれで癖が強いといっておこう。
ジョンの創造の力はこの世界においてあらゆる法則を無視し、あらゆる能力を再現する、世界の法則を無視するその力は扱えば世界を支配できるものではなあるが、ジョンはそれはしない。
未完成にこそ美しさがあり、文明や技術はその世界に産み出され生活する生物達のものであるから。
だから滅多な事でこの世界におけるオーパーツとなるようなものは産み出さないし、ダンジョンで産み出された技術は世界が壊れない程度のものを選んでいる。
戦争や戦乱は問題ない程度のものを見ているし、度が過ぎているようなものは潰している。
ジョンは使徒ではあるが使命はない、ただ永遠の命をもって世界をみている。ダンジョンを遊びながらつくり、人との関係を構築し、流れを見る。
ある種のゲームのようにみているが、それでもジョンは支配はしない、戦争によって産み出される技術や救いがあるからだ。
そもそも元々が日本人の基礎的な教養を得ただけの人間だ。軍事的な話なんてよくわかりもしない。
善人ではあるが善行を常にしているわけでもないし、悪魔になってから選ぶことは増えた気がする。
どんなに万能無欠な力でも与えたりし続けたら自分もダメになるし、相手もダメにする。
自分の流儀以外のことは適度にするというのがすごくいいのだろうなあとジョンは考えている。
だからこそジョンは伝承の悪魔にふさわしいのだとおもう。
適度な恐怖と慈愛、そして時に敵対し味方し、世界の歯車を動かしてきた。
ジョンも永い時の中で暇潰しになるような事をしただけというような感覚もあるが、それはそれで楽しめたのだからよいのだろうなあと考えている。
時間が無限にあることは幸福であり、不幸でもあると身をもってしっているので、彼は研鑽をやめないだろう。
どんなに才能があり、どんなに力があっても永い時を研鑽なく過ごせばそれは凡人と変わらないのだから。
永劫の時を鍛え抜き自分の流儀を満たしながら生きたからこそ世界最強とも呼べる脅威になっているのだ。
ジョン=ドゥ、本来ならば名もない悪魔として生きるはずだったが、あらゆる苦難と様々な出来事を乗り越え、格を上げながら生きてきた。
1万の時を超え超越者であり神ともなった。
不老不死というのは誰もが憧れはするが、必ずしも幸福ではない側面もある。前も行ったが友や恋人になった定命の者との別れ、悲しみや苦しみはそうそう慣れず、優しさもまた消えない。
それはジョンが人間だったこともあるのだろうが、関わってきた者達がやはり人間として美しかったというのもあるだろう。
人を愛する事に長け思いやりがある尊い者達。
だから英雄や勇者として言えるのかもしれない。
だからこそこの世界を存続させようと彼もうごくのかもしれない。
悪魔の流儀は大小あれど、ここまでだいそれた事をする悪魔もなかなかいない。世界は美しくも醜いのも知っているからこそ彼は楽しみながら世界を生きれるのだろうとおもう。
彼は永劫の時を多くの友や恋人と共に過ごした。
その世界の記憶があるからこそ彼はまだ人を愛せるのかもしれない。
彼は守護者であり敵対者であり、観測者でもある。
多くの試練は彼から生み出され多くの慈愛も彼から産み出される。
多くの文明は彼のよって歯車をまわされ運営し滅び再生する。
必ずしも人類は黄金にたどり着くことはないときもあるが、何度滅びても新たな種が産まれるたびに多くの煌めきを感じる事ができるのは不老不死の特権であるなあとはおもう。
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