第6話 cigarlife

ジョンの数少ない趣味の中に葉巻を吸うというものがあるのが、前の物語で語られたとは思う。数少ない趣味というのは凝るものでももある。


そうジョンは葉巻も好きだが酒も好きだ。むしろ人間時代よりもこの世界に来たよりも好きかもしれない。


あらゆる酒の醸造を調べ可能な限り多くの酒を産み出した。そして趣味の延長線上で自分の運営しているダンジョンの一角に一つのBARを創りあげた。


「cigarlife」


純粋に煙草や葉巻と酒を楽しむだけのBAR。

地球のBARと同じようなルールで成人年齢にならなければ入れず、静かな黒い店内で、カウンターしかなく順次世界の酒が仕入れられている。


穏かなBAR。ジャズが流れそれぞれの好きなように煙を楽しみ、酒を飲む。

ここでは上流階級や軍人や民間人等関係なく、同好の士が何気ない会話と酒を楽しむ。



美味しいカクテルやブランデーや日本酒に類似した酒、果実酒やジンとウォッカ、ここでしか飲めない地球産の酒もあるし、趣味程度とはいえ本格的なバーテン技術を覚えたジョンが店主。


永い付き合いの種族もいれば新しい客もいる。

緩やかな時はやはり特別でこの店の繋がりはやはり特別なもののようで、外界にも影響している。


人は宝だという事の証明のように、国を揺るがす危機があるときには友となった超越者が救いにあらわれ、時に修業の活路を見いだすために師事をする者が現れ、技術を提供しに国を根本を変える者が現れたり。



酒と煙の紡ぐ縁はバカにはできず、彼らの友愛の関わりは世代を超えて紡がれる。


ジョンの店はただそこにあるだけではあるが、そこで関わる人間模様は素晴らしく穏やかで益のあるものだ。


酒と共に出されるつまみや料理も絶品でそのおいしさにも震える。


趣味程度としかしてないのでジョンが疲れたと感じたならお店は閉まるが少なくともこのBARはずっと永い時を重ねている。


店主一人の見様見真似のBARではあるが、永い時で熟練されあらゆる世界の料理よりも美味しいといえるような腕前になったのもまた面白い。


ジョンはジョンでこの趣味をもっと向上させようとたくらんでいるので、もっとおいしいものができていくだろう。


別に会員制でもないし、旅の旅程の先にふらりと立ち寄ったらいい。

そんなもんでいいのだ。



食事や娯楽の質は高まれば高まるほど心は充足していくし、充足していく気持ちがあればあるほど、心は余裕がもてていく。


余裕を持つことは大事なことだ。

そして年齢を重ねれれば重ねるほど落ち着き払った知性と行動が求められる。

大人であろう何ごとも。


酒や美味しい食物は更に大人な人間達のふるまいによって更なる美味は与えられると思うのだ。


人は多くの美味に出会うと作法を学ぶ、人は酒のふるまいを覚えると知性を得る。

美しさと混沌をただの快楽というだけにするにはもったいない。


人は多くを学び豊かにしてきた。

それは些細な趣味や娯楽に対してもだ。


美しい関係性や行動や所作には魂が宿る。


心地よい魂や好ましい関係性は心からの楽しみから生まれる。


楽しむという最大限の権利を得るのなら大人としての紳士たるふるまいをもって遊ぶとよい。


少なくとも紳士感や行動の良し悪しは人によって違うだろうが、まあ少なくとも心地よい距離感とある程度のマナーと心根がしっかりしてればいいだろう。


人間であっても別種であっても自分の好む店のマナーを知り外界でも応用すればある程度印象はよくなるものだ。


人は見た目ではなく中身とも言うが或る程度見た目もしっかりしてなければ印象はよくはならないとは思っている。


心根は明るく優しくするべきではなるが、やはり心根が淀んでいたとしても見た目がある程度整っていればうまくはいく。


それ以上にうまくするためには心根を正す必要もあるだろうが、それは気づかなければ難しいだろう。


まあ話はそれたがジョンの店「cigarlife」はなんとなしにジョンが開店したBARであるが、上流階級の人間や、軍人、民間人、様々な人種が来るので結果的に必要最低限のマナーから上流階級のマナーまであるので、来る度にそれぞれの関わり方もあいまって行動が洗練されていくので、人間的に出来ているという人間が産み出されていく。


必要最低限のマナーであればよく出来ていると認知されやすい中でレベルの高い所作をするということは知性と教養の証明であり、それもまた認知という意味ではレベルの高い能力を有するという証明でもある。


実際に戯れの授業をした賢者もいれば、普段は怠惰ではあるが気まぐれに魔法の使い方を教える悪魔もいて、それぞれの得意分野を教え合い、いつのまにかお互いの技術が高まりさらに上の能力を開花させた者達もいた。


少なくともまあ簡単に言うならば自分の行動や何気ない所作を少しずつ改善して技能をあげてけばなんだかんだよいことは起こるという事なのかもしれない。


着地点的に結局どんな話になったかといえば、ジョンのBARにいけば作法も技術も学べるし、見た目もそうだが、心が綺麗になって少しずつかっこよくもかわいくもなるかもしれないという話なのかもしれない。


趣味と娯楽はやがて所作にも影響するという話という事だ。





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