第二章 遺跡の中へ

 ついに遺跡探索の日がやってきた。


 遺跡の前にはいろんなコケ植物が生えており、放置された古代文明っぽさがすごく伝わってくる。


「じゃあ、入ろうか」


 冒険に心を躍らせながら、ガブリエルと一緒に遺跡の中に入っていった。


 遺跡の中に入るとオオカミのような形をした石のような物体が歩いていた。


「ガブリエル。あいつらが僕の言っていた碑獣ってやつ。碑獣は強いから油断しないでね」


「わかりました、では敵影確認いたしましたので。攻撃を開始します」


 先ほど僕に見せてくれたように銃を構えたような動作をとってから、内燃砲を浴びせかける。


 ごく細い熱線だが、敵を焼き切るには十分すぎるほどの火力だったようだ。


 しかも、彼女は絶対に狙った場所を外さない。


 どれだけ離れた場所からでも必ず標的の急所に命中させる。


 相手の碑獣の攻撃が来る前に恐ろしい射程の熱線が碑獣のコアを貫いていた。


 ほかの碑獣が隙をついて後ろから攻撃しようとすると、高速駆動によって回避してカウンターの射撃をお見舞いする。


 圧倒的な戦闘力で一階層目の敵をいつの間にか全員排除していた。


「質問、この物体は私の生命反応装置に感知されない。どのような物体なのですか?」


 そういえば彼女に説明していなかったっけ。


「えーと、僕も詳しいことはよくわかっていないんだけど、碑石っていう魔力を込めた物質によって自動的に動いてこの遺跡を守っている存在らしいんだ」


「了解しました、マリス。先に進みましょう。」


 うーん、実に淡白な会話だな。何の面白みもない。


 まあ一人で一切の会話がないよりかは、マシだと思おうか。


 二階層目に入ってみる、先ほどよりもより多くの碑獣が生息していた。


 おそらく最深部に近づくほど、重要なものを保管するために厳重な警備になっていると考えられる。


「マリス。あそこに見える個体、あれも碑獣?」


 そうやって指をさされた方向にはほかの碑獣よりひときわ大きい個体がそこに立っていた。


 おそらく彼が立っている先に次の階層に進むための階段があるのだろう。


「うん。あれも碑獣だ。わかっていると思うけどほかの個体よりも強力な個体だと思う。気を付けてね」


「わかりました排除します」


 そういってガブリエルは扉の角から飛び出した。


 その碑獣はさっそく臨戦態勢に入り、ビームを射出する。


 そのビームを避けながら、カウンターをお見舞いしたが、碑獣はそれすら回避する。


 開始一秒程度で目にも止まらないような高速駆動に開いた口が塞がらない。


 だけど自分も口を広げているだけで何もしないというのは苦しい。


 最近作り上げたレールガンにエネルギーをチャージして、射出する。


 ガブリエルのビームのタイミングはなんとなくわかっている。


 ビームを避けたタイミングならば相手が回避できないことを予測したうえでの攻撃だった。


 確実にコアに当たったはずだったが……、あいつはコアを破壊しても動作をやめなかった。


「マリス。おそらく相手はコアが複数あります。証拠に私のエネルギー反応には3つの高出力のエネルギー反応が見えます。私が隙を作るので、あなたはその隙をついて攻撃してください」


 冷静に状況を分析しているガブリエルは安心感のようなものを感じれる。


 リロードを行い、焦点を合わせる。


 ガブリエルと呼吸を合わせて攻撃を行う。


 2発目、しっかり当たった。コアの部分、確実にダメージが入っているらしい。先ほどよりも格段に碑獣の速度が落ちてきている。


 3発目をリロードしながら呼吸を整える。


 リロードが完了して、扉から飛び出して銃口を向けたときに、その巨大な碑獣はすでに倒れていた。


「あなたのリロードが遅かったので。すでに3つ目のコアを破壊しました。もう少し早い動きを徹底していただけると幸いです」


 ……僕だって苦手な戦闘を何とか頑張っているんだけどな。


 まぁ勝てたことには変わりがないし、たぶんそういう意味も込めているんだろうなと思いながら先に進んだ。


 下の階段の先には書庫のようになっていた。


「書庫かぁ。もしかしたらお金になる情報があるかもしれないから少し見ていかない? まぁ僕は読み書きがちょっと苦手なんだけどね」


「私は高性能なので、多少ならば文章を読んで情報をまとめることならできます」


 自分で高性能っていうのか……って思ったけど実際高性能だから何の否定もできないんだよな。


「じゃあお願いしようかな」


 そういうとガブリエルは、近くにあった本をパラパラと読み始める。


 一冊あたり一分もかかっていないように見えるが本当にまとめられているのだろうか。


 一時間近くかかったが、大量にある本をすべて読み切った様子だった。


「私が読んだ中で一番マリスが知りたそうな情報がまとめられていた本はこれです。」


 そんなことを言いながら、僕に一冊の本を出してくれていた。


 中を読んでみると、古代文字で書かれていたため自分では読めなかった。


「この本は自分ではわからないから君が読んでくれよ」


「はい、わかりました。碑石について。この地下道の最深部で採掘される碑石と呼ばれるものの性質が最近になってわかってきたのでここにまとめようと思う。まず一つ、これはほぼ無限といっていいエネルギーを秘めている。しかしのその出力方法は難解だ。まず、何もないときはエネルギーを出さない。動力部につなげたときに何かを守ろうとするプログラムならその出力を強力にできる。壊れやすくもろいが、他の何かを守るときには非常に硬くなることが確認されている。逆に何かを守れていないときにはどんどん出力が落ちてしまうことが確認できた。この碑石には明確に何かを守ろうとする意志があり、その意思が固くなるほど強力な出力を発現できるようだ」


 ガブリエルの読み聞かせを聞いている間、自分はお母さんのことについて考えていた。


 そういえば星が降る夜にお母さんが読み聞かせをしてくれたっけ……。


 確かその絵本も誰かを守るお話だった気がする。

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