第11話 モブ、修羅場を経験する
「それにしても……マフィ……マフィ……どこかで聞いたような気がするんだけど……」
「ミュラ? どうかしたか?」
「え? ミュラ……?」
何やら考え込むようにして呟いていたミュラの言葉に俺が声を返すと、今度はフェレールの隣に座っていたマフィが何やら眉をひそめていた。二人して、一体どうしたんだ?
そうして、俺が疑問に抱いていると、ミュラとマフィは突然、俺の下までやってくると、何やらいつもと様子の違う目……なんというか、影になった少し怖い目で瞬き一つせずに問い質すようにして声を向けてきた。
「ねえ、シュウ……最近、たまにわたしのことマフィって呼ぶことあったよね? まさかとは思うけど……それって、その子のことじゃないよね?」
「え?」
「シュウ……私のこと、よくミュラって間違えて呼んでたけど……それ、まさか、その子と間違えたりしないよね?」
「え?」
あれ? なんか二人とも様子がおかしくない?
しかも、なんかすごいオーラを感じるんだけど?
そうして、迫る二人に俺はゆっくりと席を立つと、徐々に壁の方へと追い込まれていっていく。そんな二人の視線に何やら身の危険を感じた俺は二人の期限を取るように笑顔を返しながら声を返す。
「どうしたんだよ、二人とも? ……なんか目が怖いよ?」
「ねえ、シュウは―」
「私」
「わたし」
「―と『二人で』稽古をしてたんだよね?」
そう言って、まるでゾンビか何かのように木剣を片手に迫ってくる二人の様子は明らかにいつもと違う……というか、君たちこういうキャラじゃないよね?
そんな問い掛けに、俺は噓をつくことはできず、正直に答えるしかなかった。
「えっと……それぞれ二人と稽古をしてました……けど……」
そう俺が答えた瞬間、軽く口を抑えたエリシルの「あら……」という声を最後に木剣を打ち込まれたのだった―。
◇
「―見ての通り、今の騎士団は地に落ちている。それもこれも、乱心した国王が先ほどのように通常であれば入団を許されないごろつき共を入れるようになったからだ。そして、私はそんな連中が嫌気が差して騎士団を出たのだが……それはそうと、少年、本当に大丈夫か?」
「……ひゃい」
真剣な表情で現状を話してくれていたフェレールだが……二人の木剣を食らい、ボロボロになった俺を心配して声を掛けてくれ、俺は返事をするしかなかった。そんな俺の両サイドにはミュラとマフィが両腕を組みながら子供らしく怒って座っており、俺は途方に暮れるしかなかった……女の子って怖い。
ともあれ、このままではいけない。さっきはエリシルの命も危なかったし、いくらミュラの闇落ちフラグを一つ消したからと言って安心できないもんな。
なにせ、この後、この孤児院ごと俺達を殺してミュラが復讐者になるという、恐ろしいイベントが待っているんだ……それまでにもっと強くなって必ずみんなを助けたい。
そうして、俺が話を戻そうとフェレールに声を返そうとした時だった。突然、エリシルが席を立つと、腕を組んで座っていたフェレールに向けて声を放ったのだ。
「―あのっ! 私にも稽古を付けてもらえませんかっ!?」
「エリシル……?」
そんなエリシルにミュラが目を丸くしながら驚いていた。
当然、俺や他の孤児達も驚く中、フェレールは静かに頷いた後、真剣な表情で声を返してきた。
「ふむ……確かに、先ほどのように騎士団の者達がまた何かしてこないとも限らないからな……身を守る術は身に付けておいた方が良いだろう。分かった。見たところ、お前もなかなか見込みがありそうだからな……お前も含めて私が面倒を見てやろう」
「あ、ありがとうございます!」
そうして笑みを浮かべるエリシルだが、その顔にはどこか無理をしているのが感じ取れた。しかし、エリシルか……そういえば、エリシルは名前として登場するだけで、フェレールと同じようにゲーム内ではステータスは実装されてないんだよな。どれどれ―
「―って、こ、これは!?」
思わず俺が声を上げてしまい、周囲の視線が集まるが……それは仕方ないことだと思う。何故なら―
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Lv 15
『女帝』
全ステータス上昇補正【大】
全状態異常耐性【大】
魔法【上級・全属性】
『剣士』
武器ダメージ増加
剣撃【小】
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本来、『プリテスタファンタジー』の物語開始前に死んでおり、設定だけの存在であるミュラの友達のエリシル……驚いたことに、彼女のステータスはミュラと全く同じだったのだから―。
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