第5話 モブ、女主人公と出会う

 そうして、翌日から俺は河原で筋トレや木刀に見立てた木で素振りでも始めてかれこれ一週間。正直、スキルに期待してたけど、『』なんてよく分からないものを手に入れたものの、どういったスキルか持て余した俺は期待するのをやめ、とりあえず黙々とトレーニングをしていた。


 ちなみに、普段はミュラも何となく付き合ってくれていたが、「今日はエリシルと一緒に買い出しに行くから」と出掛けていて、今日は一人でやっている。


「まあ、ステータスを見れるのはすごいっぽいけど……かえって、相手との差が分かって絶望するだけじゃね、これ。現にミュラのステータスの差で絶望したしな……って、痛てて……筋肉痛が……まあ、良いや。一週間も経てば、少しくらいステータスも上昇してるだろ―って、ん?」


 そんなことを言いながら、一週間ぶりにステータスを確認した時だった。


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Lv 2


『』

基礎ステータス上昇【鍛錬】


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 俺はステータスに書かれた表記を見て、戦慄してしまった……一週間前までレベル1と表記されていた場所がレベル2に変わっていたのだ。


「レベルがアップして2になってる……しかも、ステータスもちゃんと上がってるぞ?」


 しかし、驚いたのはそれだけではなかった。さらに、スキルの方に視線を向けてみると―


「スキルも更新されてる? 『』の空白のところに『基礎ステータス上昇【鍛錬】』ってのが増えてるな……もしかして、このトレーニングのおかげか?」


 それとも、この世界だと普通のことなのか? ただ、ミュラにはこの表記はなかったしなぁ……単純にミュラはそんなにまだ鍛錬してないから、とか?


「うーん、分からん……ただ、ステータスの上がり方がなんかすごい気が―ん?」


 そうして、俺が疑問に抱いていると、ふと少し向こうで誰かが木剣を片手に何かしているのが目に入った。見たところ、俺とそう変わらない歳にもかかわらず、努力家だな。ふむ、感心感心。


 ――あ、そうだ。ミュラが居ないから困ってたけど、あそこに居る子を剣の稽古にでも誘ってみるか。一人でやるより二人でやった方が効果的だしな。


 そう思い、俺はその相手のところまでゆっくりと歩いていく。


「お~い、そこの君~」

「……?」


 そうして、俺が声を掛けると、相手が気付いて素振りをやめて俺の方に顔を向けたのが分かる。そういえば、ここの川辺って『プリテスタファンタジー』だとマフィが昔剣の練習で使ってた設定だったよな。まあ、ストーリーでもたまに通るけど、それほど重要じゃないイベントだったっけ。


「もし良かったら、俺も剣の稽古してるから一緒にやらない―」


 そんな風に考えながら、その相手のところまで歩いていったのだが―


「―か……って、まさか、マフィ!?」

「―え?」


 あまり深く考えずに歩いていた先に居たのは、女性主人公であるはずのマティだったのだ。

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