ACT.9

~ようこそ、タイツの教室へ。布がつなぐ親子の絆~


春の終わり。ぽかぽか陽気の午後。

常葉女子高等学校では、全校をあげた一大イベントが開催されていた。


それが――


📚【全身タイツ授業参観・保護者ぴたぴたDay】📚

タイツで育ち、タイツに包まれ、タイツで学ぶ――

生徒たちの“布の学び”を、親御さんも一緒に体験していただきます!


朝の登校、ぴたぴたモード全開!


「見て見て〜〜! うちのお母さん、今年はフリル付きラメ入りタイツで来るって〜〜!」

「うちはパパがゼンタイスーツ用に散髪してた〜〜!」

「え、マジ!? 布のために!?」

「布のためだよッッ!」


生徒たちのテンションは最高潮。

なんせ今日は保護者も全身タイツ着用義務。

顔以外すっぽり包まれた親が学校に集合する、タイツ界でもっとも布圧の高い日である。


あやかの家もぴたぴたファミリー!


・母:桃色ゼンタイ+エプロン風布アクセ

・父:黒タイツに金色ラインのフォーマル仕様

・妹つぐみ:いつものラベンダータイツ(ランドセル込み)

・姉:大学生ながらグレーの布ドレスタイツで参戦!


玄関を出た時点で、すでに家族全員、全身ぴったり包まれたゼンタイ一家。


「ねぇ……ちょっと恥ずかしくない?」

「何を言ってるの。今日は“布の誇り”を見せる日でしょ」

母は堂々と、ぴたぴた布ハイヒールで颯爽と歩き出す。

(……強い……さすが母)


授業参観スタート!


1時間目は「タイツ圧調整の基礎物理」!

あやかたちは、親の前で布圧計を装着し、自分の布張力を計測していく。


「はい、お母さま、ぜひ触ってみてくださいね〜〜」

先生(もちろんゼンタイ)がにっこり笑い、保護者も生徒の太ももや背中を布越しに確認。


「まあ! あやかのタイツ、すごく良い布圧してるじゃないの〜〜!」

「……で、でしょうか……」

(ぴたぴたすぎて、逆に緊張する……)


2時間目は「布社会の倫理とマナー」。

“電車での足組み禁止”“布同士の静かな挨拶”など、ぴたぴたの日常に必要な作法を学ぶ。


「ここ、ポイントです! 布は語らずして心を伝えるもの!」

「は〜〜〜い!」

「ぴた!」(全員でぴたっと直立)


保護者席も、同じタイミングでぴたっとする。

タイツ同調率、100%。


昼休み:親子ぴたぴたランチタイム!


家庭科室では、特製の「布弁当」を広げる光景があちこちに。


・タイツ型おにぎり

・布繊維風そうめん

・ぴたっと密閉されたプリン


「はい、お姉ちゃん、おかず交換しよ〜!」

「ふふ、相変わらずつぐみのプリン、布感つよ……!」


親子で肩を寄せ合い、布の音を立てながら笑い合う。

空気があたたかく、ぴたぴたしていて、

まるで教室全体がひとつの布に包まれているみたいだった。


最後の時間:全校親子ゼンタイ合唱


音楽の授業として行われる恒例の行事。

生徒も保護者も、色とりどりの全身タイツのまま体育館に集まり、

布の歌を歌う――


「ぴた〜〜〜 ぴた〜〜〜 心と布が〜〜〜♪」

「しゅる〜〜〜 しゅる〜〜〜 身体を包むぅ〜〜〜〜♪」


ぴた、しゅる、ふわ、ぴしゅっ。

タイツ越しの声が交じり合い、布と布の響きがひとつになった瞬間。


帰り道、母が言った。

「いい学校に入ったわね、あやか」

「うん……ちょっと変だけど……すごく、好き」

「私も……また来たいわ。この布の世界」


ぴたぴた。

家族の絆も、タイツのように、しっかりと包まれていた。


~ぴたぴた学園祭ライブ、布のステージへようこそ!~

「ついに決定しましたーっ!!」

生徒会長の布マイク越しの声が、放送室から全校に響きわたった。


📣「第25回・常葉学園祭」目玉企画!

ついに誕生――全身タイツアイドルユニット『ZENTY』!

体育館ステージにて、完全ゼンタイライブショー開催決定!


放課後の教室に、ぴたぴたとどよめきが走る。

「えええええええええええ!? アイドル!? ゼンタイで!?」

「タイツで踊るの!? 息できるの!? ステージ、布滑りそう!!」

「やるしかないでしょ……今までの布のすべてをぶつける、舞台よ……っ!!」

こうして選ばれたのは――



白ゼンタイ:あやか(センター/儚さの象徴)



赤ゼンタイ:みな(パワー/煽り担当)



黒ゼンタイ:のぞみ(クールビューティ)



青ゼンタイ:さや(天真爛漫・振付係)



そしてユニット名は……


💫**『ZENTY(ゼンティ)』**💫

“全身タイツで、世界を包み込む。”



ライブ準備期間:布と汗とぴたぴたの日々!

「布がね……すべるのよ!」

「息すると、フードがぺこぺこなる!」

「でも、逆にそれがリズムになるの……!」

連日、体育館の鏡前で繰り返されるぴたぴたダンス練習。

全身タイツだから、汗も蒸気もこもる。でも脱げない。

むしろその熱気すらパフォーマンスに変えていく。

「この布の中で、私は私になる」

「動くたび、タイツが歌ってる気がする」

「ぴたぴたの振動、音楽に変えてこ」


学園祭当日・会場:体育館ステージ!

照明が落ちる。

会場は静寂に包まれる――

観客は生徒も保護者も先生も、全員フルゼンタイ。

まさに「布の渦」の中で、布のショーが始まる。

「Ladies and gentlecloth……!」

司会の声と共に、カウントダウンが響く。

3!

2!

1!

\布音爆発!ステージにぴたぴた降臨ッッ!/

🎵 テーマソング:『ぴたぴた☆ハートで包んで』🎵


♪しゅるるん滑って近づいて〜

  ゼンタイなキミにくぎづけ〜

   心も体も見せないけれど

    ぴたっと包んで伝えるの〜💕


ステージに広がる、色とりどりのしなやかな布のシンクロ!

手の動き、脚の伸び、全身から放たれる布の波が

光を反射し、空間をきらめかせる。

観客は布越しに歓声を上げ、

サイリウムも全員、布カバー付きの「布リウム」仕様!

「ZENTY〜〜〜!!!愛してる〜〜〜!!」

「しゅる〜〜〜! ぴた〜〜〜っ!!」


ライブ後・楽屋裏のぴたぴた余韻

全員、汗びっしょり……だけどタイツはそれすら吸収し、

布に包まれたまま、四人は体育館の床に座り込む。

「……やりきった……」

「布で……世界、包めたかな……」

「うん。今日の私たち、完全にぴたぴたアイドルだった……」

「ねぇ……次は、学外ライブしようよ。タイツの伝道師として……!」


こうしてZENTYは伝説となった。

タイツの世界に現れた、布と心をつなぐ布使いたち。

ぴたぴたで、すべてを包み、

ゼンタイで、すべてを魅せる――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る