第6話新しい歌うたえるまで

「じゃあね」

ともちゃんちを出て、ponziは家路についた。いつもの道が今日は少しだけまぶしく見えた。ほんの3ヶ月前まで恋人同士だった2人。ともちゃんとの思い出が走馬灯のように脳裏に浮かんだ。松戸のマンションに2人で泊まってむさぼるように求め合った時期もあった。

本八幡のジュエリーツツミにともちゃんに誘導されて初めて入った。宝飾品を買える大金など持ち合わせていなかったが、店員さんたちは愛想良く対応してくれた。ともちゃんは何でも知っていた。ponziが知らなすぎたのかもしれない。

思えば、ここまで本気で恋愛らしい恋愛をしたのは、50年生きてきてともちゃんが初めてだったかもしれない。3歳年下の47歳のともちゃんだ。


グループホームで世話人さんがこさえてくれた夕食を食べ終え、お風呂にも入り寝る準備をする。ともちゃんに借りたカズオ・イシグロと平野啓一郎に少し目を通す。実際ponziの部屋は書籍が山積みになっているが半分も読んでいなかった。ただむかし父上の同僚で東大法学部卒弁護士の町井先生の名言を思い出した。町井先生は本が好きでいつも大量に書籍を購入しては机に山積みにしていた。父上が、

「町井先生。あんた、そんなに本買って本当に全部読むの?」と見咎めると、町井先生は、

「本っていうのは積んどくだけで意味があるんだ!」と居直った。

読書の秋。少し風情?に浸ったponziであった。

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