第零話 祓えぬ血

 初めて妖力測定をした時、お母さんとお父さんは悲しそうな顔をしていた。


 ――ああ……、私ダメな子なんだ。


 当時六歳だった私は、両親の顔を見てそう思った。

 その日から全てが変わった。

 刀を握ることも、妖力の扱い方の学びも、祓い師としての教えに触れること全部から遠ざけられた。

 今までの日々が嘘だったかのように。

 まるでこれが本当の日々だったかのように。

 私は聞かなかった。


 ――どうして、ここまでするの?


 その一言をずっと聞かないようにした。

 これ以上、困らせたくはなかったから。

 悲しい顔を、もう見たくはなかったから。

 変わったことと言えば、もう一つある。

 周りからの期待が消えたこと。

 測定をするまでは、みんな口を揃えて言った。


「成崎家の子なんだからとっても優秀なはず」と。


 信じきって過度な期待を寄せてきていたのに、妖力がほとんどないとわかった瞬間――その声は氷のように冷たく形を変えた。


「あの子、生まれる場所を間違えたんじゃない?」

「妖力もないのに、成崎家なんて羨ましい」

「努力しなくても、最初から地位を確立されているなんて……。私たちの苦労も知らないくせに」


 まるで、存在そのものが罪かのように、大人たちは好き勝手に言う。

 私はその声が、聞こえない振りをした。ただの幻聴みたいなもの、これは夢なんだと思い込ませて。

 私は普通の暮らしをして、普通に学校に通って、普通に育った。

 お父さんとお母さんの悲しむ顔より、嬉しい顔が見たくて勉強を頑張った。

 寝る間も惜しんで頑張ると、学年一位を取れた。それを聞いて、凄く喜んでくれた。

 私は普通でいい。

 成崎家のことは、お姉ちゃんがいるから大丈夫。

 だから私は普通でいいんだ。

 成崎なるさきあおいは普通で。

 執行官からは程遠く、命をかけることもない。

 天明のただの一般都市民。

 これでいいはずなのに。

 時々わからなくなる。

 

 ――普通、とはなんなんだろうか。

 

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