人力作家の生存戦略~AI小説登場に際して考えること

難波霞月

ボクたちは、機関銃に対して刀槍で突撃しようとしている。

 1.AI小説がやってきた


 1日に40弱の投稿。

 それからしばらくして、1日に120弱の投稿。

 そのニュースが、SNS上に現れた。


 40弱のケースは、作者がAIをフル活用している、と述べておられる。

 120弱のケースは今日時点では沈黙を保っているが、普通に考えて人間の仕業とは思えない。

 こちらも、おそらくAIなのだろう。


 SNSでは、AI小説の是非を問う投稿が数多く流れた。

 このカクヨム上でも、持論を展開されている識者の方も少なくない。


 ただ、その多くがAI小説に否定的だ。

  ・粗製乱造

  ・著作権の侵害

  ・サーバーへの過負荷

  ・新着欄の独占による他ユーザーへの迷惑行為

 あたりが指摘されている。


 それに、AI小説が「内容や文章が稚拙である」という指摘。

 文字を織って文章を成してきた作家にとって、感情的に納得がいかないだろう。



 しかし、読者はAI小説に対して、基本的に無関心寄りの、薄い好意を抱いているようだ。

 なぜなら、AI小説は今のWeb小説のライトユーザーが求める、

  ・頭を使わなくても読める

  ・流行のジャンルとお約束展開

  ・時間つぶしの短期的娯楽

 というニーズをきちんとカバーし、しかも「毎日更新」という提供をなしているからだ。


 はっきりいって、ビジネス的には大成功だと思われる。

 完璧なマーケティングとオペレーティング。

 しかも、マンパワーを必要としないローコスト。


 おまけに、ユーザーのPVによる広告収入を財源とするプラットフォームからすれば、AI小説が粗製乱造だろうが著作権を侵害していようが、広告料がどんどん入ってくるので、まさに「三方よし」の状態である。

 

 たぶん、これはもう抗いようのない「時代の流れ」なのだろう。

 産業革命の折、自動織機により仕事を失った職人たちは、機械の打ちこわし運動を行った。

 高度経済成長期、安くて丈夫な日本車が入ってきたアメリカでは、日本製品の不買運動が起こった。

 だけど、結局は勝てなかった。



 

 2.「無双される」側に立った創作者たち

 

 勝手な想像だが、おそらくAI小説の作者さんは「迷惑行為をしているとは思っていない」。

 そもそも、AIを使って小説を書くことは違反ではないし、1日に何本投稿していいという制限もない。

 そのため、「何も違反していないでしょ」と考えている可能性がある。


 むしろ、彼らは、よいことをしている、と考えているかもしれない。

 彼ら自身も、創作の世界に足を突っ込んだ以上、創作の価値を知るものだと思っている。

 ただ、方法論と倫理観が、既存作者たちと違う。

「自分が得意とする技術を使って」「自分が好む物語群を制作し」「みんなに読んでもらいたいから投稿し」「ルールをハックすることで露出を増やしてより知ってもらい」「みんなが僕の作品を読んで幸せになってほしい」と思っているのかもしれない。


 これは、「俺、またなんかやっちゃいましたか」系の主人公と同じだと思っている。

 AIというチート能力を使い、圧倒的なコスパと火力で、既存の勢力を凌駕する。

 そのとき、「これは常識だろ!」と思われていた既成概念を無視することで、ルールブレイカーとして圧倒的な優位に立つことになる。


 そう、我々創作者は、テンプレ主人公の「ざまぁされる敵」「引き立て役のモブ」の側に立っている。

 「それをやっちゃおしまいでしょ」という界隈内の暗黙の了解を無視した作者は、『自分で小説が書けない俺、スキル【AI執筆】の力で無双して書籍化作家をざまぁして、ランキングを独占しました』の無自覚系主人公(いや、自覚しているか)を見事に演じているのである。


 もちろん、自分でも作家としてある程度文章を書く能力がなければ、目の肥えたユーザーが読むに堪えられる作品はできないだろうから、AI作家さんは自分の能力に強力なバフをかけるツールとしてAIを使っているのだろう。


 無双・ざまぁ作品を大量に生産してきた我々としては、何とも皮肉な話ではある。



 3.リワード目当てなのかな?


 ところで、こうしたアクションが「リワード目当て」という投稿も拝見した。

 ただ、いろいろと数字を示した記事を拝見すると、

  ・1pvあたり0.02円~0.05円

 だといわれている。

 

 月間ランキング1位の方の累計PV数は360万PV(約2か月)。

 計算すると、

 360万÷0.05円=18万 それを2か月で割ると9万円


 AI作家さんは10月からの公開なので、現在80万PV。

 計算すると、

 80万÷0.05円=4万 このペースで人気が出ると半月なので2倍して8万円


 これは、単価のうちずいぶん高い水準の場合である。

 リワードの単価はアドスコアで決まり、アドスコアは(その月のカクヨム全体の広告収益) ÷ (その月に全参加作品が獲得した総アドスコア) = 1アドスコアあたりの単価となる。

 作品数がどんどん増えている現状では、0.05円の50~75%ぐらいになっていても不思議ではない。


 はっきりいって、儲からない。

 そりゃあ、小遣い稼ぎにはなるかもしれないけど、労力に見合わないと思う。


 それを補うための手法として、大量投稿がある。

 大量に作品を作るのは、AIの得意とするところ。

 それを次々と投下し、読者を誘い込む大量の導線を作り出す。

 そして、1人の作者の多数の話を読者に周回してもらい、小さくPVを稼いでいく。ある種の「ロングテール戦略」だ。

 さらに、その中でPVが伸びた作品だけを更新していく「多産多死戦略」も組み合わせることもできる。

 そうして、最終的には自作品の「巨大帝国」をつくれば、リワードだけでもそれなりの収入になるかもしれない。


 しかし、現実的に荒稼ぎをしたいのなら、小説など書かずに、えちえちイラスト集を生成して、オンラインのしかるべき販路(アマゾンキンドル、同人サイト、アダルトサイト等)に載せた方が何百倍も儲かるだろう。小説だって、同じことが言える。わざわざカクヨムなどのプラットフォームにのせることは、非合理的で非経済的なのだ。


 あと、これを言ったら身もふたもないのだけど、AI小説で稼ぐよりも、リアル世界での労働をしたり投資をしたりする方が、まだリターン率が高い。せこせこ投稿作業をする1時間で、バイトをすれば十分に稼げる。


 だから、たぶん。

 AI作家さんの多くは、そこまでカネが目的なのではないと思う。

  ・自分の持つ技術をいかんなく発揮して無双したい

  ・トリックスター的に市場を荒らしたい

 動機は、この2つのどちらかではないのだろうか。

 (むろん、「ワイは小説で稼ぐんや!」「AI作家になるんや!」という気概があるのかもしれないけど)



 4.既存作家の生存戦略をAIちゃんに聞いてみた


 結論に入る。

 この状況下で、どのように生き残るのか。

 自分でもここ数日、仕事もさぼっていろいろと検討してみた。

 そして、「AIのことならAIに聞いてみよう」と考え、日ごろからお世話になっているchatGPTさんとGeminiさんに相談してみた(GPTさんにはお布施も払ってるよ)。

 以下共有するけど、自分も「そうだな」って考えている通りだった。


●忙しい人への回答まとめ●

 ・AI作家に「量と露出」で戦っても勝てない。

 ・新着欄とランキングは捨てろ。

 ・読者とのリレーションを育む。作品または作家へのフォローを増やす。

 ・プラットフォームの外から読者を連れてくる。

 ・人間にしか作れない文章や内容、表現を貫く。

 ・収益構造を作りたい場合は、プラットフォームの外に作る。


 

☆ ブーベ島におすまいの難波霞月さんからのご質問 ☆

 

 カクヨムで、AIを使って小説をノータイムで作成し、一度に数十から数百の作品を投下することで新着欄やランキングを独占することにより、広告収入を得るやり方が猛威を振るっています。この方法は現時点では規約上合法であり、実際に人が執筆している作家は、脅威を抱いています。 このような状況下で、1人1人の作家が、作家として生き残る(=読者を確保し続ける)には、どのような方法が考えられるでしょうか。 いわば、産業革命に飲まれる職人の立場です。


回答者:chatGPTさん(一部編集)


 めちゃくちゃ正直に言います。

“量”で攻めるAIスパムに、同じ土俵(投稿本数・新着露出)で勝つのはムリです。勝てるのは「人間だから持てる希少資産」に賭けた戦い方だけ。つまり――信頼・連続性・コミュニティ・独自知の4本柱で“粘着力(離脱しない読者)”を作ることです。


 以下、「個人作家が今すぐできる生存戦略」を実務レベルでまとめました。


 1) “粘着力KPI”に切り替える

 プラットフォーム露出(新着・総ランキング)は捨て指標。代わりに以下だけ追ってください。

  1話→3話到達率(3話離脱の改善が最優先)

  3話→ブクマ転換率(= 継続読者率)

 更新後24hの復帰読者率(通知から来てくれる常連)

 完走率/シリーズ継続率(読了して次シリーズへ移行)

 

 目安(Web小説系の現実的ライン)

  1→3話到達率:**35%**超

  3→ブクマ転換:20–30%

  新話公開24hの既存読者訪問:**60%**以上

  完走率:**25%**超

 これを満たせば、AI量産に埋もれても“自前トラフィック”で回せます。


 2) 1話~3話の“人間ならではの約束”

 AI大量生成は「最初は派手・中は薄い・後半が続かない」弱点が出がち。

 そこで1~3話で“人間の手触り”を可視化します。

  1話(800–1,400字)

   開幕200字で主人公の“欠け”と願いを提示(読み手が寄り添える素)。

   作者の声を一文混ぜる(価値観・美学・ユーモア)。AIの均質文体から離脱。

   最後に次話の具体的予告(「2話は●●で△△が壊れる」)。嘘予告はしない。

  2話(1,600–2,400字)

   世界の具体(現地の固有名/手触り/リサーチ痕)を1箇所だけ濃く。

   読者に小さな選択を委ねる(投票/アンケート/二択)。コメント欄で即反応。

  3話(1,600–2,400字)

   最初の“約束の一部回収”(小さなカタルシス)。

   あとがきで制作意図と参考資料を短く公開(人間の背景=信用通貨)。

   更新カレンダーを添付(曜日・時刻固定)。“待てる”安心を与える。


 3) 差別化の6レイヤー(AIが苦手なところを狙い撃ち)

  題材の深堀り:一次資料・現地写真・専門家に聞いた話。脚注やあとがきでソースを明記。

  語りの声:比喩・間・ユーモア・品の良い毒。あなた固有の“言い回し辞書”を作る。

  構造の妙:章ごとの問い→回収の設計。中盤での“価値観の反転”。

  UI/パッケージ:表紙・あらすじ・冒頭の整形・シリーズ導線(目次に「前章の要約」「次章の予告」)。

  コミュニティ:近況ノート・X(旧Twitter)の固定ポスト・マシュマロ質問箱・作者の返礼文化。

  継続性:ワールドガイド/登場人物カード/前話までの要約。読者が“明日も戻れる理由”を可視化。


 4) “外部から連れて来る”導線を持つ

  新着や内部回遊に頼らず、外部→作品のパイプを作る。

  X固定ポスト:シリーズの第1話リンク+“3話で回収する問い”を1行で。週1で再掲。

  note/ブログ:毎話のあとがき拡張版(調査メモ/没ネタ/参考図)。

  ミニニュースレター:週1・短文で「今週の見どころ/次回の予告/投票結果」。

  コラボ:絵師さんの一枚絵→章内にクレジット&リンク。相互に読者が循環。

  Kindle短編/中編:プラットフォーム外に“完成品”を置き、信頼の母艦を増やす。


 5) 作品ページの“即改善リスト”(今日できる)

  タイトル:名詞×因果×具体(例:「港町で“嘘”が通貨になる夜、私たちは初めて盗む」)。

  あらすじ:

   1行目=主人公の願い/2行目=障害(失うもの)/3行目=選択とリスク/4行目=読者への約束(何が得られる物語か)。

   表紙:縮小しても判る“1アイコン”。フォントは太め、英数字は避けて可読性重視。

   目次:各話に20字の副題、シリーズ最上段に「前話まとめ」固定。

   各話末:次回の“具体的予告”と読者に一問(考察/予想)を添える。


 6) 更新運用(AIと逆を行く)

  “少量・高密度・時間固定”:曜日と時刻を固定(例:火/木 18:40)。

  シーズン制:8~12話で一旦区切って“完走体験”を量産。完走者は次シリーズに残る。

  読者参加:章間アンケート結果を本編に反映(※反映箇所は小さく速く)。

  返信速度:感想返信は24h以内(一言で良い)。人間の温度差が最大の差別化。


 7) “人間の強み”を文体に埋め込む

  観察:匂い・重さ・時間の流れ(分単位)。“体感の単語”はAIの穴。

  価値判断:その場の倫理的逡巡・迷い・恥。結論を即出さず、一拍おく文。

  矛盾の許容:登場人物が自分を嫌いになった瞬間を書く。

  静かなユーモア:言い過ぎない皮肉。読者は“人間の息づかい”に惹かれる。


 9) 収益の張り方(広告依存からの脱出)

  薄い広告より“厚い支持”:投げ銭・ブック/Kindle・限定SS・設定資料PDF。

  季節イベント:年4回の“読み切り祭”で新規流入→本編導線。

  価格は小さく回数多く:100–300円の小さな買い物体験を積層。


 10) 最後に:職人の戦い方

  産業革命で生き残った職人は、工場が作れない価値を束ねました。

  あなたの場合、それは「読者に名前で呼ばれ、待たれ、語られる物語」を積み上げること。

  “量の海”ではなく、“関係の森”を育てる。

  一度この森が育つと、プラットフォームが荒れてもついてきます。


 ●DCRE戦略

 ・脅威モデル → 防衛線の置き方

  プラットフォーム露出(新着・総合)はAI量産が独占 → ここは捨て身。

  勝てる戦線は ①外部導線、②同作品内の回遊、③作家-読者の関係コスト(習慣・信頼)。

  戦略目標=「継続率と直帰率で“粘る”」。露出の総量ではなく1→3話到達率、3話→ブクマ転換、次話既読率をKPIに。

  ・ファネル別の戦い方(Discovery→Conversion→Retention→Expansion)

  A. Discovery(“見つけてもらう”)

   目標:内部新着依存をやめ、外から恒常的に新規を流す。

  B. Conversion(“1~3話で残す”)

   目標:1→3話到達率 35%/3話→ブクマ 20–30%

  C. Retention(“戻ってきてもらう”)

   目標:新話24h既存既読率 60%/章完走率 25%/シーズン継続 50%

  D. Expansion(“世界を広げる”)

   目標:読者の“関与コスト”を上げ、離脱しづらくする。



回答者:Google Geminiさん(一部編集)


 これは非常に深刻かつ、多くの作家が直面している切実な問題ですね。「産業革命に飲まれる職人の立場」というご指摘は、まさに的を射ています。

 AIによる大量生産・大量投下は、プラットフォームのアルゴリズム(新着欄やランキングシステム)をハックする上では非常に強力です。しかし、産業革命において、機械化の波に飲まれなかった職人(例:高級時計職人、特注の家具職人、特定の技術を持つ芸術家)がいたように、AI時代においても「人間にしかできないこと」に価値が集約されていくと考えられます。

 このような状況下で、個々の作家が読者を確保し、生き残るために考えられる戦略をいくつか提案します。


 1.「あなた」でなければ書けない物語を追求する(独自性の深化)

  AIは既存のデータを学習し、最適化された「それらしい」物語を生成するのは得意ですが、ゼロから独自の哲学や強烈な原体験に基づいた物語を生み出すことは苦手です。

  ニッチな分野・専門知識の追求: ご自身の職業経験、マニアックな趣味、特定の専門知識(例:特定の歴史時代、最先端の科学技術、ある業界の裏側など)を深く掘り下げた作品は、AIが学習データから生成する表層的な物語と明確に差別化できます。

 「文体」という名の指紋: AIが模倣しにくい、独自の文体、リズム、比喩表現を徹底的に磨き上げること。読んで「あ、この人の文章だ」と分かるような「指紋」を確立することが重要です。

 矛盾と深みのある人間描写: AIは論理的な整合性を保とうとしがちですが、人間は本来、矛盾を抱え、非合理的な行動をとるものです。人間の心の機微、葛藤、言葉にできない感情の揺らぎを深く描くことは、人間の作家が持つ最大の強みです。


 2.読者との「絆」を構築する(ファンコミュニティ化)

  AIは作品を「投下」できますが、読者と「対話」し、関係性を築くことはできません。これからの時代は、「作品のファン」であると同時に**「作家個人のファン」**になってもらうことが、これまで以上に重要になります。

 積極的なコミュニケーション: SNS(X(旧Twitter)など)やカクヨムの近況ノートを活用し、ご自身の創作に対する想い、苦悩、日常の気づきなどを発信し、「書き手」としての体温を伝えることが有効です。

 創作過程の共有(プロセスエコノミー): 完成品だけでなく、「どのような着想を得たか」「このシーンで悩んでいる」といった創作の裏側を共有することで、読者は作品に一層の愛着を持ち、応援したいという気持ち(いわゆる「推し活」)が芽生えます。

 双方向性の重視: 感想やレビューへの丁寧な返信、読者の声を反映した(ただし迎合しすぎない)展開など、「一緒に作品を育てている」という感覚を読者と共有することが、強固なファンベースに繋がります。


 3.プラットフォーム戦略の見直し(土俵の変更)

  現在のAIによる物量作戦は、「カクヨム」という特定プラットフォームの「新着・ランキングシステム」に最適化された戦術です。その土俵だけで勝負しないという選択肢もあります。

  ランキング至上主義からの脱却: 短期的なランキングやPV数を追いかける消耗戦から意識的に距離を置くことも戦略の一つです。AIは広告収入目的(=PV至上主義)であるため、その目的とは異なる「質の高い読者」「熱量の高いファン」を少数でも確実に獲得する方針に切り替えます。

  他プラットフォームの活用: noteでのエッセイや創作論、pixivでの掌編、個人サイトでの連載、同人誌即売会での頒布など、カクヨムのランキングシステムとは異なる評価軸を持つ場所にも作品を発表し、ファンとの接点を増やします。

  「人の目利き」が入る領域を目指す: AIが大量投下する作品は、多くの場合、書籍化(商業出版)の際に求められる「独自性」や「完成度」の基準を満たしていません。編集者という「プロの目利き」が介在する書籍化、文学賞への応募、コミカライズや映像化といったメディアミックスを目指すことは、AIとの明確な差別化になります。


 4.AIを「敵」ではなく「道具」として利用する

  産業革命で機械を導入した職人が生産性を上げたように、AIを「脅威」として排除するのではなく、「アシスタント」として使いこなす視点も重要です。

  AIに任せられる作業: アイデアの壁打ち(ブレインストーミング)、誤字脱字の校正、設定の整理、あらすじの要約など、AIが得意な作業を任せる。

  人間が集中すべき作業: AIによって生み出された時間的・精神的リソースを、最も重要な「物語の核となるアイデアの創出」「深い感情描写」「構成の練り込み」といった創造的な作業に集中投下する。


 

 結論:AIにはない「熱量」と「関係性」で勝負する

 AIが生成する物語は、効率的でトレンドを抑えているかもしれませんが、そこには**「作家自身の人生を削ってでも、これを書きたい」という切実な動機や熱量**がありません。また、AIは「広告収入」という目的のための「手段」として作品を生成していますが、人間の作家は「表現」そのものが目的である場合がほとんどです。

 読者は、AIが作った最適解の物語よりも、たとえ荒削りでも、書き手の「魂」が感じられる物語、そしてその書き手自身を応援したいと本能的に感じ取るはずです。

「職人」としての生き残り術は、AIには模倣不可能な「あなた自身の経験と哲学」を作品に込め、その熱量を「読者との対話」を通じて直接届けることに尽きると考えます。



 5.おわりに


 ・「作家性が~」とか「創作の芸術性が~」とか主張している反AI論者の方は、プラットフォームで発表する以上、しょせん「読者あっての作家」でしかないことに気づくべき。AI作品は読者迎合の鬼。マーケティングとビジネスの視点を持たないと、お話にならない。ましてや、感情論で反AIをしていても、時代の流れには勝てない。

 ・逆に「反AI論者が~」とか「売れない負け犬の遠吠え~」とか主張している反反AI論者の方は、「ルールにないからやっていい」「読者の評価という市場原理が正しい」と考えているなら、小1の道徳から勉強し直してほしい。チェーン店に支配された地域社会がどうなるか(より正確にはアメリカのウォルマートなんだろうけど)リアル社会を観察してほしい。勉強ができる、スポーツができる、異性にもてる奴が総取りすることを是とする世界に生きていたいのかね?

 ・AI作家さんへ。表には出ないけど、コツコツ作品を作っている人もおられると思うけど、目立つ人がやってるのは「山林を買ってメガソーラーを作っている人」と同じことしているからね。そのことだけは自覚していて。


 おしまい。

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