第16話 火曜日と幼馴染

「うっ...オエ゛エ゛エ゛エ゛ッ!!」


胃の中から袋に、全てを出し切った。俺は、急いで封をした。そして魂も共に出たように、俺の視界は暗転した。




「う...あれ...?」


見慣れない天井が見える。記憶にないベッドに寝ていた俺は、起き上がって窓から外を見るが...暗すぎて良く分からない。口の中が酸っぱく感じながらも、部屋を見渡す。


「この家...既視感があるような...」


俺はボソッと呟いて部屋を出る。歩くたびにドアを通り過ぎる。そして、ドアの多さから、俺は確信した。俺は階段を下りて、この家のリビングに向かうことにする。


「たっつ...!大丈夫だった!?」

「やっぱり...今は大丈夫だけど...」


俺に気づいた綾香が駆け寄ってくる。確信した事は間違いじゃなかった。ここ、シェアハウスだ。俺は綾香に、質問を投げかける。


「今さっきまで、俺って何してたんだ?」

「えっとね...」




数時間前...




「はぁっ...はぁっ...!!!」


「たつー...?って大丈夫!?」

「アンタっ...ここで倒れっ...!?」

「起こすよ!!綾香そっちの肩!」

「え...分かった...!」

「たっくんそんな限界まで...!」

「このバカ...何してんのよ...!!」




「たっつが吐いて、意識を失って倒れた後、私たちがここまで運んできたの...大慌てだったよ...」

「なんか...すまん...」


罪悪感が重くのしかかる。そうか...口の中が酸っぱくなってたのは、俺が吐いたからだったのか...。...頭が痛い。今はとにかくお母さんに連絡しないと...。


『ごめん、今友達の家にいる』


俺はスマホを取り、お母さんに連絡をした。そして数秒後、返事が返ってくる。


『大丈夫?聞いたよ。明日は休みなさい。あと、明日からお母さん海外出張に行くことになったから』


「えっ」


メールを見た俺は、目を丸くして声が出てしまう。海外出張は聞いたことないし、突然すぎる。そして、今日の事...誰から聞いたんだ?考えても暇がない。


「どうしたの?」

「えっとな...お母さん海外出張だってさ...」

「...え?」

「一時期一人暮らし生活だ...というか3人は?」

「もう寝たよ」

「何でお前起きてるんだ...?」

「...歯磨きする所だったよ」


俯き気味で話してしまっていた俺は、ふと顔を上げる。


「え、じゃあ...しぇ...」


何かを言いかけた綾香は、口を止めた。俺は深掘りしようとはせず、ある要求をする。


「水、飲みたいんだが...」

「あ、わかった...椅子に座ってて...」


自分の前に置かれた一杯の水が入ったコップを掴み、口の中に流し込む。


「ぷはっ...生き返る...」

「そ、そう...?コップは置いといていいよ」


すぐに飲み干した俺は、数秒間椅子に寄りかかり、頭痛も少し治ってから、コップを机に置いて綾香に言う。


「俺帰るわ...」

「いや、もう夜中だよ...ここで寝て明日、一日中休んだほうが良いよ...」

「わ、分かった。じゃあ寝るわ...」


俺は疑問を抱きながらも、再び部屋に戻ってベッドに横になった。




「あーあ...私もみんなみたいに...たっつに『シェアハウス一緒にやらない?』って言えたらなぁ...」




「すみません...今日は欠席します」


俺はスマホで学校に欠席のため電話し、そのままベッドに横になる。そして再び眠りにつこうとした時だった。


「え...?はっ...?」


開くドアの音に気付いて俺は視線を移すと、ピンク髪のある人物が俺を見ていたのだった。

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