第5話 空き教室の犯罪者

「えっ...!?」


空き教室のドアを開けると幼馴染がいた。しかもそれだけじゃない。着替えている途中だ。あああああああああっ!!俺の人生終わった!なんだよこの恋愛漫画みたいな展開...なぜかデジャヴを感じる!なんだよこの恋愛漫画でよくある奴は...!鍵が閉まってなくて主人公が見る、ラッキースケベって呼ばれる奴だ!絶対ビンタが飛んでくる...!


「あんた何見てんのよっ!!」


俺はバトロワゲーで鍛えてる反射神経と持ち前の察し能力で詩織のビンタをしゃがんで避ける。


「なっ...!」

「たつーあれ避けれんの...」

「くぁwせdrftgyふじこlp!」


やばいまともに話せない...!口が震えてる。『ごめん鍵が閉まってなくて!』って言ってるつもりだけど…!!


「ご...ごめん!!」


必死に声を絞り出した俺はそのまま後ずさり、ドアを閉じる。終わった。息が出来ない...絶対言いふらされて終わる。俺は恐怖心で過呼吸になり、足がすくみながらも、そのまま男子トイレに駆け込んで薬を飲み、ついでに着替えて、トイレで落ち着くことにした。




「いつちゃんと謝ろう...」


廊下を歩いて教室のドアの前に来た俺は、震える手で教室のドアを開ける。いつも通りの騒がしい教室。女子達も着替えを終わっている。


「住田くんすごかったねー!」

「ね!運動得意なの?」

「え...?まぁ...」


もしかしてあいつら言わないようにしてくれたのか?でもなんで?いやまず謝らなきゃ...でも謝るにしても『誠意は言葉ではなく金額』って言うし...。考えているうちにため息が漏れる。




「...」

「すいませんでした...!」


放課後、俺は正座をして頭を地面につける。もちろん、今さっきの着替えを見てしまった出来事だ。見下ろされてる視線が痛い。楽をしようとした結果がこれだなんて...最悪だ。俺は息を呑んで顔を上げ、次の言葉を待つ。


「じゃあ...」

「はい...」

「パフェ奢って?」

「はっ?」


俺はポカンとして一瞬思考が止まる。パフェ?...パフェ?フリーズしたのちに、我に返った俺は立ち上がって詩織に問う。


「...どういうこと?」




「うまいっ...!」

「たっくんお金持ちー!」

「たっつありがとう」

「元はといえばあんたが悪いでしょ」

「俺悪くないだろ...」


俺は考えながら無意識のうちにカフェに来た。まずパフェで許してもらえたのか?でもこいつらは美味しそうに食べているし...考えても分からない。それよりも、財布の中身が心配だ。


「カギ閉めろよ...」

「いや閉めてたんだけどね...?」

「どうせ...壊れてたんだろ」

「2回目をやるなんて思わなかったよー」

「...本当にね」

「違う場所で着替えればよかったわ」

「1回目も事故だ!」


様々な種類のパフェが置かれている中、4人は美味しそうに食べながら話す。俺の前にはパフェはない。そして今、心寧が言った2は勿論、着替えているところを見てしまったことだ。そう、これは初めてじゃなかった。


「きゃっ!」


小学生の頃だった。体育終わり、俺は本来自分のクラスの教室で着替えるために、教室のドアを開けるつもりが、間違えて隣の教室を開けしまい、着替え中の4人を見てしまった。


「わ、悪い!!」

「最悪!」

「最低っ!!」

「ぐはっ!?」


そして俺は詩織の平手打ちをくらってしまい、その後は今さっきのような土下座をして謝った。あの時になぜ、俺が間違えて空き教室を開けてしまったのかは今も分からない。これが1回目。思い出すだけで罪悪感が沸く。デジャヴを感じていたのもこの事だ。

そして今回、2回目が起こってしまった。俺は、また同じことをしてしまい、罪悪感で穴に入りたい。そう思いつつ、置かれているいくつものパフェを見ていると、結希が俺に向かって一言。


「一口いる?」


その瞬間に空気が凍ったような気がした。

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