のりものとハロウィン

つーお.tzt

のりもとハロウィン

のりものは随分と古ぼけていました。

しっかりと整備はされていましたが、博物館に来た人々が口々に「ずいぶんと古いなぁ」と言うくらいには古かったのです。

博物館の生活は、のりものには退屈で堪らず、夜な夜なかつて主人とともに駆け巡った世界を思い出すのでした。

ある夜のことです。

物音でのりものは目を覚ましました。

「ははあ、きっと泥棒に違いない」とのりものは思いました。

「きっと私には見向きもしないだろうな」とのりものは少しばかり寂しく思いつつ、物音がした方向に目を向けました。

そこには、主人が居ました。のりものと共に世界を旅した主人でした。

のりものは驚きました。主人は何年も姿を見せておりませんでしたから、驚きと喜びが混ざって、のりものは身を震わせることしかできませんでした。

主人はのりものに乗り込みました。

「ずいぶん待たせた。行こうか」と主人は言いました。

のりものの身体に火が灯りました。

「行きましょう」とのりものは言いました。

街は綺羅びやかな飾り付けがされ、人々が楽しそうに過ごしておりました。

のりものと主人は、その中を進んでいきました。

そうして、のりものはずいぶんと遠くまでやってきました。

もう太陽が起きてくる時間です。

朝日に照らされたのりものは、ぴかぴかと輝いていました。

のりものは、眠っているようでした。

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