第2話 護、ヤクザの姐さんのチン毛を整える

 「はっ?やあらへん。剃ったってくれ」


 「ここで、ですか?」

 護は驚いた。


 [第1話から続く]




 「ここでやらな、どこでやるんや?」


 「パパの前で?」

 響子も目を白黒させた。


 「当たり前や。この先生がお前にちょっかいを出さへんか、見張っとかな、な」


 イガグリは1度言い出したら何を言っても聞きそうになかったので、護も腹をくくって、バックを開いていつもの七つ道具を取りだした。


 それを見て響子も覚悟を決めたようにバスローブの腰紐をほどき、スッと肩から落とした。下には何も着けていなかった。


 「立ってみてくれますか?」


 護が道具をテーブルの上に揃えながら言うと、響子はソファーから立ち上がった。


 華奢な体と撫で肩のせいでDカップにも見える白い乳房が目を惹き、骨盤から下肢はいかにも30半ばの熟れきった女の悩ましげな香りを放っていた。


 ヘアはというと、日本人の7割はこのタイプだといわれる、完全な逆三角形の剛毛密林である。


 「わかりました。じゃあソファーに腰掛けてもらえますか」


 護が言うと、響子はソファーに自然に深く腰掛けた。


 女優の美咲真弓のヘアを刈った時もそうだったが、ソープ嬢でさえも最初は誰もがこのすわり方をする。


 「もっと浅く腰掛けて、恥骨を突き出すようにして、脚を広げて下さいますか」


 「チコツ?」

 響子がポカンとした。


 「オメコのことや、オ・メ・コ」

 イガグリが護の代わりに言うと、響子はその通りに脚を広げた。


 その瞬間、女の頬は見た目の姉御肌アネゴはだから普通の主婦の頬に変わり、緊張と羞恥からか、ポッと赤く引き攣った。


 すぐそばのイガグリは自分で言ったくせに、特等席で自分の女の脚の間を見ている護のことを、〈ゆで栗〉か〈ゆでだこ〉にでもなったように、頭から湯気を出しかねない怒りで睨んでいた。


 響子の秘部は女優の美咲真弓と同じようにかなり使い込んでいて、小陰唇は黒ずんで経産婦のようにビラビラ状態になっている。


 その花びらの方にも密林とは言えないまでも、むだ毛が群生している。


 護は七つ道具の1つ、ドライヤーのスイッチを入れて吹出し口を響子のアンダーヘアに当てた。


 いつも通り左手で陰毛をブラッシングするようにかし、指で触って陰唇はなびらに生えているむだ毛も柔らかくする。


 「おいおい、そんなとこ触らんでもええんとちゃうか。毛ぇだけや。毛ぇだけにせんかい」


 イガグリが文句をつけた。


 毛だけを触れと言ってもどだい無理な話だ、と護は口の中でボヤきながらイガグリを見て、頷いて作業を続けた。


 響子は感じそうになるのを抑えているのか、唇を硬く結んで目を閉じている。


 護は右手にハサミを持ち替え、剛毛の上面をカットしてゆく。


 恥骨の上に生えた、渦巻くような剛毛を、中指と人差し指で挟み込み、指の上に出てきた毛をカットする。それから陰唇はなびらに指を伸ばし、ビラビラに群生しているむだ毛もカットする。


 見る見るうちに〈原生林〉逆三角形の剛毛は、天然芝みたいな薄い長方形へと形を変えてゆく。


 響子の開いた割れ目から透明の液体がその花びらに滲んできて、護の指を湿らせる。


 響子は唇を噛んで目を閉じたまま、素人女のように顔を赤らめ、胸で喘ぐように息をしていた。


 剛毛の手入れが済むと、掌サイズの〈超小型充電式掃除機〉で1度処理済みのヘアを片付け、それからシェービングクリームを左掌に吹き付けて泡の山を作ると、右人差し指の腹で掬って、響子のビラビラの花びらに塗ってゆく。


 花びらにきちんと泡を塗るために、割れ目に中指の先を入れ、引っ張るように花びらを浮かせる。


 響子がウッと呻いて顔を歪め、イガグリもアッと目を剥き、護を睨む。


 それを無視して護は花びらに生えたむだ毛に安全剃刀の刃を当てて、剃ってゆく。


 ゆっくりと、ゆっくりと。


 それから響子の体を裏返しにして四つん這いの姿勢を取らせ、シェービングクリームを直接アヌスに吹き付け、指でアヌス周辺に生えた毛の毛根に擦り込むようにまぶし、処理をする。


 泡をアヌス周辺に指で塗すたびに、また安全剃刀でひと剃りするたびに響子のアヌスがきゅっと締まり、イガグリがまた護を睨む。


 最後に化粧水を濡れティッシュに含ませ、アヌスから陰唇付近に残ったシェービングクリームをきれいに拭い落とし、濡れタオルで丹念に拭いて、ドライヤーでヘアを乾かして、終わりだった。


 「立ってみてください」

 と、護は言った。


 響子は言われた通りに立ち上がったが、フラフラして足元がおぼつかない。


 「おお。なかなかエエやんけ」

 と、イガグリがニヤけた。


 「お前にはこの方がええ。毛深い女は深情けっちゅうけど、大体毛が濃かったんや。あないなジャングルよりこっちの方がさっぱりしてええで。こっちへ来いや」


 イガグリは響子をそばへ呼ぶと、手を伸ばして女の整えられた陰毛を撫でた。


 それって〈悪女の深情け〉じゃなかったっけ?


 と護は訂正したい気持ちを抑えながら、長居は無用とばかりに後片づけをして、七つ道具をバッグにしまおうとした。


 「ちょい待ち」

 と、その時イガグリがいきなり引き留めた。


 「わしのもやってくれや?」


 「へっ!」

 護には言われた言葉の意味がわからなかった。


 「そやから、わしのもやってくれ、ちゅうてんねん」

 イガグリがまた言った。


 「おまはんにチンコの毛を切って貰うたらマンがエエらしいやないか。いま花会の最中で前半はツイとらんかったさかい、マン直しや。わしのもやってくれ」


 イガグリは言うが早いかソファーから立ち上がって、黒いズボンとトランクスをずり下げた。


 護の目の前に黒ずんだ色彩を施された異様な図柄が現れた。


 下腹から大腿部、そして膝のすぐ上まで、びっしりと総天然色で牙を剥いた龍の絵が彫り込まれている。


 その真ん中にペニスがサムライのチョンマゲか神棚の飾り餅のように、ちょこんと付いている。


 渦巻いた陰毛は臍のすぐ下から大腿部にかけて、ペニスを包み込むように密生していた。


 「早うやらんかい」

 イガグリは護の鼻先にペニスを突きつけた。


 護はちょっと上体が後ろへ反った。


 自分のペニスをいじるのは慣れているが、人のペニスに今まで触ったことは1度もなかった。


 「親分さんのヘアは男らしくて申し分ないじゃないですか。カットする必要はありませんよ。考えてもみて下さい。親分が縦長の薄いヘアだったらソープへ行った時、ソープ嬢が笑っちゃいますよ。それにせっかくの龍が、猫か蛇どころか、ミミズのように弱々しく見えるじゃないですか」


 ねえ、ねえさん、


 と護は逃げを打ちながら響子に相槌を求めた。


 「そうよ、パパ。パパのオチンチンに薄目ヘアは似合わへんでぇ。弱そうに見えるでぇ」


 「そうかぁ。そないなもんかいな」

 イガグリはそれでも納得できなかったようで、


 「ほんでも、ちょっとでええさかいにハサミを入れてくれや。おまはんに運を分けて貰うて、後半戦でガッポリ稼がなあかんさかいな」


 そう言われて護は仕方なく、ハサミを手に持った。


 そして前と横からペニスを眺めて、ペニスを触らずに気持ちだけ何カ所かにハサミを入れた。


 「はいオッケーです」


 護は1度バッグにしまった〈超小型充電式掃除機〉をまた取りだして、スイッチを入れて、イガグリのペニス周りに当てた。


 「おお。ええ気持ちやな」

 イガグリのペニスがピクッとしたので護は恐れた。


 「おい、響子」

 と、彼は響子を見て顎をしゃくって、


 「ちょっとくわえてみいや」


 「ここで?」


 「そうや。いつもやっとるやろが」


 「ぼ、ぼくは失礼します」


 「そう言わんで、れや。おい響子、早うしゃぶらんかい」


 「はい」


 響子は頷いてイガグリの前に正座して、ペニスを指で掬ってパクリと飲み込んだ。


 そして目を閉じて、ウットリとした表情で口を動かしながらその白い細い指を、睾丸へ伸ばした。


 「おお、ええぞ、お前の尺八は天下一やな」


 イガグリが恍惚の表情を浮かべたのを見て響子は、一気にゴールへ向けて激しく口のピストン運動を始めた。


 一心不乱にペニスを飲み込む響子のその横顔の健気さに、護は見とれた。

 

 「ちょ、ちょっと待てぇ」


 イガグリが息を吐きながらストップをかけた。ペニスはこれ以上ないほど勃起している。


 「なんやパパ。イかんの?」

 響子が目を開けて、キョトンとした顔で聞いた。


 「大事な花会や。精気は出せん」

 イガグリが息を大きく吐き出した。


 ちょうどその時、イガグリの携帯が鳴った。


 イガグリは電話を取って、


 よっしゃわかった、


 と勢いよく答えて電話を切った。


 「準備が出来たそうや。後半戦突入や、ほんなら行ってくるでぇ」

 彼はトランクスとズボンを上げて、護の方を見て、


 「おまはん、暇やろ、ここにれや。勝って東京で1番高いもんをご馳走したる」


 「いえ、ぼくはこれで失礼します」


 「まあそう言わんで、れや。好きなもんも買うたる。これでわしも千人どころか万人力や。おまはんにチン毛を切ってもろうて宝クジまで当てたおばちゃんがてるんやからな」


 ほんなら行ってくるで、


 と、イガグリはうろこがコブのようにゴツゴツに浮き出たワニ皮ベルトを締めながら、


 「なんや響子、何か着んかい。それから若いの――」


 イガグリは護を睨みながら、


 「響子に手を出したらあかんでぇ」

 と、言い残して意気揚々と部屋のドアを開けた。


 おいっす。


 と、ドアの外で男たちの気合いの入った声がして、


 こちら側では響子が裸のまま間髪入れず〈火打ち石〉で切り火を打って、縁起を担いだ。


 「ええか。中の客人に失礼なことをしたらあかんで。ビールかなんか、美味いもんでも取ったれや。ピーナツや枝豆はアカンでぇ。大事な先生やからフルーツの盛り合わせでも取ったれ」


 イガグリの指示に続いてまた、


 おいっす、


 と返事がしてドアが閉まった。


 [第3話へ続く]

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