第8話 エピローグ2

「ノア、待っていたんだ。いい話がある。ノアを……」


『何も言うな。もう二度とヴィクトルの甘言に騙されたりしない。僕をこれ以上、傷つけないでくれ』


「しゃべれるのか。ノア。お前の声が聞けてこんなにうれしいことはない。でも、どうか俺の話を聞いてくれ」


『懺悔ならいらない。この姿でヴィクトルを十分に苦しめられたと思うから、僕は満足だ。もう消えるから、安心して王女と幸になってくれ』


「お前無しで、どうやって幸せになれと言うのだ。行くな。ノア。戻ってきてくれ」


 そんなことを言われたら、心残りで去れないじゃないか。悲痛な声で、何度も呼ばないでくれ。

 ヴィクトルがまたノアの名前を呼ぶ。ノアは前に進むこともできず、なんだと返事をした途端に、身体が宙に浮き、後ろに引っ張られた。

 身体はもう形をなしていられず、魂の核だけになって吸い込まれた先は、瓶の中だった。

 中には血に染まった布の切れ端がある。ノアのマントだ。

 また、騙された。こんなことをしなくても、本当に去るつもりだったのに。


 開けろ、開けてくれ! 一生懸命訴えるが、人の形をしていないノアには伝える声がない。

 絶望がノアを覆った。

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