第8話 エピローグ1

 真っ暗な新月の夜になると、ノアは庭園にいた。

 自分はこうして永遠にさまよい続ける霊になったのだと悟るのに、少し時間がかかったが、どうすれば安らげるのかがわからず、結局は今夜もベンチの前にやってきた。


 ノアをはめたヴィクトルが、ベンチに座って待っていた。罪悪感からこうしてノアの許しを得にやってくるのだろうか?

 ノアの命を奪ってまでも、あの女と一緒になりたかったのか?

 聞きたいことは山ほどあるが、もうこれ以上みじめな思いはしたくない。

 できることは、ヴィクトルが許しを乞うても、知らぬ顔をして睨みつけてやることだ。


 今夜も泥酔した姿で待っているかと思ったのに、今日のヴィクトルは目に輝きがあった。服装は騎士の装いで、ノアを見つけるとさっと立ち上がる。

 ノアが心を許していたころの凛々しいヴィクトルがここにいる。

 信頼していた親友に騙されたのは苦しかった。でも、悔恨に打ちひしがれて墜ちていくヴィクトルを見るのは、もっと辛い。


 結局は憎しみよりも、友を想う気持ちが勝ってしまう。

 もう、今日で終わりにしよう。ヴィクトルが前を向いて歩いていけるように、姿を消そう。

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