第7話 奇妙な噂6
ある日国王から執務室に呼ばれたヴィクトルは、王の言葉に頭を殴られた気分になった。
「夜の営みに支障があると、ロラから聞いたが本当か?」
あの女狐め。俺が不能だと告げたのか。いくら俺が手を出さないからといって、王に夫婦の閨の話をするなんて信じられない!
不快感で顔が歪むのを見られないように、ヴィクトルは無言で顔を伏せた。
王は肯定と受け取り、続きを話す。
「実は隣国に、不妊を解消する術があると聞いたのだ。黒魔術なのだが、身体に支障もないらしい。何年も先まで予約が埋まっている魔術師だが、無理を言って呼び寄せたから、相談してみるといい」
俯いたままのヴィクトルを執務室に残し、王や側近たちが退出していく。
ヴィクトルはギリリと奥歯を噛み締めた。
ノアを殺した女と、子供を作れというのか?
死んだ方がましだ。
髪を掻きむしるヴィクトルに、いつの間に部屋に入ってきたのか、長いひげを蓄えた、いかにも魔術師らしいローブを羽織った老人が声をかけた。
「見るところ、子供を望んでいないようですな。しかし王の命令とあれば致し方ないでしょう」
「死罪を覚悟で言うが、あの女に指一本、爪の先でさえ触れるのはごめんだ」
「こちらに来る前に、王女の性格と目下の者に対しての態度を耳にしました。王女とは実際に交わらなくても、貴殿の血液か体液が少量あれば、魔術で女性の腹に子を宿すことができます。その場合、女から受け継ぐものはなく、貴殿の資質だけを受け取った命が宿るでしょう」
「俺だけの資質を持って生まれるのか‥‥‥それなら考えても良さそうだ。そうだ、今から話すことが可能なら、力を貸して欲しい。全財産を払ってもいい」
「報酬は王から充分に頂くので、追加分は遠慮します。老い先短い私には使い道がないので。それよりも冥土の土産に、面白い話を聞かせてもらうか、禁忌の魔術を披露する機会を与えてもらう方が嬉しいですな」
ヴィクトルは、目の前の高度な魔術を操る老人にかけてみたくなった。
ヴィクトルの提案に、老魔法使いは、ほほうと相槌を打ちながら、長いあごひげをなでる。
決行は新月の夜に決まった。
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