第7話 奇妙な噂3
ロラ王女は鷹揚に頷くと、侍女に宮廷医を呼ぶように伝えてその場から追いやった。罪人に医者を呼ぶのかと不思議がる貴族たちに、王女は声をかけた。
「せっかくの舞踏会を中断させてしまったわね。残念なことにあらぬ誤解で、クリントス卿が怪我を負いました。私が蝙蝠に襲われたときに、クリントス卿が追い払おうとしたのです。でもパニックになった私が悲鳴をあげてしまったから、近衛兵が勘違いをしてクリントス卿を……ああ、恐ろしくてこれ以上は言えませんわ」
ノアを斬った衛兵が、首を大きく振りながら、ウソだと叫ぶ。
「陛下が襲われたとおっしゃられたから、私は……」
「ええ、助けて、襲われたと言いました。でも相手は蝙蝠です。クリントス卿ではありませんでした。クリントス卿が私を襲うはずはありません。彼の心はまだ戦の中にあって、女性に構うよりは国のために自分の人生を捧げたいと思うような方でしたから」
わなわなと震えて座りこんだ衛兵を、他の近衛兵が立たせて引っ張っていく。王女の嘘に引っかかったとはいえ、ノアを傷つけた近衛兵にヴィクトルは同情も感じなかった。
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