第7話 奇妙な噂2

 集まってきた人々が持つランタンで、衛兵の顔が真っ青を通りこして、紙のように白くなったのが分かる。ヴィクトルは王女を振り返り、睨みつけた。


「謀ったな」


 ロラ王女はヴィクトルの怒りに怯みもせずに傍らに立つと、声を潜めて言った。

「私が襲われたと言えば。ノアの首は罪人として門下に晒されるでしょうね。クリントス家も廃爵の憂き目を見るに違いないわ」


「狂言でノアを殺しておいて、俺まで脅す気か?」


「愛しい方を脅す気なんてさらさらありませんわ。取り引きをしようと言っているの」


「何が望みだ」


「あなたよ。私と結婚しなさい。永遠じゃなくてもいいわ。私があなたに飽きるまでの間で結構よ」


 ヴィクトルの額に青筋が浮かび、口元がわなないた。こんな女と結婚しろだと? とんでもない! 絶対に無理だと喉まででかかるが、ノアが強姦魔として首を晒されるのを想像して、ぐっと堪えた。

 今医者に見せれば、もしかしたら助かるかもしれない。

 ノアに憎まれても、助けることができるなら、俺は鬼にだってなれる。


「分かった。ノアを宮廷医に診させて、手厚く看病させるのも条件に含めるのなら、取り引きしよう」


「彼がもし助かっても、二度とよりを戻さないと誓える?」


「二人の間はそんな関係じゃないと言っても信じないだろうな。分かった。誓うから、早くノアの冤罪を解いて、医者を呼んでくれ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る