第6話 残酷な別れ1

 がさりと庭木がこすれる音がして、木の後ろから誰かが出てきた。

 暗がりでもうっすらと白っぽく浮き出る姿は、ドレスを着た女性だ。

 誰かとあいびきをするために、忍んできたのだろうか。だとしたら、間違われて面倒なことになる前に退散するべきだ。


「待ちなさい! クリントス卿」


 きつい命令口調に、ノアの足が止まる。振り返らなくても分かる。ロラ王女だ。 このまま気づかないふりをしてやり過ごしたかったが、ヴィクトルから聞いた話ではかなりやっかいな相手らしい。

 礼だけはつくしておいた方がいいだろう。ノアはくるりと向きを変え、頭を下げた。

 ロラ王女がすぐ傍までやってきて、ノアを上から下までジロジロと検分すると、蔑むように言った。


「男妾にはぴったりのきれいな容姿ね。他にいい男性を紹介してあげるから、ヴィクトルから離れてくれないかしら?」


「な、なにをおっしゃいますか。僕は妾ではありませんし、ヴィクトルとは親友であって疚しい関係ではありません」


「親友ですって? ヴィクトルがあなたの頭や頬を撫でて、手を握ったのを見たわよ。嘘つきで汚らわしい男!」


「違います。あれはそんな意味では……」


 パンとノアの頬が鳴った。扇で叩かれた頬がひりひりと痛む。もう一撃飛んできた扇を避けることもせず、ノアは両脇で拳を握って耐えた。


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