第5話 騎士の誓い7

「かっこつけとかじゃなくて、結構本気で言ったんだけれどな。子供の戯言だと流すつもりなら、騎士としてもう一度誓うよ。俺は魂のパートナーのノアが危険なときは、いつでも駆けつける。一生傍にいてノアを守ると誓うよ」


「ちょ、ちょっとその言い方は、まずいって。誰かが聞いていたら本当に誤解するぞ。僕はレディーじゃないから、日常においての危機なら自分で何とかできるよ」


 赤くなったノアが回りを気にしながら言い返すと、ヴィクトルはそれがどうしたと言わんばかりに、肩を竦める。ノアに向けるビクトルの視線や言葉が、まるで女性を相手にしているように感じるのはいつものことだ。

 自分が自意識過剰なのかと恥ずかしくなり、ノアはヴィクトルを見習って本音を吐いた。


「でも、もし、にっちもさっちもいかなくなったら、戦のときのようにお前に命を預けるよ。ヴィクトルが危ないときには、僕が助けに行く。これからも二人はずっと一緒だ」


 ヴィクトルが満足気に頷き、ノアの手を取り力を入れる。剣を握る手は大きくて硬い。ノアは手入れが行き届いているレディーの手を握るとき、細い指が折れてしまうのではないかと不安になるが、ヴィクトルの頑丈な手ならどんなに力を入れても大丈夫。安心できる。

 そのはずなのに、今夜に限って手を離すのが寂しいのではなく、不安になるのはどうしてだろう?

 遠くでヴィクトルを呼ぶ男性の声が聞こえた。おおかた王女が側近に頼んで、ヴィクトルを連れ戻しに来させたのだろう。


「ノア、もう一度だけ王女のご機嫌を取ったら、舞踏会を脱出するよ。ノアも頃合いを見計らって俺の宿泊先に来てくれ。酒でも飲んでゆっくり話そう」


「分かった。またあとで」


 闇夜にヴィクトルの背中が溶けて消えた。さっきまではヴィクトルを王女に取られたように感じて、気落ちした顔を誰にも見られないように明かりが届かない場所を求めたけれど、今はせっかく絆を確かめ合った親友の姿を消してしまう新月がうらめしかった。

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