第5話 騎士の誓い6
「いちおう結婚を思い描いてみたということか」
ノアが拗ねてみせると、ヴィクトルが慌ててノアの手を取った。
「違う、誤解するな。ノアはこの手で、女性に触れられるか? 俺はまだあの生々しい地獄の夢を見る。この血塗られた手で白い肌に触れたら、べったりと赤い手形がつきそうで、幸せな未来を思い描くことなんてできない。俺を理解してくれるのは、同じ地獄を味わったお前だけだ」
「ヴィクトルの気持ちはよくわかる。僕も同じだから。騎士たるものは強くあらねばならない。僕たちはそんな理想に縛られて、怖い苦しいという本音をだすこともできない」
ノアを労わるように、ヴィクトルがノアの頭を撫で頬へと手を滑らせる。最終的は肩で止まった手に力が入った。
「初めて出会ったときに、ノアのことは俺が守るといったのを覚えているか?」
「ああ、覚えているよ。まだ子供で身体が小さかった僕を心配して、ヴィクトルは戦争に行ったら僕を守ると言ったんだ。あの頃からヴィクトルは身体が大きかったから、兄貴風を吹かせたんだよね」
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