第5話 騎士の誓い2
急によそよそしくなったノアを、ヴィクトルがそのままにするはずがない。
主人から買い物をいい使ったノアが館から出たとき、待ち伏せしていたヴィクトルに捕まり、馬車に乗せられて理由を話すまで馬車を止めないと脅された。
ヴィクトルは騎士の叙任式を控えているのに、ノアが買い物から帰らない理由がヴィクトルだと主人に知られたら、あらゆる噂が飛びかねない。ノアはついに観念した。
「理由を言えば、ヴィクトルはすぐにでも僕を馬車から放り出したくなるさ」
「そうとは限らない。共に命を預けて戦ってきたお前を、俺が見限るわけがないだろ」
狭い馬車内で横に座ったヴィクトルが、ノアの手を握って顔を覗き込む。こんなに間近で顔を見られるのも最後になるかもしれない。
どきどきと心臓が踊りだそうとするのをなんとか抑え、ノアはヴィクトルの顔をじっと見つめた。
額にかかった黒髪と同じ色の長いまつ毛。鼻筋が通った高い鼻とその下に普段は何とも思わない話すためにある唇が、突然生々しく感じられて、ノアは急いで目を逸らす。それでもあまりにも近い位置にヴィクトルの顔があるものだから、視界から消すことができない。
もう少しだけ見つめるのを許してもらおう。これがきっと最後だから。
ノアはヴィクトルの瞳を見つめた。青い、青い海のような美しい色の瞳。
なんて凛々しくてかっこいいのだろう。
目頭が熱くなり、ノアは慌てて瞬きを繰り返し、ヴィクトルに背をむけて窓に身を寄せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます