第2話 舞踏会3

 振った顔の周りでプラチナブロンドが月光のごとく煌めくが、アメジストのように美しいと人々から称賛されるバイオレットの瞳は、新月のように輝きを失っていた。

 ヴィクトルはノアにとってかけがえのない親友だ。どんなに厳しい訓練も、身体が凍り付くような厳しい冬の戦地でも、ヴィクトルが隣にいれば乗り越えられると心のより処にしていた。


 それが偏執狂で残忍だと噂のあるロラ王女にロックオンされたら、ヴィクトルは人生まで絡めとられ、ただでさえ少なくなるノアとヴィクトルの交流は、王女によって邪魔されかねない。さきほどの恐ろしい睨みが、その証拠だ。

 王女の意思を跳ね返すことは、ヴィクトルがこの国の貴族である以上不可能に近い。礼を失すれば、家族や最悪家門まで傷つけることになる。

 分かってはいるが、ヴィクトルとは、出会ってから十三年も共に月日を過ごしてきたのだ。今更横から入ってきた女性に、二人の関係を踏みにじられたくはない。


「今では貴公子然としているヴィクトルが、どんな風だったか知りもしないくせに」

そう、あれは十三年前のこと。ノアは最悪の出会いを思い返しながら、唇に笑みを浮かべた。


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