第4話

その日の帰り道。私は公園にいた。よくゆいと遊んでいたところ。

この公園からは海が見える。ここから見える夕日と海が綺麗でここで何回も写真を撮っていた。

「…楽しかったなぁ。」

あぁ、あの時にはもう戻れないんだ。そう思うと涙が出てくる。別に泣きたいわけじゃないのに。


「〜〜〜。」

泣き止んでからしばらくしたころ、話し声が聞こえた。あたりはすっかり暗くなっていて、こんな時間に人が来るのはおかしかった。

誰が来たのか気になるのけど、なるべく人に会いたくないので隠れることにした。

 少し待っていたらゆいとみかが来た。

「てかさー席替え最悪だったんだけどー。」

「えーなんでー?優斗くんと近いじゃん。」

「そーだけどさー、前に凛華いるから嫌なんだよねー。」

「あー笑笑それはどんまい笑笑」

「なんで凛華と仲良くしてたん?」

「あいつねー優斗くんと仲良くってさ、それで凛華と仲良くなれば優斗くんとも仲良くなれて付き合えるんじゃないかって思ったんだけどー。全然役に立たなかったわー笑笑」

「うわーゆい性格悪いねー笑」

「はぁ!?笑笑そんなことないしー!笑」

結局悪口か、やっぱり私が優斗さんと隣なのが許せないんだな…。てか利用されてたとかショックなんだけど。

「…うわぁアイツら性格悪いなー」

「え!?優斗…さん!?」

びっくりした…。なんでここにいるのか。いつから聞いていたのか。いろいろ思うところはあるけど今すぐ帰ってほしかった。

「なんでさん付なんだよ。前まで呼び捨てだっただろ?」

…私が優斗をさん付になったのは周りの人からの目が怖かったからだ。もう話しかけないでと去年の秋頃、そう言ったのに。

「別に理由なんてどうでもいいでしょ。そんなことより早く帰ってくれる?」

「そんなこと言ったらお前も早く帰れよ。」

「私はいいの。」

「駄目だろ!親が心配するじゃん。」

お節介野郎だなと思った。会話しているのをゆい達に聞かれたらどうするんだ。

「別に心配されないから。そんなことより早く帰って。二人に貴方と会話しているのを見られたくないの。」

優斗は黙り込んでしまった。

なにかまずいことを言ってしまったのだろうか。

自分は人に嫌われたくないくせに、他人のことは余裕で嫌いになる。

私は図々しい人間だ。

「…なぁ、あれ答えてもらってもいいか?それだけ聞いたら帰るからさ。」

「あれ?」

「今日聞いたやつだよ。なんでゆい達と一緒に居なくなったのかってやつ。」

あぁ、すっかり忘れていた。一緒に居ない理由なんて忘れたかった。

「…教えなきゃ駄目なの?」

「ああ。」

「それ知ってどうするの?」

「俺になにかできることがないか探すんだよ。」

…バカバカしい。私の心はもう海の奥深いところまで沈んでしまった。もう誰も救い出せないような奥深くまで。なのに今更救い出そうとするとかもう手遅れだ。

「教えない。誰にも、私を救い出そうとかなんて無理。私の心は沈んでしまったの。」

「どこに沈んだんだよ。」

「海。」

「なんだそれ。水遊びかよ。」

「水遊びじゃない!!そんな簡単な言葉で私の気持ちを踏み躙らないで!!」

ついカッとなって大声を出してしまった。

“水遊び”そんな簡単で楽しげな言葉で私の気持ちを表されるのが苦しかった。





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深い海までも @amekuzira

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