第3話 「空球」
「さて、挨拶も済ませたことですし、本題に⼊りましょうか。」
「本題ですか。」
「はい、
「ややこしいですね。」
「すみません・・・私が説明下⼿なのも相まってわかりづらいですよね・・・。」
そう⾔いながら
「わかりやすく説明したいんですけど・・・何かいい⽅法は――――」
そこまで⾔ったところで久遠は何かを思いついたようで、⼀瞬⽬を⾒開いた後に嬉しそうに笑みを浮かべる。
「ちょっと待っててもらえますか?」
「はい。」
⼀分も経たぬうちに扉が開き、 久遠が姿を現す。その右⼿には A4 サイズの紙と消しゴム付きの鉛筆が握られていた。
「図で説明した⽅がわかりやすいと思ったので・・・。」
そう⾔いながら久遠はカウンター席に紙を置き、紙上に鉛筆を⾛らせる。
三⼗秒も経たずに鉛筆を⽌めた久遠は満⾜げな表情を浮かべながら紙を晦の⽅に寄せる。
⽬の前に置かれた紙を晦が覗き込むと、そこには図が書かれてあった。
図は円とその円の中にある三本の平⾏関係にある線分によって構成されている。
線分は円をちょうど⼆等分するものと、その線分の上下に等間隔に⼀本ずつ書かれてあった。
「・・・これは。」
「「空球」を横から⾒た図です。」
「なるほど。」
「この円が「空球」、そして真ん中の線が「空⾯界」を⽰しています。」
図に書いてある円や線分を指し⽰しながら久遠は説明を続ける。
「そして「空⾯界」を⽰す線の上にあるのが「
そこまで⾔い終わった久遠は再度紙上に鉛筆を⾛らせる。
およそ⼀分が経過した頃、久遠は鉛筆を⽌める。
晦が紙⾯を覗き込むと、先ほどの図の隣に新たに図が書き加えられていた。
先ほどの図と同じ⼤きさの円とその円と中⼼点を共有している⼩さな円。
そしてそれらの⼤円と⼩円の間の空間を七つに分割する線分で構成された図である。
先ほどまでの図と違う点として、線分によって分割された空間と⼩円の中には⽂字が書かれてあった。
⼩円の内には「異都」、分割された七つの空間にはそれぞれ「
「こっちの図は 「空⾯界」を上から⾒たときの図です。先ほども⾔いましたが、ここは「異都」と呼ばれている地域で、 図でいうところの⼩円の部分ですね。ちなみに、 さっきここは「異都」の辺境だと⾔いましたが、具体的には「異都」と「源都」という地域の境ぐらいの所ですね。」
そこまで⾔い終えた久遠は⼀つ息を吐く。
「ここまでの説明でわからないことはありますか?」
「・・・いえ、特には。」
久遠の問いに、少しの間思案するような仕草をした後に晦が返答する。
「・・・・・・」
晦の返答を聞いた久遠は無⾔で晦の顔を⾒つめてくる。
「どうかしましたか?」
「・・・蒼さん、貴⽅――――」
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