第13話 存在しない解
生きとし生けるものの盛り。それは夏のうだる暑さにだって負けず、音を鳴らし、まぐわり、活発に喰らい合う。
机で溶けていると、むせかえる甘ったるい女の匂いもすこしは紛れた。胸焼けものだ。よく等外や朝倉は平気そうにしているものだ。
まだ午前中だというのに、しなびれを知らない若人の活気は、まぶしい。やはり、前世含め三十路後半にもなるわたしには厳しいのだ。
「ねえ元浦くんもそう思わない?」
「えーはいはい」
「溶けてないで話聞いてよ。合宿だよ! 地域レポート!」
「みっちゃん近すぎ。だから朝倉くんにも敬遠されるんだよ?」
「おー羽鳥さん言っちゃれー」
顔立ちがシュッとして、外国の血縁を持つそうな羽鳥さん。ここ一ヶ月でだる絡みしてくる水戸の首輪兼飼い主に収まったお方は、わたしの清涼剤である。
チョーカーを掴まれ、引っ張りもどされた水戸は、暑くなるにつれ蝉のようにうるさくなってきた。
「もう朝倉くんにはほぼ縁切りされたも同然なのです。なら男子との青春くらい謳歌したっていいじゃん!」
「絶対その忠誠心のなさが原因でしょ」
「まあ、みっちゃんはそれほど朝倉家と関わりないから」
「二人とも家だのなんだの気にしすぎなのよ。しがらみがないと羽のように身軽なのに」
一周回って諦めたらしい。
美女美少女が集る朝倉であれば、競争率もそうだが、相手にされないと見切ったのだろうか。
「実家、なんだったっけ」
「みっちゃんのところはたしか、織物屋」
「せっつかれそうだね。子はまだかあとか」
「う、学校でまでそんなこといわないでよ。妹が妊娠してから野次が強いんだから」
十四、五で子をなしてもおかしくはない。かといって高等教育をも受けるような子であれば、多かれ少なかれ行き遅れることを承知しているはずなのに。
羽鳥さんと顔を見合わせ、苦笑した。
「このクラスだから急遽産めや増やせやと」
「なんで苦しみに満ちた入試を乗り越えて男子との淡い日常もおくれないのよぉ」
「みっちゃん、これでも努力家だから」
「振り回されてるのね」
二人して水戸の背をさすった。
これでもわたしに比較的よくしてくれる子だ。ためらいはなかった。
すると顔を上げた水戸が指をさしてきた。
「ってかあ、なんで元浦くんが三年の先輩とかと仲良くなってんのよ。こっち側でしょ、きみ」
「相良先輩はおしゃべり友達だよ。等外くんとか朝倉くんみたいな、行為前提の湿った関係じゃないよ」
「うそだ! どうせ二人っきりになったところ、指と指がふれあいいつのまにかとかになるんだ!」
「絶妙にありえる」
羽鳥さんまで興味深げに見てくる。あんた朝倉派でしょ。どうせ経験あるんだからそんな生娘みたいな目、すんな。水戸と並ぶと可哀想だろうに。
頬杖をついて嘆息する。
「ないよ、絶対に。ライオンと狼が仲ようなると思う?」
「いや」
「じゃあ鷹とトンビは?」
「それも」
「そういうこと。生きる上で交わらない感性とか、大事にしてるもんがあんの。出会ってプレイは君たちのローカルルールなの。この恋愛脳が」
「あだっ」
頭をはたく。
もう少し、この娘は節度を知るべきだ。
「羽鳥さんの方が詳しいでしょ、濡れ場の雰囲気なんて」
「へ……?」
「この、うらぎりもの!」
「ちょちょちょ、みっちゃんそれは」
「違わないよねえ羽鳥さん。日本人とは趣の違う顔立ちと、独特のトーン。さぞ重宝されてるんじゃないの?」
水戸つながりとはいえ、わたしへの接触も、なんの問題もないくらいだ。朝倉からの信は厚く、まあ繋がりは深いのだろう。
ふふふ、羽鳥さんもたまには困るのだ。
水戸がわたしにくっつき、羽鳥さんを糾弾する。
「はとちゃんとはもう絶交だよ!」
「ええ⁉︎ みっちゃん落ち着いて。みっちゃんより濃くて大人の体験してるだけだよ?」
胸をおさえ、水戸が崩れ落ちる。
羽鳥さん、もしかしなくても天然? うそでしょ。無自覚のマウントってこわー。
「水戸、あわれなり」
「な、なんで?」
巾着袋から干し梅を取り出し、膝をおる。
「ほら、塩漬けの干し梅でも食って、世の無情さに浸りなよ」
「……うう、すっぱあい」
「梅」
「羽鳥さんも食べる?」
「いや、私は」
「そう」
天然、ねえ。ほんとに頭お花畑なら良かったのに。
水戸を抱え立たせ、わたしはイスに腰をつける。
「いつも口を酸っぱくして言ってるじゃん。現実なんてそんなもんだって」
「元浦くんが枯れてるだけだもん」
「み、みっちゃん」
羽鳥さんから声をかけられると、わたしの肩に隠れ、水戸は怨嗟をあらわにした。
猫かこいつ。てか暑い。どうしてこうどいつもこいつもスキンシップが激しいのよ。
「水戸離れて」
「はとちゃん許すまじ、経験者死すべし……!」
「はいはい、お遊びはそこまで」
手を叩いて水戸を席に戻す。
大人しく従うところ、妙な切り替えの良さがある。羽鳥さんまでおろおろしていた表情がぬけおちた。欲はある、目的もある、けれどわたしたち三者はそもそも冷めている。
「水戸、どさくさに紛れて首元に触れないで」
「う、はい」
「羽鳥さんも、ナチュラルマウントはわたしにも刺さる。優越感に浸りたいだけなら他所に行って」
「それは無理かな。みっちゃんいるし」
「なら意図してマウント取らないで。うっとうしい。ハエじゃあるまいし」
戯れだ。あえて馬鹿を装い、愚かに振る舞い、お互いに気を緩ませ合う。それでも変わらないのが性根というやつなのだ。
三人で向かいあう。
「合宿の方はマジだったでしょ」
「ええ、元浦くんと組むしかないんだけど。ほかに連れ添ってくれる人いないだろうしね?」
「こっちは選抜がきつい。朝倉くんと組みたいのでっていうアピール合戦が」
「水戸とわたし、多分先生がセットになる。羽鳥さんはギクシャク合宿に直行だね」
水戸と拳を突き合わせると、羽鳥さんが身を乗り出してくる。
「なんでなんで? みっちゃんや元浦くんと一緒にいちゃいけないの?」
「うっわあざと」
「はとちゃん、文脈的にさすがに不自然。もっとさりげなくしないと、罪悪感なんて植え付けられないよ」
顔を落とす羽鳥さんはほおをはさんだ。
装うのも大変だなあ。なぜそうするのかは聞かない方がいいだろう。藪蛇は突きたくない。
「ううん、やっぱり?」
「もうちょいトーンを平坦にすれば」
「それだと不思議キャラになるよ、元浦くん。急に態度変わると困るから、少しずつ慣らしていったほうがいい」
「どのみち羽鳥さんは朝倉くんに引っ張られるんでしょ? なら諦めたほうがいい」
わたしは足を組み、あくびをもらした。水戸は爪を見つつ、ひたすら平板に反応する。とうの羽鳥さんは口元を隠してなにやら思案気味だった。
三者三様。言うまでもなく、やはりわたしたちは心底熱くなれないのだ。
「……朝倉くんと元浦くん、セットなら」
「やだよめんどくさい。あんなキラッキラして、無駄に色気垂れ流すような男」
「元浦くんがみっちゃんを連れてくれたら、できるだけフォローはするよ?」
「はとちゃんはいささか強引すぎ。こういうときは相手の利を探りつつ、要望を聞く平の姿勢が必要だよ。ね、元浦くん」
髪をまとめていた布を外し、おろした水戸は目をやってきた。
にっこり笑って黙る。わたしまで言質を連帯させんな、この寂しがり屋。
羽鳥さんは首を振った。
「出せるものがあれば、そう考えたけど」
「よしみで付き合うラインは超えてる。あんたたち、こういうイベントごとの最中は決まって物陰にこもったりするし。お世話になる下宿先の方にも面目が立たん」
男二人を女子二人が独占ともなれば、周囲の顰蹙も大きくなるだろう。羽鳥さんは水戸と朝倉さんの縁結びにご執心のようだけど、本人にそこまでの願望があるかと言われたら。
「なにより、面識も薄い仲の人と宿を同じくするのはね」
「元浦くんは相変わらず警戒心強いね。なんかあったの?」
「ないよ。ただ神経使うのが疲れるだけの話。羽鳥さん、羽鳥さんの交渉は相手の情に訴えるのが形だけど、それは男にしかきかないよ。汎用性からみれば、やっぱり観察、いや洞察のキレを持たないと」
わたしと水戸、そこへ羽鳥さんがつるむようになった。互いにぼろを見せてアドバイスし合う関係になったのは、つい最近のことだ。
それは得難く、奇怪なリズムをもっていた。
「私、そういうの苦手で」
「なら諦めればいい。欲するより、欲される人になれば、お願い事の大概は受け入れられる」
「水戸の言葉はきついけど、素地がなきゃ言わないのもわかるでしょ?」
羽鳥さんは軽くうなずく。水戸が編み込みをつくりつつこぼした。
「私は、元浦くんの指摘が使えるから一緒にいるだけ。体感的にわかるのよ、届かない領域って。だから言ってもらうし、その代わりおしゃべりに付き合う」
「そこまで割り切れてないでしょ、水戸」
足蹴されてため息をつく。羽鳥さんはクスリと笑った。
女子高生といえど、感情のままに振る舞ってしまうらしい。前世と比べても天狗になったり、やたら自意識過剰な民相はない。むしろ素直で、働き盛りというのがこの年頃の普通だ。
わたしは、そちらの方が健全で微笑ましいと思う。
「余計なこと言わない」
「無理して理知的に振る舞わなくても、わたしは忘れたりしないよ」
「別にそんなんじゃない」
「みっちゃん、か〜わい〜」
「むう」
水筒で舌を湿らせ、水戸にもすすめる。雑に受け取った水戸は、一気に飲み干した。
嫌がらせのつもりだろう。あとでお手洗いに行きたくなっても知らないぞ。
「素直は美徳だよ。恥じることはないと思うけど」
「ん? なんか今さらっと間接キスしてなかった?」
「私は勤勉でなきゃ困るの。素直なんて下っ端のうちしか良く見えないよ」
眉をひそめる水戸には、苦渋に満ちた経験でもありそうだった。戸惑う羽鳥は置いておいて、水戸は生き急ぎすぎだ。
元々この校に入るだけの優秀さはあるのだろう。しかし入学当初は母担当が寄せ集められたクラスということもあり、学習から子作りに目的がらぶれた。家族からの圧が大を占めていると見るべきか。
「無理に、目標を決めなくてもいいんじゃない? 日々やることをこなしつつ、いろんなものを観察していけば、納得できる指針が見つかるだろうし」
「……美徳って言ったよね」
「素直なこと? そうだね、どこまでいっても迂遠な言い回しは疲れる。そんなわたしみたいな人にとって、素直な物言い、態度は信じられるものなのよ」
会長みたいなやたら高圧的なわけでも、相良先輩のように曖昧に迫ってくるわけでもない。よちよち、一歩をたしかに踏み込んでくる水戸は自覚的に素直である。
世の口汚さ、婉曲した受け取り方を知っている上でそれを選択している。通りで三ヶ月もしないうちに名前を覚えられたわけだ。
「元浦くん待って、まだ私が朝倉くんとみっちゃんの縁結び中だから。口説くのは」
「は? こんなんで胸打たれるほど水戸はお子ちゃまじゃないよ」
「……元浦くん、死ね」
わたしと水戸の間に体を滑りこませた羽鳥さんのせいで、むこうの顔は見えなかった。
「ええ、唐突な宣告」
「いや順当、じゃないかな」
羽鳥さんまでも微妙な表情でほおをかいた。
「はあ、縁結びはがんばって。待つのは慣れてる」
それが道連れか救済かは知るよしもない。
羽鳥さんが退くと、むすっとした水戸が腕を組んでいた。
「じゃあセットの話はなかったことに」
「うん、無理。水戸、ここではっきり、朝倉くんに乗るかそるか決めた方がいいよ」
「なにそれ」
「羽鳥さん、水戸をよろしくお願い」
「はあ⁉︎」
そも、水戸はわたし以上にヘイトをかってる。クラスメイトの女子全般から。立場の曖昧さは、その都度味方か敵か判断する労を必要とし、だからこそいらだたしくなるのだろう。
見え透いた実害が生まれようとするのに、対策しないのは生物として失格だ。
「まかされた。ああ、これで断られたらどうしようかと思った」
「ね、ちょ」
「朝倉くんに取り込まれても、線香くらいはあげてあげるよ。絶縁記念に」
ピシリ、水戸は硬直し、羽鳥さんまで口元をひきつらせた。
まさか、組み敷かれる恐れ、夜這いされる可能性。二人とも見えてないわけないでしょ。
「あのねえ、行くのは人も建物も少ない近郊の農村だよ? 開放感ついでに男が盛るのも、あんたたちの頭の紐が緩むのも、ほとんど必然だよ?」
「……うん」
「水戸、特にきみは朝倉から注目されるよ。未所属かつ、一度は手放した子。惜しまないと思う? 男って欲張りだからさ。本能に節度とかないから」
宿の方でも、マレビト文化なんぞあったらほぼ間違いなく巻き込まれるだろうし。
ここで垣間見えるのはむしろ、羽鳥さんのポジショニングだ。個人の寵愛は限られる。なのにわざわざ水戸を引っ張り込む意味がよくわからない。
「それはさ、元浦くんもなの?」
「当たり前でしょ。せっかくのおしゃべり相手をみすみす惜しまないってことはないの。だからいま対策だって考えてしまう」
「あのー、みっちゃんは問題ないよ。多分」
「なんで」
「私が守るから」
「嘘」
「ダウト」
机に突っ伏す羽鳥さんを無視し、話に戻る。
「最終的に水戸自身の自己管理能力が左右するけど、案内役がこれだし」
「正直、誘ってきそうなまである」
「うう、私そんなに信用ない?」
「ない。こと水戸を同伴することに関しては、朝倉くんと水戸の動向を常に観察して、調整する必要がある。羽鳥さん、慣れないことを途中で放棄する未来が見える」
期間は三日、人の目を盗んで水戸に迫る機会はいくらでもある。泊まるところも民宿と聞く。羽鳥さんにそこまでの粘り強さはないとみた。
「そもそもさ、私が朝倉くんと、その、シて、問題あるの」
「おおありだよ馬鹿野郎」
軽くこずいて姿勢を正させる。
水戸はよくわからないと言った顔だった。羽鳥さんは苦笑するばかりでなにも言わない。
「いい? 派閥ってのは恩恵ありきで結束するの」
「その恩恵が、行為ってこと?」
「当然。新入りがすぐにその段階にいけば、もちろん順序を踏んできたほかの女子からえらい目にあわされるぞ。なにより」
のどにつっかかり、言うか迷う。二人とも目を丸くしていた。
「……なにより、やればわたしは自動的に敵と判断せざるを得なくなる。体の結びつきは、相手との心の壁、あらゆるコミニュケーションのハードルを下げる効果がある。わたしからしたら、信用の最低ラインを下回る理由の大きなものだよ」
情報の秘匿、信用、関係の優先順位、それらが誘惑ひとつで揺るぎかねない関係をもつ人を、信用できるほどわたしの頭は緩んでない。
水戸と羽鳥さんは口を閉ざした。
「渡せる情報にも制限をかけざるを得なくなる。その労を加味すれば、わたしは絶対に水戸とのおしゃべりをしなくなる。処女性ってのはね、なにも性的価値だけじゃないの。明確な情報漏洩に対する脆弱性がないっていう信頼性に直結する。だから文化風俗問わず、神聖視される」
無人の教室を見渡し、手元にもどす。
「元浦くんは、じゃあ私がやったらもう」
「話す気がなくなるね。わたしの好き嫌いとかの範疇じゃなくて、本能的に避けるようになる。羽鳥さんは水戸にくっついてるから免除してるだけだし。ほんとはここにいて欲しくもないのよ」
羽鳥さんは能面のごとくわたしを見つめてきた。言わなきゃ汲み取れるものもないぞ、監視役。朝倉の指示か、あるいは羽鳥さん自身の判断か。もしくは他の誰かに。
「お見通しなんだ」
「水戸にくっつくのは、おそらく真情だと。けど、それを差し引いてもわたしがいる場に合流する必要はない。むしろ結構なリスクだ」
「え?」
「水戸、不思議に思ったことはない? なんで朝倉くんのとこの羽鳥さんが、水戸とわたしのいるとこに寄ってくるのか。普通離れるのよ。朝倉くんへの不義と疑われたくないから」
背にちりつく日差しが汗ばみを生み、カーテンを閉める。
「……ただ、元浦くんと話したかったからといったら?」
「そういわれちゃ信じるしかないね。水戸、どれくらい嘘が混ざってる?」
「え、う〜ん、まあ六割」
「わたしは五割。やっぱり、水戸に意識を割く頻度が高かったらかな。わたしはついで感が否めないのよねえ。水戸の声音の方が確信深かったし、会話の一体感は比べるまでもないということか。今回は水戸の方が確度たかいかなあ」
そこで言葉を切ると、水戸が横目にした。
スカートを握りしめ、わたしとは目を合わせてくれない。羽鳥さんは目を細めるばかりだった。
「今はまだ早いと思ってたんだけどね……」
バタンと戸が開く音がしてそちらを見やる。小柄な女子が立っていた。
複雑そうな様子である。
「元浦くん、姉さんから伝言」
「ああ、ありがと」
紙片を受け取れば、すぐにその子は踵を返した。いなくなると、水戸が問いただしてきた。
「元浦くん、早いって、どういうこと」
「もともと羽鳥さんになんのつもりでつるんできてるのか、聞く気ではあったのよ。今日は深掘りすぎてつい」
「それより、見なくていいの」
羽鳥さんが促してきたので、開く。
水戸がのぞきこんで来た。仕方ないので紙を寄せてやる。
「お茶?」
「めずらしい。自分の口で伝えないと不安がる相良先輩が」
「へえ、達筆」
いつのまにか羽鳥さんもいた。
達筆な墨字で、今日の五時過ぎごろに銀行に待ち合わせと。来れない場合は六時に帰る。などとこちらの心配まで先回りする。
さすが相良先輩。てかなぜに銀行。
「いくの?」
「ここで延々と言葉を刺しあうのも飽きた」
羽鳥さん自身、きっと内心を整理しきれずわたしたちにつきあっていたのだろう。ならば探っても無駄だ。若人ゆえ、相手をどう位置づけるのかが曖昧だったりする。
付き合いが浅いうちはなおさらだろう。
水戸の小指と交わす。
「え、なに」
「水戸、わたしは判断をまかせた。裏切るもよし、ののしるもよし。害がない範囲なら自然消滅しても、なにも言わないよ」
指切りげんまん。わたしはなにを願ってるのだろう。一度力を込めて離す。水戸は手を抱えて黙り込んだ。
「じゃ、わたし生徒会に顔出したら帰るから」
鞄を持つ。
あー、語彙しぼるのきつかったなー。
水戸はもちろん、羽鳥さんも呼び止めてくる方はなかった。
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