第6話
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アレクとオーグ
こんな自分にとって、ありえないぐらい素敵な男性が二人
そぐそばにいて、いつも優しくしてくれる。
オーグは、真っ直ぐ私の目を見て、好きだと言ってくれ、結婚したいと言ってくれた。
それなのに、自分の心が何処かを彷徨っているような気持になるのは何故だろう。
・・・・自分はこんなに欲深く、罪深い。
いつか、罰を受ける事になるのかもしれない。
***
それでも、日々の仕事はやりがいがあるし、みんな陽気だ。
忙しい事が、自分の欲深さを忘れさせてくれる。
団員のみんなは、毎日おいしそうに私のつくった食事を食べてくれる。
こうして第三騎士団にいると、私は大きな声で笑っていられる。
門番のおじいさんが言った言葉を、ふと思い出す。
信じる事は大事ですが
不用意に近づきすぎると
却って互いが傷ついたりするもの
その部分は
貴女もしっかり考えなければ
「・・・私、間違っちゃったのかな?」
アレイシアは、ベッドでうつ伏せになって、独り呟いた。
次の休みまで、あと3日に迫っている。
***
別に気が重いわけじゃない、オーグとの旅行は楽しみだ。
オーグといると、いつだって楽しいもの。
休みの朝、いつもより早く目が覚めた。
どんな素敵な景色が見られるんだろう?
どんな美味しいご飯が食べられるんだろう?
・・・とっても、楽しみ。
オーグはもう準備を整えて、馬車で待っていてくれる。
私も準備は万端だ、すぐに出かけられる。
・・・団長に「行ってきます」を言わなきゃ。
「団長閣下、では外泊してまいります、4日後に戻る予定で・・・」
そう言おうとすると、アレクが私の肩を掴んだ。
「・・・え?」
「・・・くな」
「・・・行くな」
絞り出すようにアレクが言う。
「え・・・どうして?」
「どうして、今になって、そんなこと言うの?」
私の中に、どうしようもない動揺が走る。
その時、門の外から大きな声が聞こえた。
「第三騎士団・副団長オーギュスト様!」
「団長アレクサンドロス殿!」
「私は、宰相筆頭補佐官のクレメンスです」
「大至急、お二人にお知らせしたき儀が!」
その様子から、ただ事でない事は分かった。
馬車を降り、騎士団執務室に戻ったオーギュストが、アレイシアに声をかける。
「少し、出発が遅れそうだ、君は部屋で待っているといい」
そう言うと、アレクと目を合わせ、クレメンスの待つ団長室に入って行く。
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