第56話 2人の戦い
とある村、そこでは多くの人が逃げ惑っていた。
何から逃げているのか、それは一目瞭然。
「例のモンスターだ!みんな建物に隠れろ!」
「こいつら、騎士団が倒したんじゃ、うわぁ!」
村を地獄に陥れていたのは、
二足歩行オオカミ型モンスター。
過去にレイが出会った個体と酷似しており、辺りの人々を片っ端からその鋭い手と足の爪で切り裂いていた。
しかし、その奥には堂々と構える人の姿も見える。
「よしっ、この村から人がいなくなったら実験は終了だ。変に近づくなよ、俺たちが襲われたらたまったもんじゃない。」
「分かってるよ、いい稼ぎ口が見つかったんだ、無駄にしてたまるかよ。」
3人の男たちは、オオカミ型モンスターが人を襲っている中でも平然とその場に立っていられた。
「だ、誰か─。」
次々と村の人々に被害が生まれ、
「グァァ!」
1体のオオカミ型が逃げる女性に飛びかかり、背中から爪で引き裂こうと振り下ろす。
「い、いやぁ─。」
「照らせ、
オオカミ型の正面から赤い光を纏った物体が迫り、振り下ろした腕が撃ち抜かれる。
その部位は、熱を受けたのだろう黒く焦げる。
「ガァ?」
オオカミ型が状況を把握できないまま、
1人武器を構えた者が接近し、
「一の型、
光で反射し、黒く光る剣が顎下から迫り、オオカミ型の腹から顔にかけて切り裂く。
オオカミ型はその場に倒れ込み、真っ赤な血が流れる。
「え?」
「あなた、早く逃げなさい!」
「あなた方は。」
「通りすがりの傭兵だ、この村は危険だ、早く!」
「あ、ありがとうございます。」
女性は町の外へ走り出し、2人を置いていく。
武器を構えた2人、それは、
「レイ、予想を超えてオオカミ型モンスターの動きが活発みたい、数も多いわ、いける?」
「ああ、これ以上好き勝手させるかよ。」
レイの表情が険しく、眉間にしわが寄っているのが分かる。
その姿を見たセレジアは、
「……怒りを覚えるのも分かるわ、それは正しいこと。でも、感情に呑まれてはダメ、忘れないで。」
「感情に、呑まれる。……すぅー、はぁ。ありがとう、注意する!」
レイは息を整え、黒剣を構え目の前に映る5体のオオカミ型を見つめる。
セレジアも銃剣を構え、オオカミ型を狙う。
(すんっ、すんっ。この匂い、俺が嗅いだことある匂いだ、この先に俺の知ってる奴がいるのか?いや、今は目の前のこいつらを制圧だ。)
「ガァ!」
オオカミ型が5体一気に流れ込む。
先頭はレイが請け負い、爪を弾きながら5体を分散させようと立ち回る。
目で追うのが大変なスピードの爪を、レイは最小限の動きと剣捌きで対処していく。
避けた爪は空を切るものから、地面に深く傷跡を残すものまで多数。
「こっちだ、オオカミども!」
振り上げたレイの攻撃が、オオカミ型のバランスを崩しそのまま背後に跳び距離を取る。
レイの動きを挑発と捉えたオオカミ型は、3体レイを狙う。
(3体連れたか、そっちは任せるぞ、セレジア。)
レイはそのままセレジアからも距離を取り、3体を引き連れていく。
残された2体もレイの方向に向かおうとするが、
「照らせ、
銃剣から放たれた氷の弾丸が、斬撃の如く大きくなりオオカミ型の腕に傷をつける。
「あなた達の相手は私よ、民が受けた痛みを思い知りなさい。」
レイとセレジアは敵を分担させ戦いを始めた。
まずはレイサイド。
3体のオオカミ型がスピードに乗って迫る。
「お前達の速さは知ってる、俺に追いついてみろ。」
レイには3体のオオカミ型、両手両足の12本が振り下ろされる。
だが、相手の動き、予測、自分の間合いを常に考え、危険な攻撃だけを見極め黒剣で弾く。
避けた攻撃は、周りの家に爪痕を残し、木を削り、時には仲間すらも傷つけていた。
それだけ荒々しく、危険な攻撃なのが見て取れる。
戦いが始まって15秒、レイはとあることに気がつく。
「お前ら、どこかで訓練されたよな、それは自然と身につく動きじゃない、オウロやギルドの戦闘員のように何かの型が体に染み付いてるみたいだ、お前らはやっぱり人工モンスターなのか……すまない。」
レイは距離を取り、黒剣を納める。
その瞬間を見逃さなかったオオカミ型は、トップスピードで迫る。
その距離、残り50cm。
すると、レイの空気が変わり、
「五の型、開演。」
レイから放たれる圧、オオカミ型に対するプレッシャーが辺りを支配する。
レイのプレッシャーに囚われたオオカミ型は、一瞬動きが止まる。
その時を見逃さなかったレイは、
「
0.3秒で正面のオオカミ型に迫り、鋭い上段斬りを浴びせる。
続けて、
「
真ん中の狼型に迫り、防ぐ暇も与えず横一文字に切り裂く。
間髪入れず3体目、
「
黒剣で突きを放ち、貫かれたことを気付かせないほどの一撃。
3体のオオカミ型を斬る一連の動きは、ちょうど1秒の出来事。
そして、
「可憐な華、儚く散れど、人の世へ、芽を植え来世に、その名を咲かす。安らかな時を。」
黒剣を納刀すると同時に、3体のオオカミ型がその場に倒れ爪1つも動かせない。
レイが悲しみを思い出すのと同時に体にも思い出された、五の型。
レイの強さを物語るのには十分すぎる戦いであった。
レイサイドのオオカミ型は無事制圧、続けてセレジアの戦闘に移る。
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