第38話 魔術とは
レイは見てわかるほど元気を無くしているセレジアを見て、敢えて話しかけることはせず見守っていた。
(今のが、魔術ってやつか?まあ、どっちでもいいか、今はセレジアの整理が必要な時間な気がする、パンケーキでも食べながら落ち着こう。)
レイは今日のパンケーキが来るまで静かに待ち、
「お待たせしました!レッドフルーツのパンケーキ、クリーム追加です!」
「え、クリーム追加?」
「セレジア様も、お連れ様も前回来られた時絶賛頂いていたので、ご迷惑でなければ食べて頂きたく!」
「ああ、ありがとう!」
2人の前に、フワフワの黄色いパンケーキの上に真っ白い生クリームが山の如く乗せられ、赤い果実とベリーが多く散りばめられ、最後に酸味のある赤いソースが上からかけられているものが置かれる。
「これで銀貨2枚か、贅沢品だな。なあ、セレジア!」
「……そうね。」
レイの言葉が右から左にすり抜けていくのが見て取れる。
「セレジアは甘いの好きだよな?」
「……そうね。」
「じゃあ、食べさせてやるよ!」
「……そうね……へっ?」
俯いていたセレジアが顔をあげると、ナイフで一口サイズに斬られ多くの生クリームと赤い果実が乗せられたフォークを、口の中に詰め込まれる。
「んぐっ!?」
「やっとこっち向いたな、人の話をスルーした罰だと思ってしっかり味わってくれ!」
レイは笑いながら、自分もパンケーキを口にする。
「おっ、これも美味いな!甘いだけじゃない、酸味も合わさっていくらでもいけそうだ!」
「んぐっ、っ、ん。はぁ、あなた何したか分かっているの!」
「んー、実験?カトラリー越しなら凍らないんだな。」
「あなた、さっき私に凍らされたばかりなのよ!怖さとか知らないわけ!?」
「知ってるよ、目の前のセレジアに思いださせられたから。」
レイはナイフとフォークを置き、セレジアを見つめる。
その表情は真剣そのもの。
「でも、今の俺は凍らされるよりもっと怖いことがある。目の前で苦しんでるセレジアを、助けを求めている人を見捨てて後悔する方が何倍も怖い。それに、見捨てる選択をしたら、俺は俺に対する怒りで自分を許せないと思う。」
「あなた、本当にバカなの?」
「バカになるだけで、セレジアを助けられるなら喜んでなる。俺は記憶を無くしてる、記録もない。だからこれからの俺の人生は、記録じゃない、記憶に刻む時間だ。俺のバカに、付き合ってくれ。」
「……はぁ、呆れてものも言えないってこのことなのかしら。……でも、ありがとう。」
セレジアが発した言葉と共に、浮かんだ表情は今まで見たことがないほどに美しかった。
「なんだ、美味しいものがなくても笑えるんだな、セレジア。」
「え?私が、笑った?」
「ああ、最高にいい笑顔だった。」
「……そう。って、馬鹿にしてるのかしら?凍り付けにするわよ?」
「あ、いや、ごめんなさい。」
いつも通りを装うセレジアだったが、人の変化に敏感なレイにはすぐにばれてしまっていた。
いつもより笑顔なことを。
セレジアにいつも以上の元気が戻り、2人はパンケーキを食べ進めた。
レイがもう一度実験としてセレジアに食べさせようとしたが、凍り付けにしてから凍り付けにすると、二重に脅されたため引き下がった。
食事を終え、レイはセレジアに質問する。
「さっきの氷は何なんだ?セレジアの流派か?」
「いいえ、これは魔術っていうの。」
「魔術?それって、俺の前の剣が欠けたきっかけの赤い飛ぶやつと同じか?」
「そうね、私の武器は魔銃剣といって特殊武器に分類されるの。レイも特殊な剣に変えてたわよね、ジャンルは同じよ。そこに、私は魔術を付与させることが出来るの。」
「ん?すまない、馬鹿にも分かるように説明してもらえないか?」
魔術……イリオスで数%の人間しか扱えない、脳を酷使する技。
魔術は、7つの色が割り振られている。
赤、青、緑、紫、黒、白、無の7つだ。
色により効果が異なり、例えば赤色は熱を持たせることができ、使い方によっては炎すら起こすことができる。
しかし、連続で使うには限度がある。
脳で発現する力を具体的にイメージし、それを形にして外部に発する。
そこに使う集中力と、体力は並大抵のものではない。
無茶をすれば脳が焼き切れ、死ぬ者もいる。
その中でも、セレジアは
魔術は基本的に自分が触れたものに、触れている時間だけその力を発現できる。
だが、セレジアの
そのため、銃剣という鉄の弾丸を放てる武器と組ませることで、より効率的に戦闘が進められる。
弾丸は1度に6発入れられ、リロードするときは回転式の部分を広げ、腰に付けている小さい入れ物から弾を取り出し入れる。
「だいぶかみ砕いたつもりだけど、伝わったかしら?」
「うーん、2割ぐらい?」
「……まあ、使い勝手があまりよくない強い力って覚えておきなさい。」
「分かった、それなら覚えていられる。さっき、俺を凍らせた力もそれの応用か?」
「……そうよ、私は一応王族だから他人に危害を加えられないように対策しているの。」
一瞬、セレジアが何かを発しようとして無理やり飲み込み、違う言葉を選んだのを見逃さなかった。
その口は、のの字をしていた。
(セレジア、どこか誤魔化しているな。まあ、今言いたくないなら待つのが賢明、ってオウロならいいそうだよな。)
「そういや、マクセル・シェングンって人覚えているか?」
「マクセル副騎士団長?もちろん、私の武術はあの方から教えて頂いたのだから。どうしてその名前を?」
「いいや、なんとなく。」
「なんで誤魔化すの、あなたが何となくでいえる名前じゃないわ。」
「セレジアと同じで、俺も話せないことの1つくらいあった方がフェアっぽくなるだろ?」
レイは少し微笑みながらセレジアに話す。
「っ、本当っに、レイの事嫌いだわ。」
「はいはい。でも、セレジアはすごいな、それだけ努力して騎士団長になった、その過程が俺には想像もできない程つらいものだったんだろう。素直に尊敬するよ。」
「っ!?ほ、褒めても何も出ないわよ!」
「あれ、照れてる?」
「あっ?」
セレジアの鋭い眼光と威圧的な言葉で、レイは背筋が凍りすぐに謝った。
「まあいいわ、これからもお互い利用し合いましょう、レイ。」
「ああ、期待に応えられるよう頑張るよ、セレジア。」
2人は向かい合い、これからも協力することを誓い合った。
場所は変わり、とある町で建物の陰から聞き耳を立てる者が。
「聞いたか、カラマタに入った新入りが大活躍でギルドランクBになったて!」
「聞いた、聞いた、その新人がなんか変な流派?みたいなの使うらしいぜ!」
その建物はギルドであり、聞き耳を立てる者に丸聞こえだった。
そして、その者が一言呟く。
「やっと見つけた、うちの、兄さん。」
その言葉が示すこととは、いったい。
第1章 完
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