第26話 第2の欠片
レイは再び謎の空間で目を覚ます。
先程までスタンピードを対処し、直後に謎の騎士と死闘を繰り広げていた。
そして今、目に映るのは真っ暗な空間のみ。
光が全く差しておらず、自分がどこを向いているのかもわからない。
(ここって、この前夢だと思ってた場所だ。確か、懐かしい感じの記憶と、感情を取り戻すきっかけをくれた─。)
思考するレイの前に、再び映像が流れ始める。
真っ暗な空間から、今そこで生み出されたかのようにその目に映る。
1つ目の映像は、近くに白髪のある程度年配の男の指導を受け、武器を振るっている映像。
恐らく自分であろう、140㎝程度の少年が一生懸命手に持つ木の武器を振るう。
(どこだ、そこは。そこで俺は、何をしているんだ。)
映像で自分の隣にいる人を見れば、同じく武器を振るう1人の少女が映る。
少年よりも10㎝ほど身長は低いだろうか。
「……にい!うち、負けないから!」
「……。」
少女の声に、少年は何か口を動かしているが、声は聞こえない。
少女の優しい声が響くと共に、場面が急に切り替わる。
次の映像は、目の前で火の手が上がり逃げ惑う多くの人々。
その流れに逆らって、目に映る少年は炎をかき分けながら炎の発生源に向かう。
体に火傷を負いながらも、気にする余裕がないほど息を上げ、走り続ける。
着いた先で見たものは、とある建物が丸焦げに焼かれていく姿。
屋根は崩れ落ち、庭は炎の海と化していた。
少年はその場に崩れ落ち、建物の近くに落ちるナイフのようなものを手に取り涙している。
上空を向き、口を動かしているが、何も聞こえない。
(今泣いているのは、俺か?何で泣いてる?なぜ泣ける?映像の俺は、感情が戻っているのか?……それとも、昔の俺か?)
(あなたは、そこで止まっている暇はないわ。お願い、生きて。)
レイは背後に急に気配を感じ、何も見えないが自分の身を守ろうと剣を構えようとする。
だが、いつもしまっている剣がなく、目の前からの圧力に反発できない。
「誰、何だ、あんたは。」
「……あなた、なのね。」
レイの目には、数日前に初めて見た白服の女性が。
圧力を発生している正体は、目の前の女性であることは間違いない。
「教えて、くれ。俺に、なんで、関わって、来るんだ。」
「……は、死んでは、いけない。私が、あなたを─。」
話している最中で、レイは目の前の女性からではない引っ張られる力を感じる。
「待ってくれ、あんたの名前は─。」
「……。」
その答えを聞くことは出来ず、レイは全身ブラックホールに呑み込まれるように吸い込まれる。
次目を覚ますと、
目に映るのは10mほど離れた先に見える木の板。
そう、レイはどこかの建物のベットの上で目覚めた。
状況を呑み込めず、言葉が勝手に口から零れる。
「ここは、どこだ。」
「あら、気が付かれましたか、戦士様。」
「あんたは?」
レイの傍に、薄いピンク色主体の看護師が着ている制服と似たものを身に着けた女性が寄ってくる。
「私は、本医務室の副室長になります。4時間ほど前、あなた様はここに運び込まれてきたんです。」
「運び込まれた……スタンピードで力尽きた時か。誰が俺を?」
「にわかに信じがたいですが、鮮血の銀髪が連れてきました。後は任せるとだけ言い残されて。」
「あいつが……俺の体は動かして平気なのか?」
「……?珍しいことを聞きますね、あなたの怪我は決して軽くありません。2-3日は入院が必要です。ただ、出歩くくらいなら問題はないかと。」
レイは副室長の意見を聞き、
「そしたら、騎士団の宿舎に行きたいんだ、その後戻ってくれば平気か?」
「うーん、私の立場ではお止めしたいところですが、何か理由がありそうですね。分かりました、夜までにはお戻りくださいね。」
「分かった、ありがとう。」
レイはベットから起き上がり、医務室を出る。
すると、体が思い出したかのように膠着する。
(っ!?なんだ、この感覚。)
レイの頭には、騎士団長に殺される寸前、放った技の記憶と、もう1つ。
恐怖の感情が、体に沁みついているのが分かった。
(そうか、俺はあいつの迫力、それが恐怖となって俺の体を自由にさせなかったんだ。やっぱり、相当強いんだな、あいつは。だったら、尚の事あいつと話したい、俺を生かした理由も含めて。)
レイは騎士団の宿舎に向け、走り出した。
レイの中で、騎士団長のセント、王族のセレジア、ギルドの鮮血の銀髪は同一人物と予想している。
そして、王族に会うのと鮮血の銀髪を探し出すのは困難と考え、アテネで一番会える可能性が高い騎士団長に会うことにした。
医務室から騎士団の宿舎までは1㎞弱。
走って向かった先で、門番の騎士を見つける。
門に近づくと、
「止まれ、何用だ。」
「俺は、カラマタギルドの戦闘員、レイだ。お願いがある、騎士団長のセントと話をさせてくれ。」
「騎士団長と?お前如きが簡単に話せる方ではない。」
「お前が望んでも、出てはくださらないだろう。」
「否定しないってことは、ここにいるんだな。」
レイは意識的に闘気を高め、騎士団たちの体を強張らせる。
レイの闘気に反射して、騎士の2人は剣を構える
「お前、何をしている!」
「ここで妙なことをしたら、どうなるか分かっているのか!」
「悪いけど、俺はあんた達に負ける気はしない。でも、無駄な命を散らしてはいけないって、友から教わった。お願いだ、3分だけ騎士団長と話させてくれ。」
「お前のような危険人物をなおのこと会わせるわけには─。」
「やめなさい、あなた。」
レイは背後からの声に振り替える。
「あ、あなた様は!」
「危険です!こいつから離れてください!」
「いいえ、この人は私が探していました、騎士団長からも話を聞いてほしいと依頼を受けています。2人は武器を下ろしてください。」
「……承知しました。」
騎士は剣を納め、レイに対する警戒を解く。
「では行きましょうか、レイ。」
「……急に出て来るんだな、都市の王族ってのは。あんたが、セレジアさんだよな。」
「そうよ、話すのにちょうどいい場所があるの、案内するわ。」
セレジアは先に歩き始める。
はたして、レイとセレジアは何を話すのか。
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