第1章 ここは誰、私はどこ?

第1話 無くした者

「そっちいったぞ!レイ!」

「分かった。」


 森の中を大きな生き物が走り去っていく。

 その後を、3人の男が追いかけ逃さないように圧をかけていく。


 生い茂る木々を薙ぎ倒し、森を抜けた先には、緑いっぱいの草原が広がり、そこに3人とは違う1人の男が武器を構え大きな生き物の前に立っていた。


 まるで、未来予知をしたかのように。


 走り抜けた生き物は、体が黄色ベースで黒い斑点がある虎のようなモンスター。

 全長は6m程度、巨大なモンスターで顔の迫力だけで一般人は動けなくなるだろう。

 さらに両手の爪が5本、1mほど伸びており引っかかれたらひとたまりもない。


 後を追いかけてきた男達は、虎型モンスターの背後の茂みに入る。

 どうやら、隠れているようだ。


「レイ!後は任せるぞ!」

「分かった。」


 レイと呼ばれる男は、

 黒をベースに、刃の部分が銀色に輝く剣を構え、立ちはだかる。

 剣の先は、虎型の顔面に向く。


「ぐぉぉ!!」

「お前が、今日のターゲット。ここで眠れ。」


 虎型モンスターはレイに向け風を切り突進し、1mほどある爪を複数回振り下ろし、地面や木々を傷つける。

 削られ具合が鋭さを物語る。


 だが、レイと呼ばれる男は素早く距離を取り、回避に徹しながら隙を見極める。


(このモンスターは初めて見た、でも、倒さなくちゃいけないのは変わらない、タイミングは、今か。)


「がぁ!!」


 虎型モンスターの威嚇と共に、爪が大きく振り上げられた瞬間、レイは剣を構え高く飛び上がり爪を避け手を突き刺す。


 ポトポトっと切り口から血が滴り落ち、痛みに虎型モンスターは顔を顰める。


 続けて、地面に着地した直後、虎型の逆の手を剣で切り付け、その場でバランスを崩させる。

 虎型モンスターはその場に伏せ、行動不能になる。


「ぐぅぅ。」

「終わりだ、モンスター。」


 トドメを刺そうとするレイ。



 そこに向けて最期は、


「俺たちがやるから、そこで待ってろ、レイ!」

「ん、分かった。」


 弱った虎型モンスターに向かって、3人の男が斧や剣で襲いかかり、息の根を止める。


 すると、虎型モンスターは手のひらサイズの赤い石に変わり、地面に落ちる。


 辺りは静寂に包まれ、地面や木々に爪痕が多く残されている。


 レイと虎型モンスターの戦闘の激しさを物語っていた。



「ふぅ、終わった。」


 レイと呼ばれる男は剣を背負い、男達3人が集まってくる。


「さすがだなレイ!俺たち傭兵の中で指折りの実力者!」

「これからもよろしくな!あとで報酬は渡すからよ!」

「ああ。」


 男達3人はその場を後にし、虎型モンスターの赤い石を持ち遠くに見える町の方へ向かう。


 どこか、逃げるように見える。



 戦いを終え、空を見上げる1人の男。



 名前は、レイ。

 イリオスでは小さい、この場から近くの村、ペレで過ごしている。

 武器は剣、

 黒い鉱石を元に作られ、刃は銀色に眩しく輝く。


 体は180㎝、65kg、黒髪のウルフヘアーに右耳に白い不知火の花のピアスをつける。

 身長と同等の剣を背負い、大きな青い瞳に高い鼻、筋が通って凛とした顔たちである。

 黒ベースに赤いラインの入ったブーツ、黒いパンツ姿に、グレーのシャツと黒のフード付きロングジャケットを身につけている。


 声は低く、クールに見られることが多い。



 そして、彼は誰にも信じてもらえない問題を抱えている。




 


 これまでのイリオスで過ごした記憶は全くなく、なぜ自分がここにいるのか、いつからいるのか、なぜ戦えるのかなど分からないことばかり。


 過去のことを思い出そうとすると、激しい頭痛に襲われ、思い出すことができない。


 そんな中、目を覚ましたペレの村で、生きるために傭兵を生業としてお金を稼ぎ、生きていた。



 イリオスでは、人間とモンスターが常に戦いを繰り広げている。

 安全な地は自分たちで作り、そこに町や村を作り出し住むというのが、イリオスでのスパイラル。


 その逆も然り、人はモンスターに危険と認識されており、遭遇した大抵のモンスターは襲いかかってくる。


 そこで、各町や村に傭兵団や、ギルドが建てられており、生業としている者も多くいる。



 なぜ自分が戦えるのか分からないレイだが、その力を周りに認められ、今はペレの傭兵として過ごしている。


「はぁ、俺はここに何日いるんだ?なんで戦えるんだ?イリオスって、何なんだ?」


 彼の頭の中は多くの疑問で埋め尽くされている。



 1人で外を探索するのは、イリオスでは危険とされており、レイはペレに向け歩き出す。


 辺りにモンスターの気配はないが、帰り道も油断できないため警戒をする。


 3人の男達は、レイのことを置いてすぐに帰ったのも身の安全のためだ。



 帰り道、レイはぼそっと空見上げながら呟く。


「誰か、知ってたら教えてくれ。ここは誰で、俺はどこなんだ?俺は、本当に存在してるのか?……答えはあるのかな。」


 レイは多くの疑問を抱えながら、ペレへと向かう。


 この物語は、記憶も感情も無くしたレイが、自分はどこにいて誰なのかを解き明かしながら、少しずつ先に進んでいく、異世界自分探しファンタジーである。


 彼は自分を探し出すことができるのか。



 その日の夕方、レイはペレの村に戻った。



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