第256話 団欒の空間

 シオンにはリンの姿があった。


「なんだお前、どこから来やがった。気配も何も感じなかったぞ。」

「気配ぐらい消すさ、それぐらいお前は厄介そうな奴だからな。」

「そうか、ならここで試してみるか、お前の情報はこっちに入ってる、どの程度の奴なのか!」


 リンに向け、新種オオカミ型が爪を振り抜く。


「ルビア、しゃがんでくれ!四(シ)の型、月華乃凪(ゲッカノカゼ)。」


 しゃがんだルビアの上を、白い斬撃が通過し新種オオカミ型に距離を取らせる。

 その間に、


「ルビア、ここは俺に任せろ。みんなの助けに行ってやってくれ。」

「うん!リンお兄ちゃん、気をつけて!」


 ルビアは他の戦士の応援に向かう。


 距離を取らされた新種オオカミ型だが、瞬時にリンの前まで突き進み剣を突き出す。


 リンは刀で捌き、2秒の間に5回打ち合う。


「そうか、この攻撃で死ななかったのはお前が初めてだ。」

「なら良かった、そう簡単にこの命をやれないんでな。」

「向こうの女も強そうだったが、お前の方が楽しめそうだ!」

「戦闘狂オオカミが!」


 さらに3撃打ち合い、リンが弾いた隙をついて、


「八の型、龍絶蘭(リュウゼツラン)、蒼(アオ)。」


 突きを繰り出し、さらに衝撃波を放ち地面を転がせる。

 だが、すぐに体勢を立て直しリンに向け殺意を向ける。


「楽しいぞ、これが戦いか!お前に会えたことを感謝しないとな!」

「お前らか、1日で何個もの町を破壊して回ってたモンスターってのは。」

「ん?ああ、そうだろうな。まあ、俺たちは遊んでたっていう方が正しいだろうな!雑魚をいくら殺しても、遊びにしかならねえ!」

「命をなんだと思ってやがる!お前はその手で、何人の命を奪いやがった!」

「さあ、数える方が馬鹿らしい。それより、もっと楽しませろよ!」


 目の前から迫る新種オオカミ型。

 だが、リンの視界から消え、瞬間的にリンの左側に移動し爪を振り抜く。


「とった!」


 振り抜かれた爪が、リンを切り裂く。



 が、


「ん?手応えがない─。」

「そうだろうな、残像を切っても何も感じないだろ。」

「っ!?」

「六の型、白太刀(シロノタチ)、鏡華水月(キョツカスイゲツ)。」


 残像を切った新種オオカミ型の背後に位置とったリンが、刀を振り下ろし背中に傷をつける。


「うがぁ!」

 反射で新種オオカミ型は足を振り抜くが、リンは刀で受け止め数メートル後ずさる。


「これが痛み、これが楽しみ、いいな、いいな!灰色の刀使い!」

「刀を知ってるか、やっぱりブラッドから仕込まれてるみたいだな。なら話は早い、お前をここで捕らえる。」

「できるかな、てめえ1人で!」

「いつから1人だと言ったかしら?」


 リンに迫る新種オオカミ型に対し、弾丸が迫り爪で弾く。


「ちっ、今度はアテネの姫か。」

「セラ、周りの様子はどうだった?」

「リンに指示された場所にはブラッド達身喰らう旅団はいなそうよ。隠れているわけではないみたい。」

「そうか、ならこいつをなおのこと捕まえないとな。」

「二体一か、いいぜ、楽しませろ!」


 血の気が増した新種オオカミ型。



 そこへ、


 ヒューッと甲高い音が響く。


「なんの音だ。」

「ちっ、もう終わりか。命拾いしたな、灰色とアテネの姫さん。」


 新種オオカミ型はリン達から離れ、


「おい!戻るぞ!」

「ああ!」


 レム達と戦闘していた新種オオカミ型も合流する。


「逃がすかよ!」


 リンとセラは後を追いかけると、


「捕まえてみろよ、お前らの鈍い足で!」

「では、うちらは待つことにしますか。」

「っ!?」


 反対側からアンジェとオウロが現れ挟み撃ちに成功する。


「ちっ、まだいやがったか、そういう情報だったかもな。」

「お前達はたくさんの人を傷つけ、命を奪った。その罪、ここで償わせてやるよ。」

「はっ!この程度で、俺達が諦めるとでも?」

「……なんだ、この雰囲気。」


 新種オオカミ型がお互い手を合わせると、紫色の光が生み出される。


 その光景を見たセラは、


「っ!逃げるつもりよ!みんな捕らえて!」

「遅いな、また会おうぜ、俺たちが殺してやるからよ。」


 奇妙な紫の光が新種オオカミ型を覆い、その場から姿を消す。


 すると、スタンピードで迫っていたモンスターは途端に減り、シオンに入り込んだモンスターを倒すことで収束した。


「……兄さん、セラさん、ご無事ですか?」

「ああ、大丈夫だ、あいつら、いつからアテネで動いてやがる、どうにかして捕らえないと。」

「それもそうだが、まずはあたし達に挨拶じゃないかい?」


 戦闘を終わらせたシオンで、カグヤ、レム、ルビアが温かく迎える。


「悪い、そうだな。ただいま、みんな。ありがとう、シオンを守ってくれて。」

「あたし達の村だ、もちろん守るよ。」

「ただ、最近のモンスターにはない特徴を持つモンスターも増えてます、アテネで何か起きていると思われます。」

「ありがとう、レム。少し情報交換をしたい、お願いできるか?」

「なら、私がお茶淹れますよ。アネモネで待っててください!」


 新種オオカミ型との戦闘を終わらせた支援課(ダーヴ)だったが、疑問と不安は募る一方であった。


 それでも今は、レムの入れてくれるお茶で体を休め、情報を交換するのであった。

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