第255話 彼らの世界

 リン達は男性にお礼を言い、シオンに向かって走り出した。


「セラ、国王よりも先頭に立って指揮してる奴が現れたってこと、ブラッドを指してるよな。」

「可能性はとても高いでしょうね。今までブラッドは、私たちの前に現れて妨害してきてはいたけど、大衆の前に現れることはなかった。イリオスに私たちがいないことを理解したと同時に、行動を起こしたんでしょうね。」

「それに、うちらがいないたった1日で多くの町を襲ったってさっきの人は言ってましたよね?」

「僕らがいなくなることを予測していて、いつでも襲えるように準備してた、って考えるのが良さそうですね。でも、どうやってそこまで先を読んだのか。」


 リン達がワノモトに移動したと同時に、被害が広がっているイリオス。

 1日でも早く根本を叩かなくてはいけないと、分からされた。


 それと同時に、シオンやカラマタのことが頭に浮かぶ。


 カグヤが揃えたギルドメンバー、元上位騎士団のレム、魔術を操れるルビアがシオンで防衛にあたっているはず。

 そして、カラマタはマクセルを中心としたギルドが防衛にあたる。


 どちらも相当の強さを持ち合わせているが、身喰らう旅団をまとめるブラッドの行動は誰も予想できないことを当たり前に実行する。


 リン達は今のシオンが出来る前の、ボロボロの状態の過去を思い出す。

 そんな町は1つでも減らしたい。


 その思いがリン達の足を、自然とスピードを上げる。

 そして、イリオスを駆けていった。





 その頃、シオンでは、


「初式(ショシキ)、水切り(ミズキリ)。」


 目に見えないスピードで、モンスターが斬られる。


「レム!あまり前に出過ぎるんじゃないよ!」

「了解です、カグヤさん!」

「ルビア、怪我人の治療を最優先にお願い!」

「うん!」


 シオンでは、主力3人を元に、モンスターの襲撃を対処していた。


 数はスタンピードに近いモンスターの数で、ギルドの戦士たちも苦戦しながらも倒していった。


 モンスターの種類は、オオカミ型やハチ型の通常モンスターから、2足歩行オオカミ型まで幅広かった。


 特に強敵である2足歩行オオカミ型は、レムが相手していた。


「がおっ!」

「あなたも、その姿に変えられた1人なんですね。どうにか助けたいですが、ごめんなさい。今は、あなたを止めることしかできない。」


 レムは短剣を構え、数度鋭い爪と弾きあい、隙を見て腹を突く。

 そのまま斬り上げ、その場に行動不能にさせる。


 レムの上空を、ハチ型モンスターが通過していく。


「っ!ルビアちゃん!」

「うん!すぅ、飛んでいけ!」


 ルビアの言葉と同時に突風が発生し、ハチ型モンスターを退ける。

 バランスを崩したハチ型モンスターは、男戦士によりとどめを刺される。


 優勢に見えたシオンの攻防だが、


「うわぁ!」

「くそっ、なんだよこいつは。」


 戦士3人が吹き飛ばされ、その先には、


「弱い奴しかいないな、この町も。」


 これまでの2足歩行オオカミ型と似た姿をしているが、サイズは人間の大人と同じ。

 右手には剣を、左手は鋭い爪が生えている獣人と呼べるような存在が現れた。


「スイッチします!皆さん、下がって!」


 レムが新種の2足歩行オオカミ型と鍔競り合う。


「1人くらいは楽しめそうな奴がいるか、運がいい。」

「何者ですかあなた、これまでの情報にはない種類ですね。」

「そうだろうな、俺を見た奴はみんな殺してきた。つまり、ここにいる奴らもみんな死んでいく、俺の事を知るやつはいなくなるんだよ!」


 レムの短剣を弾き、鋭く爪を振りぬく。


「くっ!」


 上体を反らし、距離を取るレム。

 続けざまに、新種オオカミ型は剣を突き出す。


(この動き、武道の教えを受けているように思えますね。……嫌な予感がします。)

「死ね!」

「そう簡単にレムの命はやれないよ!」


 鋭く大きなハンマーが振り下ろされる。

 新種オオカミ型は回避し、前を見る。


「カグヤさん、このモンスター。」

「分かるよ、これまでのモンスターとは全く違う。それに、どこか人らしいとすら感じるね。」

「だとしたら、目の前のモンスターは何か特殊なことを……。」

「考えるのは後だ、リン達が戻ってくるまで何とか耐えるよ!」

「はい!」


 リンとカグヤ2人体制で新種オオカミ型と戦闘する。


 動きが早く、力も強い新種オオカミ型相手に、2人でも苦戦を強いられていた。


「いいな、これが戦いの、命のやり取りの楽しさ!」

「とんだ戦闘狂だね、あんた。」

「これ以上あなたに、命を奪わさせません!」

「それはどうかな。俺だけがここにいると思ってるのか。」


 レムとカグヤの隣を、弾丸のようなスピードで過ぎる存在が。


「っ!?もう1体!」

「しまった、ルビア!逃げろ!」


 カグヤの声が響く先には、ルビアの姿が。


「っ!?」

「お前は厄介そうな匂いがする、俺達の邪魔する奴は早く死んでいけ!」


 剣がルビアの顔面に向け突き出される。


「ルビアちゃん!」


 剣がルビアに当たるまで、10㎝。



 ガギーンッ!と甲高い音が響く。


 そこには、


「俺の仲間に、手を出してんじゃねえよ。」

「なんだお前、どこから来やがった。」

「っ!!リンお兄ちゃん!」


 ルビアの前には、リンの姿が。


「俺の仲間を傷つけた礼、しっかりしないとな。」


 リン、シオンに到着。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る