第250話 師と弟子

 馬車でユグドラシルに向かっている5人。


 ユグドラシルはワノモトを象徴する大樹ということもあり、近づくにつれその大きさに圧倒されつつあった。


「ユグドラシル、ワノモトを象徴する大樹とは聞いてましたが、近くになると本当に立派な樹ですね。」

「セレジアさんそう思って頂けると、わたくしもとても嬉しいです。本来はもっと輝きが強いのも特徴なのですが、何が原因かその光が弱まってしまっている。」

「師範、そこにイリオスとワノモトをつなぐ道が関係している可能性が高いですよね。」

「ええ、わたくしはそう考えています。そして、ユグドラシルの近くは多くのモンスターが集まっています。……この気配、そうですね。」


 リンは馬車を止め、周りを見つめる。

 そして声を大きく、


「師範!あなたならもう気が付いているだろ?」

「ええ、リンも感じ取れているようですね。わたくしたちを包囲しようとしてます、皆さん戦闘準備を。」

「了解!」


 リンは馬車から降り、辺りの動く木々や葉を見つめる。

 広い通りの周りに生える木が、何者かによって揺らされている。


(数は10を超えるな。大きいタイプから、小さいタイプまで種類も多い、身喰らう旅団も俺たちをユグドラシルに近づけさせたくない理由があるみたいだな。)


 ムクナを先頭に皆が馬車を降り、馬を町に向けて返す。


「リン、数は多いですが、久しぶりに共にいるのです。やれそうですか?」

「ああ、昔の感覚も戻ってきてるし、師範の知る俺よりももっと強くなってるかもしれないですよ?むしろ追いつけますか?」

「あら、口がさらに達者になりましたね。では、皆さん、ここはわたくしとリンが対応致します。」

「そんな!これだけの数を2人で─。」

「大丈夫だ、セラ。俺と師範の久しぶりの舞台だ、しっかり目に焼き付けてくれ。」


 リンは灰色の刀を、ムクナは純白の刀を構える。


 途端に、


「殺せ!獲物が止まったぞ!」

「がぁぁ!!」


 辺りの木々から姿を現したのは、二足歩行オオカミ型であった。


 爪を伸ばし、蹴りを入れるオオカミ型。


 だが、


 それを前にしてもリンとムクナは、一切動じることなく、


「三の型、廻(カイ)、向日葵(ヒマワリ)。」

「四(シ)の型、月華乃凪(ゲッカノカゼ)。」


 リンは目の前に迫る3体に回転斬りを放ち、バランスを崩した3体をムクナが放つ白い斬撃が襲い、3体のオオカミ型は木に直撃する。


 呼吸する暇もなく、


「八の型、龍絶蘭(リュウゼツラン)、蒼(アオ)。」


 ムクナが突きを放ち、衝撃波を続けて打ち込むことで背後から迫った3体のオオカミ型を吹き飛ばす。


 そこへ、


「九の型、天花吹舞(テンカフブ)。」


 吹き飛ばされたオオカミ型を追いかけるように、空高く跳んだリンが車輪のように回転しながら斬り裂く。


 着地地点に向け、


「生意気な人間が!!」


 2体のオオカミ型が爪を伸ばす。


 しかし、

 ガギィンッと金属音が響き渡り、そこにいたのは、


「わたくしの愛弟子ですの、手出無用でお願いしますわ。」


 爪を防いだのはムクナであり、

 オオカミ型の背後にはリンの姿が。


「そこで寝ていてくれ、これ以上被害を生み出してほしくない、お前達にもな。」


 居合斬りで、2体のオオカミ型がダウン。


 リンに切り裂かれた3体と、今の2体を含め5体をダウンさせたリンとムクナ。


 だが、吹き飛ばされたオオカミ型3体に加え、追加で3体が立ち塞がる。


「ちっ、俺たちの方が優秀な種族だ!殺されやがれ!」

「がぉぉ!」


 6体がまとめてリンとムクナに迫る。


「優秀な種族、ですか。お戯れを、あなた方も元は人間だったのでしょうに。わたくし達人間は、皆が同じ弱者です。」

「弱者が手を差し伸べあって、世界を作っていくんだ。記憶に刻んでおけ、一生忘れないようにな!五の型、開演。」


 辺りの空気が冷たくなる感覚が、オオカミ型を襲う。


「がぁ!?」

「初(ソメ)、魅せるは花演(カエン)。」


 リンとムクナのプレッシャーが、オオカミ型全ての体の動きを制限させていた。


 続けて、


「中(ナカ)、染めるは豪華(ゴウカ)。」


 目にも止まらぬ速さで、リンとムクナは各3体ずつ十文字斬りを刻んでいく。


 最後は、


「締(シメ)、尽きてなくなる灰華(ハイノハナ)。」


 突きを放ち、6体のオオカミ型を吹き飛ばす。


 身体中にダメージを負ったオオカミ型は動けなくなる。


 戦闘時間、約15秒。


 無駄が一切ない動きにより、11体のオオカミ型がリンとムクナ2人に倒された。


「す、すごい、これがリンとムクナさんの連携。」

「はい、ここまでだとは思いませんでしたが、できても不思議じゃないですね。これで、同調(シンクロ)を使ってないのですから、怖いものです。」

「2人がいるだけで頼もしいなんてレベルじゃないね。僕らも見習わないと。」


 戦闘が終わったと思われた、


 その矢先、


「ちっ、まだ来るぞ!今の奴らとは桁違いの殺意だ、全員気をつけろ!」

「了解!」


 高く跳んでリン達の前に現れたのは、


 両手に鉤爪をつけ、牙の剥き出しの全長5mほどある灰色の二足歩行オオカミ型。


 その姿は、人の原型はなくまさしく化け物と呼ばれる姿であった。


「師範、また厄介そうなのが出てきましたね。」

「そうですね、ただ、ここにいるわたくし達なら勝てない道理はありませんね。皆さん、一気に片付けますよ!」

「了解!」


 リン達の戦いはまだ始まったばかりに過ぎなかった。


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