第231話 ワノモトへ

 リン達は、王都アテネの術式の部屋に入り、光に包まれて姿を消した。



 次、意識を取り戻した場所は、


「……ここは、どこだ?」


 リンは目を覚まし、起き上がって辺りを見渡す。

 建物は見当たらず、多くの草木や花で覆われた場所。


「草原、か?ワノモトに来れたのか?それともイリオスのどこかなのか。」

「うっ、うーん。リン?」

「セラ!無事か?」


 リンは近くに横たわっていたセラに声をかける。


「ええ、少し頭がクラクラするけど何とか平気だわ。」

「良かった、アンジェとオウロは……近くにはいないな。」

「そうみたいね、ここは、どこかしら?」

「イリオスにこんな場所はあったか?」

「いえ、私の知る限りではないと思うけど……リン!あれ見て!」


 セラが指差す先には、


「っ!ユグドラシル、ワノモトの象徴!てことは、ここはワノモトなんだな、でも、俺の記憶にあるユグドラシルと違う、色がかなり茶色いな。俺が知ってるのは、金色に咲き誇る大樹なのに。」

「ユグドラシルが魔術と関係しているとしたら……嫌な予感がするわね。リンはここがどのあたりかわからないの?」

「悪い、俺も分からない。アンジェならもしかしたら分かるかもしれないのに。」


 2人が辺りを見渡していると、


「兄さん!セラさん!どこですか?」

「2人とも、近くにいないのかい?」


 100mほど離れた先から、アンジェとオウロの声が聞こえる。


「セラ、2人とも無事みたいだ!」

「ええ合流しましょう。」


 リンとセラは声のする方に駆け出し、


「アンジェ!オウロ!俺たちはこっちだ!」

「兄さん!セラさん!」


 草原の奥で、4人は合流する。


「良かったわ、2人も無事で。」

「はい、お2人も問題ないみたいで。ここって、ワノモトですよね、確かお城からかなり離れた場所のはずです。」

「そうなのか、悪い、俺の記憶にはない場所みたいだ。」

「そうかもしれません、修行でうちはこの近くにきたことあるから知っているだけですので、知らなくても無理はありません。それと、ユグドラシルが……。」

「何か異変が起きてるのきは違いないな。アンジェ、城の方に案内をお願いできるか?」


 アンジェは周りを見渡し、


「はい!少しおぼろげな部分もありますが、何とか案内します!お城はかなり高い建物なので近くに行ければ見つかるはずです!」

「そうだな、みんな武器も持ってるか?」


 全員身なりを確認し、問題ないことを認識する。


「ええ、問題ないわ。時間が惜しい、目的のお城まで向かいましょう。」

「了解!」


 支援課ダーヴは初めてワノモトの地を踏み締め、目的地である城に向かって歩き出した。


 リンとアンジェは数ヶ月ぶりの帰還ということもあり、辺りを見渡す。


「兄さん、うちらは帰ってきたんですね。やっぱり、懐かしさを感じます。」

「そうだな、でもここで終わりじゃない、ここから始めるんだ、俺たちがワノモトもイリオスも守るための戦いを。」

「はい、その為にも協力してくれる人達を探さなくてはいけませんね、ムクナ師範もどうにか探し出さないと。」

「ああ、師範がいるかどうかで戦力は大きく変わる、何としても見つけ出さないと。」


 4人は草原を抜け、整備された道に出る。


「すごいわね、ワノモトの道はかなり整備されてるのね。それに、モンスターが現れないけどそこまで制圧されているの?」

「俺たちの国、ワノモトにはモンスターは滅多に現れないんだ。だから、イリオスのギルドみたいなのは存在しない、代わりに俺とアンジェが学んだような道場があるんだ。」

「その道場で、2人はムクナさんから教えを授かって力を手に入れたんだね。」

「そうです、うちらはもしもの時戦える力を持つ数少ない戦士なんです。今はどうなのか分かりませんが。」


 整備された道を進んでいると、

 平和な空間を破壊する声が響き渡った。


「がぁぁ!!」

「くそっ、また現れやがった!誰か、誰かいないか!」


 助けを求める声が、4人の耳に届く。


「っ!?この声って、誰か戦ってるわよね?」

「ああ、この先だ!行こう、話をできる人なら助け出さないと。」

「敵の数も分かりません、みなさん警戒を怠らないでください。」

「もちろんさ、まずは人助けすることから始めよう!」


 支援課ダーヴは声のする方に走り出すと、


(っ、何だこの匂い、イリオスで嗅いだことのないものだ、独特でしかも体に侵入してくる感じの。……モンスターから発せられてるとしたらかなり危険そうな匂いだ、最大限の警戒をしないとな。)

「兄さん、この匂い感じますか?」

「ああ、これまでに感じたことのない匂いだ。みんな、この先にいるのはこれまでとまた違うモンスターの可能性も高い、気を引き締めるぞ!」

「了解!」


 違和感を覚えるリンとアンジェだが、支援課ダーヴの強さは折り紙付き。

 こんなところで止まっている暇もない為、全速力で助けを求める声がする方へ走る。


 少しずつ匂いも強くなり、リンとアンジェが武器に手を置くと同時に、セラとオウロも戦闘態勢に入る。


 はたして、リン達を待ち構えるものとはいったい。


 そして、初めて来たるワノモトでの戦いに、リン達は順応することはできるのか。

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