第230話 いざ行かん
セラは掘られている術式に触れ、展開を試みた。
「この術式、特殊すぎるわね。どこでこんなものを見つけて、使いこなせたっていうの。」
「セラ、いけそうか!?」
「何とかして見せるわ、リン達は時間稼ぎをお願い!」
「了解!」
セラはまず術式の解読に集中した。
(この術式は、何かを発現するというより、どこかに繋ぐような作りね。だとしたら、ワノモトに繋がる術式の可能性はとても高い。ただ、どこにあるか分からない地域に繋ぐなんて、何をしたら……この紋章、どこかの大樹かしら?)
セラが解読するうえで、イリオスでは見かけたことのない大樹が掘られていた。
(こんな大樹、今も昔もイリオスには存在していないはず。まさか、リンが前話してくれたワノモトを守る大樹、ユグドラシルを指している?そこが転移の基準になっているとしたら、ここの構造は……。)
セラは小さく呟きながら、術式を解読していく。
同時刻リン達3人は、部屋から外に出て警戒にあたっていた。
「さっきの爆発音はどこからだ?」
「特に爆発があったようには思えませんね、特に変わった部分はない─。」
「いや、あそこだよ!見ていてくれ!」
オウロは地面に落ちていた小石を、自分たちが進んできた道に投げる。
すると、
通りには何も配置されていないのに、小石が何かにぶつかって地面に落ちる。
その衝撃を受けた物体が、姿を現す。
「っ!?幻術で、俺達の眼じゃ分からないようにしてたってのか。屋根が崩落してる、意図的に。」
「そういうことだね、僕らを倒すためにモンスターやオオカミ型を送り込むんじゃない、物理的に部屋ごと無くして押しつぶすつもりだ。」
「だったら、崩壊させている本人を止めないとうちら全員ぺちゃんこになってしまいます!」
「とはいっても、殺気も足音も感じない、どうやって壊してやがる?」
辺りをくまなく観察する3人。
そこに、
バゴンッ!大きな音が再び響き、近くの柱が壊れる。
「っ!?マジかよ、何も感じない所からいきなり壊れたぞ。」
「あの柱、さっきまでは見えていなかったよ。見えているはずのものが、幻術で沢山隠されているみたいだ。それに、この爆発は。」
「あらかじめ魔術を展開しておいて、時限爆弾の様に爆発させているように思えます。」
「だったら時間稼ぎをするには、俺らに迫る瓦礫を破壊することだけか。くそっ、地味だけど最高に嫌な作戦を仕掛けてきやがるな、ブラッド。」
リン達にはどこが幻術で、どこが現実なのか見分けが付けられない。
加えて、やたらめったらに斬撃などを放ち幻術を解除することもできるが、その場合崩壊を早めてしまう可能性もある。
打つ手が限りなく0に近い状態だった。
「アンジェ、セラの部屋の防衛に回ってくれ、もしかしたらあの部屋にも魔術が展開されているかもしれない!」
「分かりました!お2人は!?」
「どうにか、崩壊してくる壁や屋根を弾いてみる。後は、セラ頼みになっちまうな。」
「私が何だって?」
セラの大きな声がリン達に届く。
「私次第でみんなの命が助かるかどうか決まるなら、命がけでこの術式を発動させて見せるわ。もう周りの音全てシャットアウトするから、後は任せるわよ!」
「さすが、頼りになるパートナーだ。OK、アンジェ、部屋の中は任せた!オウロ、東側の通路は任せる、俺は西側をなんとかする。」
「了解!」
アンジェは部屋に戻り、爆発の衝撃で降り注ぐ本や棚をセラの邪魔にならないように弾いていく。
リンとオウロも、崩壊していく通路に対し斬撃など放ち被害が術式の部屋に及ばないように対処していく。
そして、3分が経過する頃、
「くそっ、爆発がかなり近くまできやがった。」
「セレジア様の時間を稼ぐんだ、まだやれるだけやるよ!」
セラはこの3分で、脳が熱で溶けるほど回転させ解読に時間を注ぎ込んだ。
そして、
「これで、開きなさい!」
セラは術式の真ん中に手を置き、自分の銃剣に魔術を展開する感覚で床に魔術の展開を試みる。
すると、
部屋全体が眩しく光だし、セラとアンジェを覆う。
「リン!オウロ!部屋に入って!」
「ああ!」
リンとオウロが対処していた壁や屋根の破壊も、術式の部屋の寸前にまで達していた。
オウロが先に部屋に入り、リンもスライディングして中に入る。
「いいぞ、セラ!」
「いくわよ!」
眩い光が4人を包み込むと同時に、部屋の屋根がヒビを入れる。
そして、
破壊された屋根がリン達に降り注ぎ、直撃する寸前で4人はその場から姿を消した。
数秒後、術式が展開されていた部屋は瓦礫で埋め尽くされてしまった。
しかし、その行き先がワノモトであるかどうかは可能性だけでしかない。
それでも、可能性が0でない限り実践を試みた4人。
はたして、彼らがたどり着く先はいったいどこなのか。
そして、イリオスから姿を消した彼らに戻る方法はあるのか。
身喰らう旅団は、リン達がいない間もイリオスで活動を進めていく。
最後の希望である
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