第226話 秘密の部屋

 支援課ダーヴは騎士と別れ、新たに得た情報を元に国王が出入りしているという部屋に向かった。


「セラ、部屋がなかったはずのところで国王が姿を消すのって、外の建物と現象が似てないか?破壊されたはずの建物が、まるでそこにあるかのように作られてた魔術と。」

「幻術のことよね、確かに似たものの可能性はとても高いと思うわ。幻術で、そこにないものをあるように見せられるなら、その逆、あるはずのものを無いように見せることも可能なはず。」

「だとしたら、アテネで使われてる幻術は身喰らう旅団の仕業でしょうか?それとも、国王がその力を持っていた?」

「それか、僕らや騎士団が知らないだけで、今の国王より前から使ってきたのかもしれないね。」


 複数の憶測が立てられるが、確認しないことには始まらない。

 セラの案内で進んでいると、どこからか話し声が聞こえてきた。


「っ!?みんな、止まれ。」


 リンの言葉で皆は通りの手前で立ち止まり、壁による。


 すると、

 2人の話し声が聞こえてきた。


「聞いたか、どうやらアテネにあいつらが乗り込んできたらしいぞ。」

「ああ、ブラッド様が話されてた危険因子だろ。よくやるよな、圧倒的に数は少ないし蒼き世界を望む人の方が多いのによ。無駄死にだって分からない馬鹿たちだな。」

「何かあいつらにも策があるんだろうが、ブラット様なら全て打ち砕いてくれる、俺たちはこの辺りを巡回するだけでいいなんて楽な仕事だな。あと数日で、蒼き世界が作られる!」


 リン達は黒服が話している内容を盗み聞き、


「あいつら、相当の自信だな。敵が侵入してるって分かってても、こんな警戒しかしないなんて。」

「それだけ、ブラッドのことを信じきっているんですよ。あの2人からは、警戒のけの字も感じられないほどに注意散漫でした。兄さん、この分じゃやっぱりあの人たちも。」

「蒼き世界に自分達は選ばれる、そこで生きる資格があると思ってるんだろ。ブラッドは、平気で自分側の人間を駒として戦場に送るなんて知らされないで。」

「可哀想ね。無知であることがここまで自分を苦しめることになるなんて。」


 巡回中の黒服を避け、さらに数回別の巡回班を確認し、バレないように行動した。


 もはや、4人は戦いにおけるエキスパート。

 足跡をほとんど立てず、気配を消して動くのは得意なものであった。



 そうして数分進んだ先に、


「みんなここよ!」


 セラの合図でリン達は立ち止まる。

 辺りにドアや、部屋は見当たらないが、セラは壁を見つめる。


 ぱっと見では、何の変哲もない綺麗な真っ白い壁だが、

 セラは壁に手を当て、


「ここから若干だけど魔術を使った痕跡が感じられる。」

「そんなものまで分かるのか!?じゃあ、この魔術を解けば中に入れるってことか?」

「……リンの言う通りだけど、簡単にはいかなそうだわ。ここの魔術は、厳重に発動されている、簡単に言えばカギをかけて南京錠もかけているようなものね。無理やり開ければ、私たち皆が爆発に巻き込まれかねないわ。」

「そんな罠まで……セレジア様で解除できるのですか?」

「時間をもらえればできるわ。辺りの警戒をお願いしてもいいかしら?」

「任せろ!」


 リン達はセラが魔術を解除するのに集中するため、防衛するために陣形を取った。


 リンとオウロはセラから離れた位置に陣取り、アンジェはセラの近くを守っていた。


「セラさん、うちらが手伝えることはありませんか?」

「いえ、大丈夫よ、集中できる環境だけ作ってくれれば後は私が何とかするわ!」

「了解です!」


 順調に魔術が解けれていくように見えた、


 が、


 リンは持ち前の感覚で何かを捉えた。


(っ!?俺たちに殺気が向けられてる、しかもこれまでに感じたことのない雰囲気だ。どこからくる、狙いは、セラか?)

「アンジェ!気を付けろ何か来る!」

「っ!?うちじゃない、狙いは、セラさん!」


 アンジェも感じ取った感覚を頼りに、短刀2本を構えセラ近くの何も見えない空間に振り下ろす。


 すると、

 バギンッと金属音を響かせ、何かを弾く。


「オウロさん!そっちいきました!」


 アンジェの言葉が聞こえるが、皆の眼には何も映らない。


「透明で動ける人間か、モンスターってことか、ならこの辺りか!」


 オウロはサマーソルトを放ち、足に何か当たった感覚が残る。


 その何かは吹き飛ばされた衝撃で、壁にぶつかり辺りに埃が舞う。

 透明だったものは、徐々に姿を現し支援課ダーヴの目に映る。


「なんだよ、こいつ。」

「これまでの個体とは全く違いますね。それに、見た目もどこかモンスターに近い。」

「オオカミ型のようで、全く違う何か、ってところかな。リン君!指示を!」

「ああ!セラを守るぞ!俺が先陣、アンジェは俺のサポート、オウロはセラをカバーしつつ俺たちのアシストも頼む!こいつは新種のモンスター、あるいはオオカミ型の変異種だ。十分に注意してくれ!」

「了解!」


 リン達の前に、姿を消せる新しいモンスターが現れた。


 はたして、新種モンスターとの戦いの行く末は。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る