第126話 シオンの4人

 リン、セラ、アンジェの3人は王都アテネを脱出し、着実にシオンへ近付いていた。


「この辺りは見覚えがあるわね、そろそろシオンに着くわよね?」

「そうだな、人気のない道を通ってきたから時間はかかったけど陽が落ちる前には辿り着けそうだ。はぁ、腹減った。」

「まずは食事で再会を祝いたいですね!皆さん、セラさんの無事を確認できたら相当喜びますよ!」

「そうかしら、そんなに深い関係になったつもりはないのだけど。」

「それでも、セラは俺たちとシオンで共に暮らした仲間だ。胸を張って帰ってきてくれ。あと、そうやって距離を置こうとするの、セラの悪い癖だぞ。」


 セラはリンの言葉にムッとした表情を浮かべるが、


(確かに、今私が生きてるのはこの2人がいて、2人を送り出してくれたシオンの皆がいるから。……リンの言う通りね。)

「兄さんも人のこと言えませんよ?いざ危険な場面になったら、周りのことばかり考えて自分のことをおざなりにするんですから。とくに元いた世界では─。」

「ばっ、アンジェ、今俺がいい感じにセラより良いところ見せつけたのに─。」

「へえ、そうなの。私に説教しておきながら、そういう感じなのね。アンジェ、今度2人でお茶しましょう、リンの隠してることいろいろ聞きたいわ。」

「いいですよ!うちはセラさんの味方ですから!」

「女の友情怖い。」


 そうこうしていると、3人はシオンの入り口にまで辿り着く。


 そこでは、


「っ!セラ様!」

「おう、リン!アンジェ!無事だったかい!」


 レム、カグヤ、ルビアが盛大に出迎えた。


「ただいま、みんな。なんとかセラは連れ帰った。まあ、まだ問題は山積みだけどな。」

「リンさん、セラ様、怪我だらけじゃないですか!あたしが診ますから、診療所まで来てください!」

「ありがとう、レム。そういやオウロは?」

「僕ならここだよ。」


 リンたちの到着に少し遅れて、オウロも入り口に現れる。


「おかえり、オウロ。外の様子はどうだった?」

「カグヤさんの予想通り、モンスターが減っている傾向です。ただ、討伐されたのかそれとも別の理由かは分かりませんでした。」

「こっちでも色々あったみたいですね、まずは兄さんとセラさんを治療してからですね。」

「もうすぐ夕飯に近いですので、あたしが今日は料理たくさん作りますね!」

「僕も手伝いますよ、レムくん。」


 ルビアも紙に文字を書き、


「ルビアも!ですか、頼もしいです!ありがとうございます、ルビアちゃん!」


 まず、リンの治療をレムが、アーシェの治療をアンジェが担当した。

 2人にはギガスの呪いのことを話してることをレムも知り、心強い仲間ができたととても喜んでいた。


「リンさんがここまでの傷を負うなんて、相手は100人くらいいましたか?」

「いいや、これは説明しにくい内容なんだけど、相手はある意味自分なんだ。」

「え?どういう意味ですか?」

「それはまた話すよ、今はセラの腹の虫が鳴らないか心配だ。」

「凍り付け。」

「シンプルすぎる脅しやめろ!」


 そんなやりとりを見ていたレムは、とある変化に気がついた。


「セラ様、なんだか明るくなられました?」

「え、そうかしら?自覚はないのだけど。」

「笑顔がいつも以上に美しい気がします、何かありましたか?まさか、セラ様もついに恋!?」

「レム、あなたも凍り付けになる?」

「え!ありが……いえ、間に合ってます!」

「本音が溢れてるぞ変態メイド。」


 治療を終え、リンとセラが立ち上がるとオウロが迎えにくる。


「みんな、お待たせ、レムさん達と夕飯の準備を終えたから迎えにきたよ。」

「ありがとうオウロ。……そうだ、後でカグヤに話そうと思うんだけど、まずみんなに話しておいていいか?」

「どうしたの、急に改まって。」


 リンにセラ、アンジェ、オウロ、レムの視線が集まる。


「内容は至ってシンプルだ。今ここに、セラが戻ってきてくれた、これで条件は揃ったんだ。」

「それって、私にも話してたあのこと?」

「そうだ、俺たちでギルドを開こう!ギルドメンバーが後1人足りなくてこれまではシオンにギルドを開けなかっと。でも、セラがいてくれたら全ての鍵が揃う、今がその時だと思うんだ!」

「私が、シオンの、みんなのところに……。」


 セラはどこか迷いを見せていた。


 理由は簡単、自分は今追われている身であるからだ。

 本来処刑されるべきだった人間を、王都アテネを乗っ取ろうとしている身喰らう旅団達が見逃すわけがない。


 そんなところに、リン達を巻き込むことを恐れていたのだ。


 自分にできた、レム以来の寄り添ってくれる仲間達。


 困った表情のセラを見てレムは、


「セラ様、あたしからお話しするのもおこがましいこと承知で、一言だけ言わせてください。たまには、甘えてもいいんだと思います。セラ様は、お一人で頑張りすぎています。」

「レム……あたし、は。あたしの、気持ちは。」


 セラは心の声を言葉に変えようと必死であった。


 リンの提案により、シオンのギルドメンバーに勧誘されたセラ。


 はたして、多くの過去、敵を背負い、未来を切り開くことを目標としているセラが出した答えとは。

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