呼び方
先生はわたしの体を引き離す。何だか顔が赤いようだけど大丈夫かな?
「……竹原、」
「はい、先生」
「その“先生”というやつ、ふたりきりの時はやめないか? 外で話をしていて少しヒヤリとした」
「あー、そういえばそうですね、」
え? でも、先生を“先生”以外に何て呼べばいいの? だって先生は先生で先生なのだから……。
「俺の名前、知っているか?」
「勿論です、
「下の名前で、先生をなしで言ってみろ」
「えっと……あ、あきたかさん?」
うっ!! 先生の名前を呼ぶだなんてなんて畏れ多いっ! で、でも特別な感じがして嬉しいなぁ。……うん? そういえば
「うん、いいな。そうやってお前に名前を呼ばれるのは」
先生がにこっと笑うのでもっと呼んで喜ばせてあげたくなる。
「あきたかさん」
すると……。
「何だ、しず」
「ぐはっ!!!!」
完全に不意をつかれ、胸を押さえて体を前に倒す。せ、先生が、先生がわたしの名前、それも愛称で呼んでくれたっ!!!!
「わ、わが生涯に一片の悔いなし、です……ふふ、ふふふ」
「よくそんな言葉を知っていたな。だがそれは死ぬ時に言った台詞だ、縁起でもない」
「死ぬ位の衝撃なんですっ!!」
するとあきたかさんはニヤリと意地悪そうに笑うと、人差し指をわたしの唇に添える。
「キスで死ななかったのだから大丈夫だろう」
カーッと体が熱くなる。そう、キスをした。わたしはあきたかさんとキスをした。だけど、死んでもいないしそれどころか……。
「あきたかさん、もう一度キスしたいです」
わたしはそんな図々しいお願いを口にしていた。
「ああ、いいぞ。もう一度と言わず何度でもしよう。俺もお前と……しずとキスをしたい」
ああ、こんなに幸せでいいのかなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます