おしゃべり


 先生のベッドで寝られるだなんて夢みたいだと思い頬を叩いてみると痛かった。これは夢じゃないと舞い上がってクンクンしていたのだが……寝られない。

 目がギンギンに冴えて眠りたいのに眠ることが出来ない。先生のベッドで先生のにおいに包まれて安らかに就寝とか出来るはずがない。

 ということで先生を起こしてベッドとソファを交換してくれと頼んだのだが、先生は若干何かに引いた様な表情でソファに座ると隣のスペースをポンポンと叩く。おそらく座れということなのでそれに従う。


「眠れないなら無理に寝る必要はない、少し話をしよう」


 先生の腕が肩に回ってきてソッと引き寄せられたので、頭を肩に寄せる。


「今日は……いやもう昨日か。竹原と大好きな海へ行けてとても楽しかった。お前を撮った写真を引き伸ばして研究室へと飾っておきたい位だ」


 先生はゆったりと優しい手つきでわたしの肩を一定のリズムで叩く。


「駄目ですよ、研究室に飾るだなんて。恥ずかしいですし、皆にわたしたちがお付き合いしているのがバレちゃいます」


「そうだな。……だが俺は時々お前のことを自慢したくなってしまうんだ。竹原のことがかわいくて愛おしいから」


 顔がにんまりとするのが自分でも分かる。


「わたしもです。先生が他の女の子と話しているのを見ると大きな声で“先生はわたしの恋人なんです”って言いたくなります。でも言いません、先生と一緒にいたいから」


 甘えるように頬を先生の肩に擦りつける。


「俺はお前に我慢を強いているな、すまない」


「それはお互い様です。先生が謝るのならわたしも謝ります、ごめんなさい」


 ふたりして謝って、微笑み合う。そして見つめ合い、穏やかな空気が流れる。今なら、キスが出来る気がした。

 先生の顔が近づいてきて、わたしは目を閉じて顔を上げる。先生の薄い唇がわたしの唇と重なり、ふたつの熱がひとつになった。


「キス、出来たな。偉いぞ」


 唇を離して、先生が言うのでコクンと頷く。嬉しくってギュッと先生に抱きつくと──


「ん゛ん゛っ! た、竹原、もしや下着をつけていないのではないか?!」


「え? ブラジャーのことですか?」


 そんなの当然だ。だって寝る時にブラジャーなんて窮屈で邪魔じゃない。

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