運転休止


 夕方から天気が崩れるということだったのに、段々と空が暗くなりかなり前倒しでポツリポツリと雨が降り始めた。

 もっと先生と一緒にいたかったが車は駅へと向かう。

 駅に近づくにつれ雨の勢いが増し、風まで強く吹き始める。こんなにも荒れるだなんて天気予報は嘘つきだ。自宅のある北の空は真っ白で、ここよりも大量の雨が降っていることが分かる。

 嫌な予感がしてバッグの中からスマホを取り出し、いつも使っている路線を調べると……。


「あ」


 思わず声が漏れた。


「うん? どうした?」


 チラリと先生がこちらに視線を向けてきたので急いでスマホをバッグの中にしまう。


「あ、いえ…………ナンデモナイデスヨ?」


「何故急に片言なんだ? ……何があったか正直に先生へ言いなさい」


 確実に先生へ迷惑をかけることなので言い出しづらいが、言わないでいるのも迷惑をかけてしまう。それに──、


「竹原、教えてくれ」


 甘くて優しい声で言われてしまっては白状するしかないじゃない!


「……わたしの使っている路線なんですけど、」


「ああ、それがどうした?」


「……倒木で終日運休になったみたいです」


「は?」


 しんっ……と車の中に静寂が訪れる。

 ていうか、倒木ってなによ?? なによもなにも山の中をつき進む田舎路線だから倒木どころか落石や猪と接触とかしょっちゅうあるんだけどね?! それに皆にはかっこよく“電車”とか言ってるけど、本当は“ディーゼル車”なんですがね??

 いや、今は路線をディスっている場合ではない。まさか家に戻れないだなんてことになるとは思わなかった。こんな事態に陥るだなんて想定外だ。さてどうしようかと考えていると、先生がポツリと言う。


「……家まで車で送ろう、」


 その申し出にギョッとする。


「そんな、悪いですよ! その、うちまで遠いですし……多分自宅の方はここより雨や風が強いので運転は危ないです!」


「ならばどうするつもりだ?」


「それはその……、」


 駅の近くのビジホに泊まってもいいが、果たして今から部屋が取れるだろうか? きっとわたしみたいなのが沢山押し掛けているだろう。

 ふと、前に統瑠とうるくんが言っていたことを思い出す。


「えっと、ネカフェに泊まります! 泊まれるらしいので!」


「却下、危ない」


 ええ、却下なの?? というか、危ないの?? でも先生がそう言うのならそうなんだろうと納得するしかなかった。

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