煽られる欲
竹原は顔を耳まで赤くすると両手で顔を覆う。
「か、かわいいとか、愛おしいとか言われたら……泣いちゃいますよ、」
「泣けばいい、お前の泣き顔を見るのは俺だけだからな」
竹原の肩を抱き、そっと自分の方へと引き寄せる。
「好きだ、愛している。だからどうか苦しまないでくれ。俺がお前に呆れるだなんことがあるはずがないだろう。それとも竹原は俺に呆れることが──」
「ないです」
“あるのか?”を言う前に即答されてほんの少しだけ動揺したが、構わず続ける。
「竹原がこうして俺に遠慮することなく自分の思いを伝えてくれて嬉しい。……俺も少しばかし急かし過ぎたのかもしれない、竹原のペースに合わせられなくてすまなかった」
竹原は両手を外し、ふるふると首を横に振る。
「先生は悪くないです、わたしが意気地なしなのがいけないんです。……あ、でも、」
「でも?」
「先生の顔がかっこよ過ぎるという点では先生が悪いです」
「そうか、俺がかっこよ過ぎるばかりに竹原に迷惑をかけていたな」
笑いや突っ込み待ちで言ってみたのだが、竹原は“本当に勘弁して下さいよ、こっちの身にもなれよ”という風なマジな顔をしていた。え、なんか怖い……。
竹原はふぅーと息を吐いて場を仕切り直すと、真っ直ぐに俺を見つめる。
「わたし、無理をしてでも先生や男女付き合いっていうのに慣れていきたいと思うんです。……だから、その、最初の一歩に今日は先生とキ、キスをしたいなぁと思いまして、」
愛しい彼女からの“先生とキスをしたい”という甘いおねだりのような言葉は、胸とそして下半身に直撃する。
あ、これはマズイ。“あちらの方”はもう随分と落ち着いたと思っていたのに、好きな女性が相手なら素直に反応してしまいそうになる。
今ここで我慢出来なくなったらきっと竹原のことを傷つけて──
「キスくらい出来るようにならないと、セックスの時に緊張し過ぎてゲロ吐いちゃうかもしれないんで!!」
ん~、ありがとう竹原。ゲロのおかげで萎えたぞ。
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