神格化
怒りながらも統瑠くんはカレーライスを食べ進めていく。
「聞くけどさ、竹原は明孝さんと付き合えてる今の状況をどう思ってんの?」
「どうって……素敵な先生がわたしなんかと付き合ってくれるだなんて夢みたい。畏れ多いですって思ってる」
「それがまず駄目じゃん」
駄目なの?! なんで??
「まず明孝さんのことを神格化するのをやめろ。相手は随分と年上でも同じ人間だし、恋人なら対等じゃないとおかしいだろう。明孝さんと竹原は同じ立場なんだからそんな緊張する必要はないって」
「そんなこと言われても……ずっとずっと好きで、でも叶うことはない恋だって思ってたから……それが実現しちゃってわたしは、その……頭の中がぐちゃぐちゃになってて、」
「今はもう恋に恋してる場合じゃないだろ。実際に明孝さんと付き合ってるんだから“かっこよ過ぎる”だなんて言い訳せず、少し無理をしてでも相手に慣れていかなきゃ。そりゃあ照れるのもかわいいけど、あんまり度が過ぎるのは考えものだぜ? まさか処女でもあるまいし」
「……、…………、」
「え? ……あー、今のはデリカシーがなかった。ごめん」
謝られるようなことではないし、統瑠くんの言うことが正しいのも分かってる。それでもわたしは……
「先生のこと、好きなの。その気持ち本当なんだけど、わたしなんかと付き合ってくれているのが申し訳なくって……。わたし、今まで誰かと付き合ったことがないから正解が分からない。先生に呆れられたくないな」
どうしてもそういう気持ちが捨てられない。
「竹原がそんな風に考えてること、明孝さんに伝えろよ。あの人は呆れることなく何でもちゃんと聞いてくれる人だからさ」
わたしよりも先生のことをよく知っている統瑠くんが言うのだから間違いないだろう。わたしも先生のそういう誠実な所が好きだ。
「ありがとう、統瑠くん。統瑠くんに話したらスッキリしちゃった。そうだね、先生に伝えてみることにするね」
統瑠くんと話して覚悟を決めたわたしがお礼を言うと、彼はフッと優しく笑った。
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